二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ−サヨナラ、− [テニプリ] ( No.897 )
- 日時: 2010/09/01 18:27
- 名前: 亮 ◆A2rpxnFQ.g (ID: TtH9.zpr)
- 参照: 彼方のためです。サヨナラ。
142 俺にください。
「香澄の寂しさも不安も、悲しみも、過去も——、全部一緒に持ったるから」
付き合っても居ないのに。
最初は、そう思って避けていた。
本当はずっと、スキだと伝えたかったのに。
“弱いところを見せて”
“頼って”
“俺は此処にいるよ”
そんな言葉で、彼女を縛り付けて。
彼女が、俺の気持ちに気がついてくれるのを願って。
待っていた。
だけど、俺たちは————、時間を掛けすぎた。
問題なんて、1つも解決なんてしていないんだ。
それなのに知らないフリをして、平穏な日々を偽って暮らしていた。
隣同士で。
その偽りすら、壊れていこうとしているのに。
彼女の嘘を、見抜けるようになってしまった時点で———、俺たちは“サヨナラ”に向かって歩き始めている。
だから、どうしても。
キミを繋ぎ止めたい。
「わ、私・・・・・・」
気持ちの整理が出来ない。
目の前にあるのは、指輪。
目の前にいるのは、大切な人。
「私は、」
——“誕生日”、その言葉を聞いた時、何を思っていた??
香澄は、俯いて手に力を入れる。
———最低だ、この人を目の前にして、それでもまだ、心の中に———、桃がいる。
「蔵、」
優しい蔵。
いつもいつも、励ましてくれた。
いつもいつも、隣にいてくれた。
ずっとずっと、支えてくれた。
ずっとずっと、愛をくれた。
この人を、傷つけたくない。
裏切りたくない、愛したい、一緒にいたい、失いたくない———————
「ごめん、なさい・・・・・・」
どうして。
どうして、私は。
「ごめんな、いきなり、吃驚したやろ」
「え、」
「でも俺、真剣なんやで」
「それは、すっごく分かるよ」
白石は、眉を歪めて頬笑んだ。
「理由・・・・・・、訊いてええ?? さすがに、このままじゃ気ぃすまんわ」
香澄は、コクリ、と頷いた。
「いつも・・・・・・」
今にも消えそうな小さな声。
こんな声を聞くのは、何時以来だろうか。
「此処で、」
そう言って、香澄は自分の左胸を指す。
「此処に、桃がおるんや。 それで、いつもいつも、笑って笑って、私の名前を呼ぶの」
手を差し伸べてくれる。
どうしようもなく寂しいときに、笑って「香澄!!」と名を呼んで。
「頑張れ」、と言ってくれる。
「だから、私はまだ、吹っ切れてない。 蔵のことも、大事、だけど、たぶん、」
そこで一度、言葉を切る。
「たぶん、ちゃんと愛せない。 蔵に愛、返せない」
———知ってる。 自分の中、まだ桃城クンでいっぱいなことくらい。 知ってんで??
白石は、ふぅ、とため息。
「自分、俺の言うてること分かってないやろ??」
———え?
「え?」
疑問がそのまま、声にでる。
「分かってないわ、香澄。 俺の言うてること、ちゃんと分かってない」
「そんなことないよ、私、分かってるつもりや。 分かってるから、断ってるんやんか」
「俺が言うたこと、聞いてたか??」
お願いです。桃城クン。
香澄を、俺にください。