二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-無駄な感情- ( No.87 )
日時: 2010/02/12 18:56
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)


 67 変える力




俺も、そう思った。
ベッドの中で目が覚めて、自分のこの手で、アイツを殺したと実感したとき。
自分は、このゲームに“乗っていた”と自覚したとき。
“最低”だ。
なんて、“最低”な人間なんだろう。
そう思った。


「最低ッスよね。 俺」(桃)

痛いほど分かるぜ、お前の気持ちは。
俺だって、あの時、このゲームに乗っていた。
乗せられていたんだ。
自分の心が、体が、言うことをきかなくて。
頭は“止めろ”そう言っているのに。
心は“殺したい”と身勝手に叫び、手は引き金を引く。

自分が自分じゃなくなる。

そんな、イヤな感覚。

「生きている資格なんて、ないんスよ」(桃)

心が凍り付いたように、動かない。
まるで、“死んだ”ように。

「英二先輩の“無理”とか“無駄”って言葉を聞いたとき、香澄も死ねばいいって思ったんス」(桃)

跡部は、桃の話を黙って聞いた。
何かを、つかみ取るように。

「希望なんて持てた気がしてただけだったんだって、思った」(桃)

あの時、このゲームに乗った瞬間、心は死んだ。
希望を失い、生きる支えさえも失い、心は死んだ。
もしかしたら、それ以前から、俺たちの心は死んでいたのかもしれない。

俺たちは、生きているが死んでいる。

そう、キミを除いては。

「情けねェな、桃城よ」(跡部)

突然の、跡部のキツイ言葉。
桃は話すのを止めた。

「跡部さんだって、気持ちは分かるって言ったじゃないッスか」(桃)

そうだ。 分かるさ。
俺たちの心は、ずっと前から殺されている。
自由は、奪われている。
そして、情けない最低な自分がいる。
全部、分かってる。

だから。

「だから、生きるんじゃねェか」(跡部)
「は?」(桃)
「アイツを、笑顔で元の世界へ戻すために」(跡部)

たとえ俺たちがいなくても。

「俺たちには、やるべきコトがある。 そうだろう?」(跡部)

アイツが、また笑えるように。

珍しく、跡部が穏やかに笑う。
桃も、次第に取り戻していく。

心を。

いつも日にか、キミが1人になっても。
また、笑えるように。


俺たちが・・・