二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ−サヨナラ、− [テニプリ] ( No.841 )
- 日時: 2010/07/10 17:54
- 名前: 亮 (ID: TtH9.zpr)
128 越えられないライバル
弱いトコ。
何処だろう。
私の弱いトコ。
何処だろう。
ああ、
———————————————————全部、だ。
「白石さん?」(香澄)
香澄は冷静さを取り戻し、白石に呼びかける。
白石は顔を隠すようにしており、表情は解らない。
「私は、大丈夫ですよ?」(香澄)
いつもの調子で香澄は淡々と話す。
それが、白石は気に入らない。
「何が、“止めてください”、や」(白石)
「え?」(香澄)
あの言葉は、お前の弱いトコ。
自分じゃ制御出来ない部分が有ることを、明確に示している。
でも結局、お前は見せなかった。
「・・・あれは、」(香澄)
香澄の言葉を遮る。
「初めから、自信あったんとちゃうか?」(白石)
「え?」(香澄)
「初めから、自分を制御できるって、なんとなく解っとったんとちゃうか?」(白石)
「そんな自信、なかった、です」(香澄)
香澄は小さく言う。
それは、キミの強いトコなのか弱いトコなのか。
「そんなら、何でや?」(白石)
キミはいつだって、弱さの端しか見せてくれない。
「自信がなかった、それだけです。 私は、たぶん、隼人さんが話してくれなかったら、」(香澄)
香澄は、息を呑む。
自分が、いかに恐ろしいかを、噛み締めるように。
「たぶん、殺してました」(香澄)
白石は、香澄の声からしっかりとした意志を読み取った。
この場で考えた言い訳ではない。
きっと、このコは、本当に。
殺 そ う と し て い た
そんな素振り、1度も見せず、己の中で怒りを煮てきたのだ。
「あんな話聞いちゃったら、もうあの人を憎む気なんかしなくなりましたよ」(香澄)
いつものように、香澄はヘラヘラとした、それでいて何処か落ち着いた調子で話す。
「ほら、あんなに苦しんできた人を、周りに優しくして貰っている私が憎むなんて、なんだか可笑しくないですか?」(香澄)
「そんなコト、あらへんよ・・・」(白石)
「私、皆に怒られるのも怖いですし」(香澄)
「?」(白石)
———皆?
白石は浮かんだ疑問を口にはせず、香澄の話を聞いた。
「皆、人を憎むって、絶対しなかったから。
私は、そんな皆に、生き残して貰った“幸せ者”のくせに、誰かを憎みながら生きる、なんて寂しいこと、したら駄目なんです」(香澄)
———そうだよね。 そうだよね、皆。
そうでも思わなければ、きっと、潰れてしまう。
“一ノ瀬香澄”という人間が、潰れてしまう。
本当に、ただの“抜け殻”になってしまう。
「香澄・・・」(白石)
白石はただ、名を呼ぶ。
それから言葉を紡げず、口を閉ざした。
その代わり、もう1度、抱きしめている腕に力を込めた。
十分、香澄にも伝わる。
白を確認した白石は、意を決して、口を開いた。
「香澄が・・・ 自分の中でどんな考え方しとっても構わん。 俺は、香澄の思うままに生きて欲しい」(白石)
今度は、香澄が白石の言葉を脳に刻む。
なんとなく、言われることは解っていた。
「何でもええから、取りあえず、俺を頼れ!!!」(白石)
———謙也も、香澄も、どうしてお前らは・・・
———そうやって強くおろうとするんや。
それがどれだけ、寂しいかしらんやろ。
「白、石、さん」(香澄)
突然の耳元での大声に、香澄はカラダを強ばらせる。
白石は、構わず続けた。
「香澄の考え、それでええと思う。 誰も憎むことなく、受け入れればええと思う、認めて行けばええと思う」(白石)
こんなに必死な白石の声は聞いたコトがなかった。
「せやけど・・・ 俺は此処におる! 香澄を支えたい! 皆みたいに、一緒に生きたいんや」(白石)
“生きてくれ・・・ 香澄!”
この時、何故か白石の言葉が、希望を捨てたあの時の桃の言葉と重なり————
白石の腕の温もりが、あの時の桃の温もりと重なった。
「も、も・・・?」(香澄)
「!」(白石)
あの日、あの時、キミたちに何があったかなんて、知らない。
だから、知りたかった。
「桃、城、くん・・・?」
香澄の言葉に、白石は砕かれた気がした。
香澄はいつもいつもいつも、“皆”を思っていたワケではない。
たった1人の、大切な大切な————————“彼”を。
越えられないライバル。
俺の愛には、それが存在する。
結局のトコロ、きっと10年経ってもこのまんまなんやろな