二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-無駄な感情- ( No.75 )
日時: 2010/02/09 18:44
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)

 64 具体的




「香澄—————————ィッ!」

誰かの声が、遠くで聞こえる。

死ぬのかな。
もういいよ、死んだって。
くずれた希望を、元に戻せる自信がない。
こんなもんなんだ、死ぬって。
痛くないや。
眠るみたいだ。
希望なんて、最初から無かったんだ。
有る気がしていただけで。

だって、生き残った後のコトを考えるのって、怖かったんだ。

あの人がいない世界。
この人と話せない世界。
キミと笑いあえない世界。
あなたを、愛せない世界。

そんなところで生きていたって悲しいだけじゃない。
だから、死んじゃってもかまわない。



「香澄先輩! 香澄先輩!」(リョーマ)

真後ろにいたリョーマは、頭から血を流し、倒れてくる香澄を支えた。
手やジャージが、香澄の血で紅に染まる。

「香澄!!」(跡部)

跡部も駆けつける。
その後に宍戸も続き、全員が、香澄を囲む。

俺たちの光を、心の支えを、もう失いたくない。
コイツがいなくなったら、本当に何を思って生きればいいか分からなくなる。

皆が香澄の元に駆けつける中、桃は1人立ちつくしていた。

「・・・英二先輩、アンタ・・・」(桃)
「お前も殺すよ、桃」(英二)

よくも、よくも香澄を。
そんな、憎しみの感情しか浮かばない。
これが、このゲームに“乗る”と言うことなのか。

英二先輩を殺したい、本気でそう思う。

「許さねェ・・・ッ」(桃)

桃は、自分のピストルを構える。
自分を止められない。
間違っている、なんて分かっている。
こんなコトをしたって、意味が無いくらい分かっている。
だけど。

見かねた跡部は、大声し、止めに入った。

「止めろ! 桃城!」(跡部)

気持ちは、誰より分かっている。
あの時、ジローを傷つけた樺地を、どうしても許してやれなかった。
殺したい、殺してやる。
何度も心の中で叫んだ。

本当は、これっぽっちも、そんなこと思ってなんかいないのに。

だから、止めてやらないと。
俺に香澄がしてくれたように。
後戻りできなくなる前に。

「桃城! 聞こえねェのか!」(跡部)

止めろ。 お願いだから。

「桃城!」(跡部)

跡部の声が、聞こえていないわけではない。
だが、桃は答えなかった。
桃の瞳には、英二しか映っていない。

スキが出来た。
今なら、英二を仕留められる。

桃は、引き金に手を掛けた。

「・・・死んでください」(桃)

引き金を引く。
だが、彼のほうが、少しだけ早かったようだ。