二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ−サヨナラ、− [テニプリ] ( No.873 )
日時: 2010/08/13 18:43
名前: 亮 (ID: TtH9.zpr)
参照: 彼らのために精一杯生きる、幸せになる。なんて、たんなる言い訳。

 137 言い訳




ふと、頭を過ぎるのは、


———私は、何のために生きている?


という、愚問。



——————



金太郎からのメールの直後、別の人物からの電話。
香澄が出ると、明るい声で話す、2人組。

『香澄!! 今夜、話があるんやけど、駅前の居酒屋来れるかぁ?!』
「・・・・・・、もう酔っぱらってるとか、言わないですよね?」
『香澄ちゃん、俺らのコト何やと思てますか。 そこまでアホやないわ』
『オサム!! いい加減携帯返せ。っつーか、俺もお前と同類にするな』
『あー、はいはい、』

電話のむこうから聞こえる、香澄そっちのけの会話。
香澄は軽く微笑む。

『もしもし』
「こんにちは、隼人さん」
『悪いな、オサム説明不足だったろ』
「まぁ、」
『8時半、駅前の居酒屋。 いいか? なんの話かは、そん時な』
「はい」

隼人は、此処10年で凄く変わった。
落ち着いた人格で、誰より香澄を気に掛けてくれる。
香澄はそれを感じ、10年前のBRのことを許していないとはいえ、今も交流を続けている。

「それじゃ、また夜」
『仕事中に悪かったなぁ、』
「オサムちゃんも仕事じゃないんですか」
『俺はええんや』

意味不明の言葉を発し、オサムは一方的に通話を止める。
香澄はため息。


「しゃーないなぁ、もう」


何処か幸せそうに、楽しそうに見えるのは、気のせいだろうか。


「そうだ、蔵に遅くなるって言わんと・・・」


———蔵。

焼き肉のあの日から、何度も何度も、白石のコトを考えると申し訳ない気持ちになる。
それなのに、はっきりさせられないのは。
今の状況を、幸せを、失いたくないから。

———金ちゃんをあんなに悩ませて、蔵にこんなに迷惑掛けて、謙也さんにも、心配させて。

そんな、自分に。


———幸せを維持する資格なんてないのに。


香澄はため息を付く。
携帯を閉じ、仕事を進めながら香澄は考える。

———桃。

彼にすがる、弱い自分。



———ごめんね。



こんな言葉しか出てこない、弱い自分。
1番言わなくてはならない人に言えない、弱い自分。


「一ノ瀬、この書類任せた」


上司の声に、香澄の意識は一気に現実に引き戻される。

「え?」
「コレ、頼んだぞ」

積まれた、書類の山。

「あ、はい!!」

———今は、考えるのは止めよう。

香澄は手を動かし始める。
仕事をしている間は、なんとなき気が紛れるのだ。
だから、仕事はスキだ。



そんなもの。





逃げ、だと解っているのに。





——————



「解っとるわ・・・」

白石はアパートに帰る途中、呟く。
隣には、謙也。

「アホ、解ってへんやろ。 自分、誤魔化してもしゃぁないで」
「煩いわ。 ちゅーか、何処まで付いて来るきや」
「言わへんかったけ? 今日は自分の言え泊まるで」
「はぁ?!」

謙也のいきなりな発言に、白石は呆然。
等の本人は、楽しそうに笑っている。

「狭い家住んでんやろ? 別に気にせんでもええよ」

そう言って、茶化す。

「そうゆーコトとちゃうわ」

呆れながらも、一緒に帰る。


「ホンマは、香澄に話があるんやろ?」


白石は小さく言う。
謙也は、きょとんとしていて。

「・・・・・・鋭いねんなぁ」

と、呟いた。

「ホンマ、いらんトコ鋭いわ」
「うっさいなぁ」
「この際やから、光と金ちゃんも呼ぶか」

謙也は携帯を取り出し、電話を掛けようとする。


「ちょい待ち!! あの狭い部屋にそないに入れるとおm「光かー?? 今から、白石の家集合な」謙也ぁぁ!」


通話を終えた謙也は、ニヤリ、と笑顔。



「ホンマ、勝手やなぁ」



変わらない。







今日もまた、変わらない皆と、変わらない話しが出来るんだ。







“変わらない”


それが理想だと気がついていながら、実現できていると思いこんでいる。