二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-At the time of parting- ( No.574 )
日時: 2010/04/09 19:58
名前: 亮 (ID: nWdgpISF)

 105 迫り来る追っ手




『やめろ、オサム!』
『ナイフをおろして!』
『やだ。 お前らを殺して、生き残るのは俺だよ』



「妙な、会話をしていた3人ですね」
「首輪を外すとかどうとか」
「何?」
「困ったことになりましたねェ」
「おそらく、首謀者は渡辺オサムです」
「・・・ふざけたことを。 とらえろ、最悪、殺しもかまわん」
「しかしッ 殺し合わなければ意味が!」
「このまま逃すことだけは許されない」






「この地獄から、逃すわけにはいかんのだ」





逃げないさ。
俺たちは逃げない。
リサを救うために。


「ここで・・・ッ お前たちを殺す」(オサム)
「隼人ッ」(リサ)


オサムが、ナイフを構え、隼人に向かっていく。
リサが叫ぶ。

「オサム!」(リサ)

首輪を外すタイミングを、自ら作るための演技だ。
盗聴器の存在に気がつくのが遅かったため、もう、悪あがきでしかないのだが。
隼人がナイフを刺すふりをするのとほぼ同時に、オサムは自分の首輪を外す。
同じような手で、リサとオサムも首輪を外していた。

「完璧」(隼人)

隼人は、ニヤっと笑う。

「もう、大人が追ってくる。 海へ行くぞ」(オサム)
「おぅ」(隼人)
「ほら、行くぞ。 リサ」(オサム)

リサは、少し遅れてニコッと笑い、頷いた。

「逃げようね。 一緒に」(リサ)

そう。
叶うなら、


—————————————————————————一緒に。


自分たちがしようとしていることが、とても残酷なように思えたんだ。
“一緒に”
これは、永遠に、叶わなくなる。


ごめんな、リサ。


「ああ、帰ろう」(オサム)


本当に、ごめん。


「逃げ切ろうぜ」(隼人)

リサはきっと、気がついていた。
俺たちのココロの闇に。
だけど、言わなかった。
それは、リサの精一杯の気遣いだった。
俺たちは、何1つ気がつかずに。


「走るぞ」(オサム)


目の前のコトに気を取られすぎて。
走ることばかり考えて。
他のトコロに目がいかない。
なんて、愚かだったんだろう。


オサムたちがいたのは、かなり森の深い部分だったらしい。
走っても走っても、ヒカリが見えない。

「くそっ 何処なんだよ、此処!」(隼人)
「隼人、道成に進むしかないよ!」(リサ)

隼人はいらだちを抑え、ただ走ることに専念した。
会話を聞かれていた以上、自分たちの行動を大人たちが見過ごすワケがない。
逃げなくてはならない。
追っ手が来る前に。

「う、わッ」(隼人)
「隼人?」(オサム)

草の影に隠れて、足下が見えないせいか、隼人は何かにつまずいた。
おそるおそる、草をかき分ける。


「!」(隼人)


隼人に手に、流れるように血が付く。

「どうした?」(オサム)

隼人の手が、震え始める。
リサは声を抑えた。
オサムは下を見ると、人が倒れていた。

「おい・・・!」(オサム)

抱き上げると、腹に怪我を負い、出欠が多い。
脈は、もう無い。

「誰、が、こんな・・・」(リサ)
「・・・ッ」(隼人)

ダメだ。
ゲームはすでに、始まっている。
誰にも止めることの出来ない、死のゲーム。
もう始まっている。



誰にも、止められない。



誰も、止まらない。
生きるために。

俺たちはまだ中学生で。
これから、何でも出来るはずで。
まだまだ、人生始まったばかりで。
どんな幸せだって、手に入れられるはずで。

こんな、くだらないゲームで、道を踏み外しさえしなければ。

こんな未来、望んでなんかいない。
殺したヤツも、殺されたヤツも。
俺たちも。
こんな結末、望んでいない。

「・・・ッ」(オサム)

ここへ来て、初めて涙が流れた。
何を見ても、何が起こっても、動じない自信が合ったのに。

「・・・オ、サムッ」(リサ)

気丈なリサでさえも。
いつも、馬鹿見たくうるさい、隼人でさえも。
涙が、流れた。


走らなければ。
なのに、足が進まないだ。




未来なんて贅沢すぎるから、いらない。
かわりに、俺たちのぶんも彼女に。
僕たちには、少しだけの希望をください。



それだけで、いいんです。
後少しの人生に、希望をください。