二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ-At the time of parting- ( No.563 )
- 日時: 2010/04/06 16:55
- 名前: 亮 (ID: nWdgpISF)
104 会話すら、自由でない
標的だ。
自分たちは確かに、標的にされている。
「此処まで来れば、大丈夫か?」(オサム)
「たぶん、ね」(リサ)
テニス部トップレベルの2人と同じように走ったリサは、かなり疲労がたまっていて。
その場にゴロン、と倒れ込んだ。
「あー・・・ 疲れた」(リサ)
「悪かった。 何にも考えずに走ってたから」(隼人)
「いいよ。 逃げ切れたんだし」(リサ)
オサムたちも、リサに続いて、その場に座った。
ふと、空を見上げる。
綺麗な、青空。
いつでも変わらない、晴れたこの空。
「風が気持ちいい」(リサ)
そんなの、どうだっていいけれど。
そんなの、いつだってコートの中で感じてきた。
だけど、改めて思う。
こんなときだからか、妙にテニスをしていたときのことが、思い出せる。
目を閉じた。
感じる風も、まぶしさも。
目を閉じてしまえば、全てコートの上に戻れる気がして。
「なつかしい」(オサム)
昨日のことも、もう、何年も前のことに思える。
「何が?」(隼人)
「全部」(オサム)
そう、今までのこと、全部。
不思議と、戻りたいとは思わない、普通の日常全部。
戻っても、今までと変わらない日常を過ごせるはずがない。
だけど。
キミだけは、こんなところで終わって欲しくない。
キミだけは、このゲームの犠牲にしたくない。
キミだけは、その手に幸せをたくさんの幸せを持って、眠りについてほしい。
「よし、続きをするか」(オサム)
「よっしゃ」(隼人)
ノートを開く。
まだ、手がかりになるようなことは1つも書かれていない。
オサムは注意深く、首輪を見た。
1日目も、もう夕方。
時計を見た。 午後6時。
時が流れるのが、いつもの倍以上早い。
「暗い来る前に、手がかりを・・・」(隼人)
「そのつもり」(オサム)
オサムは首輪に衝撃を与えないよう、慎重に見ていた。
夕日が沈むのは予想以上に早く、風もどんどんつめたくなる。
夏が終わる。
もうすぐ秋だ。
「暗くなってきたね。 バックの中に、寝袋とか入ってるよ」(リサ)
リサがデイバックをあさりながら言う。
それでも、3人とも寝ることは出来ない。
寝ている間に殺されたら、元も子もない。
本当は、胸を張って、「うちの部にそんな裏切り者はいない」と、そう言いたい。
だけど、オサムたちは実際、1度殺されかけている。
「信用できねェからな。 この世界にいるヤツは」(オサム)
自分でも思う。
よく、ここまで冷静でいられるんだ、と。
驚くほど、オサムたちは落ち着いている。
「暗ェな。 あんま見えなくなってきた・・・」(オサム)
オサムは、そう言いながら作業を続ける。
リサにも隼人にも、なんの作業かは分からない。
ふと、オサムの手が止まった。
「ん? どうした?」(隼人)
大変なことに、気がついた。
「オサム?」(リサ)
なんて、馬鹿なんだ。
これじゃ、今までのこと全て。
「盗聴器、ついてる」(オサム)
「え?」(隼人)
オサムは、隼人の首輪のかすかに赤く光部分を押しながら話す。
そして、片方の手で、ノートに文字を書いた。
“首輪の外し方、分かった”
「?!」(隼人)
“俺が今抑えている部分は、盗聴器が埋め込まれている”
「とう、ちょう、き?」(隼人)
隼人は小声で言った。
オサムは、頷く。
“これからすぐに首輪を外す”
“そうしたら、全力で、リサを逃がすぞ”
リサに、見えないように、ノートを隼人に見せた。
隼人は、目の色を変えて、頷く。
“たぶん、俺たちの会話を聞いて、大人たちが殺しに来るだろうから”