二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-At the time of parting- ( No.589 )
日時: 2010/04/11 17:39
名前: 亮 (ID: nWdgpISF)

 106 行き着く場所は





強引に、涙を止めた。
流れる涙を、必死に飲み込む。

「行くぞ」(オサム)
「うん」(リサ)

隼人も立ち上がる。
迫り来る時を、感じたからこそ、再び立ち上がった。
ここで止まっていては、何も得ることが出来ない。
捕まれば、“死”しか待っていないだろう。

「走ろうか」(隼人)

立ち向かう者にのみ、“希望”が与えられる。
そう、信じよう。

「うん」(リサ)

オサムを先頭に、走り始めた。
当てのない、暗闇の中を。
出口のない、森の中を。
ただ、希望を探して。



「森のいたるところへ、小隊を派遣しました」
「何処へ居ても、すぐにとらえることが出来ます」
「ん。 いいだろう」
「そして、小隊には武器を持たせています。 抵抗するようなら、発砲も仕方ないかと」



出口を見つけることさえ、困難な森に、明かりが差し込んだ。

「こっちだ、海がある!」(オサム)

オサムは草をかき分け、海岸に出た。
吹き付ける風は、妙に生暖かい。

「何か、ボートは・・・」(隼人)
「あ、あっち!」(リサ)

リサの指さす先には、一艘のボートが。
オサムは駆け寄った。
そして、その質を確かめる。

「これなら」(オサム)

充分だ。 逃げ切れる。
やっと、希望をつかめた。

「乗るぞ」(隼人)

リサを、まずは乗せよう。
そう、2人はアイコンタクトを取る。

「・・・」(リサ)

守るよ。 何があっても。

「早く、乗れ」(オサム)

此処には、オサムたち以外は居ないはず。
それなのに、後ろから草をかき分ける音がする。
オサムは焦って、リサの背中を押した。

「誰か来た、リサ、早くしろ」(オサム)
「・・・」(リサ)


守りたい。 キミを。
キミの未来を。


リサは、しばらく考えていた。
どうすることが、彼らにとって一番イイコトなのか。

「・・・早く、リサ」(オサム)

彼らのやろうとしていること。
そんなの、とっくの昔から知っている。

「確認、してもいい?」(リサ)

リサは、口を開いた。

「何を?」(オサム)

オサムは、少し焦りながら言った。
すぐ後ろには、きっと大人たちが詰め寄っている。

「リサ?」(隼人)

隼人も、首をかしげた。






「一緒、だよね? これからも」(リサ)






何かを悟ったような、震える唇でで。
ココロを見透かしたような、綺麗な瞳で。

いつも、彼女は、俺たちを問いただす。

「・・・リサ」(隼人)

隼人は、名前を一言口にして、また唇をかみ締める。
オサムは、狼狽えるココロを抑えながら、笑った。



「一緒に、決まってんだろ」(オサム)



行き着く場所は、ウソだらけの世界。

リサは、悲しそうな瞳だった。

「そう、だよね」(リサ)

力なく、呟いた。



この時、俺が違う答えを言っていたら。
リサも、交えて、共に戦うことを選んだなら。









あの悲劇は、起こらなかったかもしれない。
リサはまだ、ここにいたかもしれない。






ふと、そう思うときがある。