二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ−サヨナラ、− [テニプリ] ( No.878 )
日時: 2010/08/15 16:53
名前: 黒百合 (ID: TtH9.zpr)
参照: 得意なのは、偽ること、欺すこと、誤魔化すこと。

 138 トランプ




睨み合う2人。
一歩は真剣な顔で、もう一方は余裕の笑みを浮かべて。

「さぁ・・・・・・、どないします??」
「チッ」

舌打ちをし、より強く相手を睨みつける。
緊張感溢れる中、2人はお互いの心中を探り合う。

「そんな挑発にはのらへんで」
「どーでしょうね。 目ぇ泳いでますよ??」
「いちいちうるさいわ、」

笑みを浮かべた青年は、ため息を付く。


「早いとこ、引いてくださいよ。 謙也さん」


笑みは崩さないまま。

「言われんでも引くっちゅー話や!!!!」

勢いよく。
かつてない勢いで、謙也は財前の手から奪い取った刹那——



「ぐわ、ジョーカ・・・・・・ッ!!」
「よっしゃぁ!!」



絶望と歓喜の声が交錯する。

「また負けたぁぁぁぁあ!!!」
「先輩弱いッスわ。 これで17戦17敗」
「数えてたんか、数えてたんですか、光くん!!」

漫才の様な会話を、端から見守る白石と金太郎。
そんな中、部屋にチャイムが鳴り響く。


「お、」


白石は立ち上がり、玄関の戸を開く。

「いらっしゃい、香澄。 ・・・ゆーて、いつものコトか」

そこには、楽なジャージに身を包んだ香澄。

「蔵の部屋、みょーに賑やかやったから。 来てみた」
「せや、賑やかやで。 謙也が1人で騒ぎまくってんねん」

香澄は、ふふ、と笑う。

「とりあえず、入りや」

白石の言葉に頷き、香澄はサンダルを脱いで部屋の奥へ進む。
不思議なくらい、普通に。
その背中を見つめながら、白石には色々な疑問が浮かんでは消えていった。


———オサムちゃんと、中務さんと、何話してたんやろ?


香澄はつい先程、オサムと隼人と会っていた筈なのだ。
あの2人が香澄を娘の様に大事にしているのは知っている。
香澄があの2人を親の様に慕っているのも知っている。
だからこそ、3人で話す、ということが、重要なコトに思えるのだが——、香澄は何も報告しない。

———何でも、なかったんやろか。

白石は今は言うべきではないような気がして、その話題をあえて避けた。



——————



「ちょ、何やってんねん」

香澄の冷めたツッコミが入る。

「あ、香澄!!」

金太郎はいつものように香澄に飛び付く。

「遅かったやんか、香澄」
「よっしゃ、香澄になら勝てる気ィするで」
「何やって?」

謙也は束にしたトランプを香澄の前に突きつける。


「しょーぶや、しょーぶ!」


香澄は困ったように微笑んで、

「中学生か、」

と呟いた。
そして、香澄も中学生と化するコトとなる。


「なんでや!! なんで負けるんやぁぁあ!!」


謙也の怒声が響き渡る。

「謙也が弱いのが悪いで! もう何回目や、飽きたわババ抜き」
「謙也さんすぐ分かるんスよ、どれがババかとか」

後輩2人からダメだしされる謙也。
謙也はパッと香澄を見る。

「何でお前もよゆーに勝ってんのや!!」
「何でそんな理不尽なコト?!」
「ホンマ弱いねんなぁ、謙也」
「うるさいで白石!」

負けた謙也はブツブツと文句を言いながら、散らばったトランプを片づける。
そうしながら、ふと呟く。



「なぁ・・・・・・、“ダウト”せぇへんか?」



皆、きょとん、とする。

「あれ、ダウト、知らんかったか?」

謙也も、皆の反応に、きょとん。

「いや、そんなことないけど」

香澄が首を振りながら言う。




“ダウト”は——
プレイヤーに均等にカードを配り、プレイ順を決める。
そして、A、2、3、4、・・・10、J、Q、Kの順に自分の板に対応したカードを裏を向けて出す。

しかし、カードを出す際に、他のプレイヤーを欺すことも可能だ。

自分の番に対応したカードであるカードを出す必要はない。
相手を欺き、あたかもそのカードが対応しているかの様に振る舞い、自分の手札を減らしていく。
他のプレイヤーはそれを見破り、対応していないと思った時——、「ダウト」とコールをかけるのだ。
かけられた場合、カードを表向きにし、
対応した場合はコールしたプレイヤーが、していない場合はカードを題したプレイヤーが、
場にあるカードを全て引き取る。


それが何度も何度も繰り返されるため———、“終わらないゲーム”の代名詞でもある。


より嘘が上手く、より相手を見抜ける者が、勝利者となるのだ。




「ルールは知ってるで!」

金太郎も続いて、声を上げる。

「せやけどなぁ・・・・・・」

白石は困り顔。

「自分、この中で1番弱そうッスよ??」

財前はあきれ顔。


「そ、そうか??」


謙也は焦り顔。


“1番弱そう”


その言葉が、白石の頭を過ぎる。



———本当に?



本当に、謙也が弱いのか?



彼に頭に浮かぶ、違う人物が過ぎる。
それを、振り払った。












願わくば、勘違いで在って欲しい、と思いながら。










「ほなら、ゲーム開始や」



ほら、欺しあおう。
キミは、得意だろう??










いつだって、偽って生きているのだから。