二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ−サヨナラ、− [テニプリ] ( No.851 )
- 日時: 2010/07/17 17:17
- 名前: 亮 (ID: TtH9.zpr)
- 参照: 瞳に映るのは、あの頃の皆。
131 あの時のあの子
早くも、夜がやって来た。
白石も香澄も、今日はちょうど仕事に暇もあり、8時に駅前に待ち合わせだ。
香澄は予定よりも少し早く、駅前にいた。
人混みに白石の姿を探していると、自分の鞄の中から着信音が聞こえる。
「あ———」(香澄)
香澄は、文面を見て軽く微笑んだ。
顔を見なくても分かるほどの明るい文章。
———日向先輩・・・
香澄は中学時代の先輩の顔を思い浮かべながら、文章を読む。
そこには、BR廃止を喜び、香澄への感謝のキモチと祝いのキモチが記してあった。
———先輩、見てくれたんだなぁ
香澄はすぐに、『自分だけの力じゃない』というコトを伝えるため、返信した。
「香澄!!」(白石)
聞き慣れたその声に顔を上げると、笑顔で手を振る白石がいた。
香澄も携帯から目を離し、白石に手を振る。
「悪い! 待ったか?」(白石)
「ちょっとね。 でも、私が早かったし」(香澄)
「そうか。 ・・・メール? 仕事か?」(白石)
香澄の携帯を見て、「急な仕事でも入ったのか」と、白石は問いかける。
「・・・、私に仕事以外トモダチおらんと思ってるやろ」(香澄)
香澄は返信を終え、携帯を閉じながら不満げに呟いた。
「いや、そーゆーワケやあらへんけど」(白石)
慌てて訂正する白石。
「珍しいな、と思て」(白石)
確かに、香澄は仕事を始めるまで、白石や四天宝寺メンバー以外からのメールはあまりなかった。
大阪にそんなに親しいトモダチはいないのだ。
だから、誰からなのか凄く気になる。
だけど、深く突っ込んでも良いのか、不安。
香澄はそんな白石の心境を悟り、軽く微笑んだ。
「先輩。 ———青学の、先輩や」(香澄)
「え、」(白石)
「日向葵。 知ってるやろ? 中学の時の全国決勝で会ってると思うで?」(香澄)
白石は、記憶をこじ開ける。
もう10年も前の、立海大対青学の決勝戦。
そこにいた、香澄以外の女の子。
「あぁ、S3終わった手塚くんに、飛び付いていったコやな?」(白石)
白石は得意げに言う。
同時に、“手塚”のその後を思い出す。
———あぁ、きっとそのコも。
「そう。 あの時はさすがにビックリしたわ。 先輩大胆や」(香澄)
「せやな。 金ちゃんが大騒ぎしとったわ。 でも、どうして急に連絡とりだしたんや?」(白石)
「急でもないで? 大学入った頃に、向こうから調べて連絡してきてくれてん」(香澄)
香澄は当時のコトを思い出し、嬉しそうに、そして寂しそうに、笑う。
「・・・BRが、廃止になるのをずっと望んどったヒトや」(香澄)
知らない間に、大好きな人が此の世界からいなくなる。
それは白石にはとても想像できないコトで。
白石ただ、想像する。
———きっとそのコも、香澄と同じやったんやろな。
「でもさ、手塚部長は最後まで私たちのために動いてくれたんやで?」(香澄)
香澄は、珍しくあの日のコトを語る。
「日向先輩に、そのコト伝えたら、“アイツらしい”って幸せそうに笑った」(香澄)
白石は思う。
どうして、大切な人を失ったキミたちは、
そんなにも、強いんだろうか。
——————
集まる場所は、決まって焼き肉。
白石と香澄は、白石の車でやって来た。
入り口に人影。
見慣れたような、見慣れないような、懐かしい彼。
彼は香澄たちに気がつき、満面の笑みでこちらに話し掛けてきた。
「香澄! 白石ぃ!」
該当に照らされて光る、赤色の髪の毛。
香澄の顔にも、笑顔。
「久しぶりやなぁ! 金ちゃん!」(香澄)
「へへ、ホンマやな」(金ちゃん)
コドモのような笑顔は変わらない。
いつ以来だろうか。
「3ヵ月ぶり、やから、そんなでもないけどな」(白石)
白石は苦笑いしながら言う。
「せやけど、毎日会っとった高校や中学ん時とは違うやんかー!!」(香澄)
「せや! 再会がうれしゅうないんか、白石ー!!!!」(金太郎)
「そーゆーワケちゃうわ!」(白石)
他愛のない会話は続く。
それが途切れた時、一瞬。
金太郎の笑みも、消えた。
「・・・・・・、?」(香澄)
———何か、ある。
香澄は、そう悟る。
「蔵リンに香澄ちゃんに、金太郎はんも! 中入りや!」(小春)
その声に反応して、3人は店へと入る。
懐かしい顔は揃っていた。
「お久しぶりです」(香澄)
オサムもそこにいた。
そして———————————、中務隼人も。
時へ経て、関係は変わる。
そのココロに秘められた、キモチも。
再会。
いつも見下ろしていた彼は、もう見上げなければならなくて。
そのココロのうちなんて、読める筈もなくて。