二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ-At the time of parting- ( No.453 )
- 日時: 2010/03/28 13:47
- 名前: 亮 (ID: nWdgpISF)
97 悪魔との語らい
悪魔の様に笑う。
私たちのココロを、見透かしたように。
何もかも、分かっているかのように。
私たちを絶望へと導く、“悪魔”。
でもそれは、たまに、子供のように泣きそうなカオをした。
「中務、隼、人」(香澄)
香澄は、とぎれながらもその名前を口にする。
それだけでも苦しい。
首にナイフを突きつけられ、耳元で悪魔がささやく。
それに翻弄され、挑発にのる、愚か者。
それが自分。
感覚が戻ってくる。
アイツの腕が、自分を締め付ける感覚が。
そして、その目の前では———————————————血だらけの、彼ら。
「そう、中務。 アイツのこと、知ってるやろ? 何でもいい、教えてくれんか?」(オサム)
「え・・・」(香澄)
一瞬のうちに、彼との“悪夢”が走馬燈のように香澄の脳内を駆けめぐる。
「全てを、終わらせる」
そう言って、あの男は。
「一ノ瀬さん?」
オサムが、香澄に呼びかける。
香澄が知っている、“中務隼人”はほんの一部だ。
きっと、香澄が見ていた彼は、本当の彼ではない。
悪魔の様に笑い、ささやき、人を見下し、殺し合いを楽しむ。
その裏には、きっと何かがある。
でなければ、あんなに悲しいカオ、しないでしょう?
「BRの、最高責任者。 そして、主催者」(香澄)
そう、彼が竜崎先生を殺した。
くだらないゲームのために。
「・・・それで?」(オサム)
「他は、知りません。 私たちは、彼のせいで狂いました。 それだけ」(香澄)
香澄は淡々と話す。
憎しみの感情が、香澄の中の大部分を占める。
それなのに、あの“悲しいカオ”が脳にこびりついて離れないのは、何故だろう?
「・・・何やってんねん。 あのアホ」(オサム)
オサムが、帽子をかぶっている頭をいじりながら呟く。
香澄達には、よく聞こえない。
空気を悟ったのか、ユウジや小春、財前達は、健二郎の指導の元、練習へ戻っていた。
「え?」(香澄)
「イヤ、何でもない」(オサム)
オサムは、それまで香澄と合わさなかった目線を、初めて合わせた。
「憎んどんるか? アイツを」(オサム)
想いもしない、質問。
憎んでいないワケがない。
あの男のせいで、全てを失い、ココロが死んだ。
思い出すだけでも、苦しくなる。
あの男さえ、いなければ、皆は、桃は、まだ、私の隣にいたかもしれないのに。
「憎んでます」(香澄)
言い切った。
澄んだ瞳で。 この言葉に、ウソはない。
「・・・そうか」(オサム)
「なんや? その、“中務”とかいうヤツ?」(謙也)
「せや。 気になるんやけど」(白石)
白石と謙也が、口を挟む。
ただ、知りたかった。
たくさんのことを。
そして、一緒に背負いたかった。
香澄と一緒に、たくさんのことを背負いたかった。
「話さな、アカンか、やっぱ」(オサム)
小さくため息をついた。
やっぱり、知って貰おう。
香澄の中の、“憎しみ”が少しでも小さくなりますように。
そして、俺の中のこの感情が、少しでも小さくなりますように。
「何ですか?」(香澄)
オサムはもう1度、香澄のカオを見た。
そして、近くのベンチに腰を下ろす。
「アイツも俺も、12年前のBRの対象者なんや」(オサム)
信じられない言葉だった。
信じたくない言葉だった。
1度では、意味が理解できなかった。
オサムは、話しを始めた。
12年前の、悲しくて寂しくて、残酷で。
そして、全力で誰かを愛した。
——————————————————————————————————————15歳の夏の出来事。