二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ-At the time of parting- ( No.665 )
- 日時: 2010/04/26 20:43
- 名前: 亮 (ID: cX1qhkgn)
112 いつしか当たり前に
「ほら、こっちや」(財前)
「あ、うん」(香澄)
財前に案内されて、教室に入る。
普通は先生に案内されるところなはずだが。
「あーっと、席何処やろ?」(財前)
初めて見る顔に注目して、香澄に視線が注がれた。
それは、青学で感じた冷たい視線ではないが、少し恥ずかしかった。
自分のコトを知っている人がいるかもしれない。
それが1番不安だ。
皆が一生懸命、救ってくれた命と、自分の過去に何の引け目も感じていない。
だけど。
やっぱり、BRのコトは知られたくない。
此処で、居場所を取られたくない。
「あ、あっこや。 開いとる席。 何や、俺の隣やん」(財前)
「あ、そうなんだ」(香澄)
財前が席に向かって歩き出す。
香澄は後ろを付いていった。
席に着くと、財前は耳にイヤホンをし、音楽を聞き始める。
そうなると、香澄は困ってしまう。
ふと、顔を上げると、クラスの女子達が集まっていて。
「ね、名前なんていうん?」
そんな、質問攻め。
個人情報に関する、一般的な質問。
普通の転校生と同じだ。
でも、1つだけ。
変わった質問があった。
「何で、財前君と一緒に来ん?」
これには、困った。
よく分からないが、すごく、答えずらかった。
「えと、テニスコートで会って、連れてきて貰ったの」(香澄)
女子達は、納得していないようだった。
財前は、そんな様子をやはり、横目で見つめる。
笑って、穏やかに。
まるで、普通のコのように。 何もなかったかのように。
彼女は振る舞う。
でも、それは。
何処か寂しげで。 悲しげで。 儚くて。
今にも溢れ出しそうな“自分のキモチ”を押し殺している。
こちらまで、苦しくなる。
「一ノ瀬」(財前)
そんな彼女を、ここから連れ出したい。
「え?」(香澄)
気がつけば席を立ち、香澄の手を掴んでいた。
「来い」(財前)
息がつまる。
何も知らない無神経な奴らの前で、普通のコを装う彼女を見ると。
だから、連れ出してやる。
何も、我慢しなくてええから。
「ざ、財前、くん?」(香澄)
戸惑ったように、彼女を俺の名を呼ぶ。
後ろから、冷やかすような、嫉妬のような、声が聞こえた。
「ええから、来い」(財前)
少し時間をおいて、香澄は頷いた。
「うん・・・」(香澄)
それから、一緒にいるのが当たり前になった気がする。
「“香澄”」(財前)
名前。
「な、何? 財前く・・・」(香澄)
「光でええよ」(財前)
「あ、うん」(香澄)
我慢しなくて、いい。
だから。
「しゃーないから、これからは俺と一緒におれ」(財前)
しゃーないから、やで?
彼女は、ほほえむ。
きっと、これはホンモノ。
「うん」(香澄)
今では。
一緒にいないと、落ち着かない。
いつも、いつでも、心配なんだ。