二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ−サヨナラ、− [テニプリ] ( No.856 )
- 日時: 2010/07/19 15:34
- 名前: 亮 (ID: TtH9.zpr)
- 参照: 瞳に映るのは、あの頃の皆。
132 それぞれの“今”
皆は香澄たちの到着を待っていたようで、焼き肉の準備は整っていた。
色んな意味で、香澄も四天宝寺の皆も、思い出深い料理。
それを前に、皆はそれぞれの話をしていた。
「香澄ちゃん!」
香澄の名前を呼ぶのは、きっと1番親しい“女トモダチ”。
「小春ちゃん、なんだか久しぶりですね」(香澄)
「そやね、3ヶ月前の時はアタシおれへんかったからなぁ」(小春)
昔と変わらぬ小春の容姿。
口調も、何も変わらない。
香澄のほうは、敬語なのは変わらないものの、関西弁独特の発音になっている。
「・・・」(香澄)
香澄は、まじまじと小春を見た。
「? 何や? 香澄ちゃん?」(小春)
「・・・、なんて言うか、小春ちゃんて会う度に可愛くなりますよね」(香澄)
冗談のようなその言葉に、小春は瞳を輝かせる。
「香澄ちゃんだって、十分綺麗やんかぁ」(小春)
そんな、まるで女の子同士の会話に嫉妬しているのは、2人。
「(俺がそれ言っても、そんなに喜ばえんやんか! 小春!)」(ユウジ)
「(なんであないにカンタンにそれが言えるんや、小春のヤツ・・・)」(白石)
そんな2人の心中にも気がつかず、2人は会話を続けた。
そして、香澄は、全員に目をやる。
こうして集まるのは、初めてではない。
だが、いつもいつも改めて思う。
“大人になったんだな”、と。
自分が迷惑ばかり掛けていたあの頃から、随分時が経っただな、と。
———今も、私は迷惑かけっぱなしなんやろな。
「金ちゃんスーツ似合わへんなぁ」
謙也の声が、笑い声混じりに飛んで来た。
その声につられ、皆金太郎のほうを見る。
確かに、らしくない姿だった。
いつもは中学の時とさほど変わらない服を着ている金太郎が、今日は何故かスーツに身を纏っている。
香澄たちと違い、仕事があるわけでもない。
「うるさいなぁ、謙也ぁ! 自分かて、白衣なんか似合わへんやろ!」(金太郎)
顔を真っ赤にして反論する金太郎。
「ゆうたな、俺のイケメンすぎる白衣姿、見たことないやろ」(謙也)
「甘いな、謙也。 白衣なら俺のほうが似合うっちゅー話や!」(白石)
「ちょ、どっからわいて来たんスかこのナルシスト・・・」(財前)
コドモな会話を続ける3人。
香澄は金太郎をフォローするように口を開く。
「金ちゃんも大人になったっちゅーことやね」(香澄)
「まー、確かに、大人になってもらわんと困るわ」(財前)
財前の冷めた声に、金太郎が不機嫌そうに問う。
「どーゆー意味やねん」(金太郎)
「俺らと同じ高校行きたいって言い出して、偏差値足らんくて困ったの、何処のどいつや」(財前)
香澄は財前の言葉を聞いて、その頃のことを思い出す。
香澄と財前は、1年遅れて白石たちと同じ高校に入学。
その1年後に、金太郎も同じトコロを希望したのだが、金太郎の成績が良いはずもなく。
苦労するのは当たり前のことだったのだ。
「ええやんか〜ッ 結果的にちゃんと高校行けたんやからー!!」(金太郎)
金太郎の大きな声に、財前はため息をつき、香澄は微笑んだ。
そして白石が口を開く。
「そういえば、何か話しがあるんやろ? 金ちゃん」(白石)
何故か、金太郎は罰悪そうに俯いた。
香澄は、その様子を見て金太郎に尋ねた。
「ね、金ちゃん。 相談でもなんでも聞くで?」(香澄)
その言葉に、皆が一瞬止まる。
金太郎は顔を上げ、香澄の顔を見た。
視線は金太郎に集まる。
「相談っちゅーか、なんちゅーか・・・」(金太郎)
話しにくそうに、頭をかく金太郎。
そんな様子を見守る他の皆。
「・・・、何かの報告か?」(謙也)
謙也のセリフに、金太郎は過剰に反応する。
図星なのか、顔を赤くした。
「そんなトコロ、なんやけどな」(金太郎)
「なんや、焦らさんとはよ言いや」(オサム)
それまで隼人と話していたオサムが、金太郎に向かって言う。
金太郎は、静かに口を開く。
「アメリカ・・・・・・、行くことに、なってん」(金太郎)
空気が、ピタリと止まる。
「なななな、なんや、それ!!」(謙也)
「きゅ、急な話ばいね」(千歳)
金太郎は頷いた。
「てゆーか、それ何でや」(財前)
「何時のことや?」(ユウジ)
それぞれの疑問を、金太郎に向かって話し始める。
香澄は何も言えぬまま、見つめていた。
「金ちゃん、最初から全部説明しぃや」(白石)
白石が落ち着いた声で言った。
「うん・・・」(金太郎)
彼は一歩踏み出そうとしている。
彼は越えようとしている。
決して越えられないライバルを、胸に秘めて。