二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-無駄な感情- ( No.91 )
日時: 2010/02/13 14:18
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)

 69 託された思い




「生きてくれ」

ああ、今なら、死んでいった人達の気持ち、分かる。
大事な人に、生きて欲しい。
タカさん、大石先輩、不二先輩、手塚部長。
分かります、俺。

「いつだって、乗り越えてきたじゃねェか」(桃)

裏切られたときも、目の前で誰かを失ったときも、崩れていく仲間を見たときも。
戦いに巻き込まれたときも。
全部、強さに変えてきただろ?
だから、今も、強さに変えて。
また、笑って。

「香澄・・・」(桃)

生きて。
散々、自分が人に言ってきたのに。
「希望を捨てないで」「死ぬなんて言わないで」
幾度となく、願ってきたのに。

「桃・・・」(香澄)

香澄の目に、涙がこぼれる。
泣かないって決めたのに、涙は勝手だ。

「ごめん・・・」(香澄)

希望は持てない。
だけど、生きなくてはいけないの?

「生きようぜ、香澄」(桃)

希望がなくても、あなた達が、一緒なら。

「生きるよ・・・ 桃」(香澄)

心だけは、守り通す。
桃は、香澄の手を強く握り替えした。
香澄の言葉を聞いて、皆は安心した。

これで・・・消えられる。

だから・・・キミは、生きて。


「桃・・・?」(香澄)
「なんでもねェよ」(桃)

託した思いを、伝えることは出来ない。
キミを、深く傷つけてしまうから。


ようやく、一段落付いたところに、あの音楽が。
そう、放送だ。

「え、まだ・・・ 12時になんてなってないのに・・・」(赤也)
「さっき、かかったはずだろ?」(宍戸)
「何で・・・?」(ジロー)

香澄も、桃に手を借りて体を起こす。
キズは幸い浅く、回復が早い。
しばらく雑音が続いた。
中務の声は、なかなか聞こえない。

「何なんだよ・・・?」(宍戸)

宍戸は焦って、後ろを振り向く。

「な・・・ッ」(宍戸)

そこには、見たことのない、男が1人。

「誰、だよ・・・ テメェ・・・」(宍戸)

聞かなくても、分かる気がした。
男は、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
帽子を深くかぶっていて、顔は見えない。
だけど。
不敵に笑う口元だけが、妙に目に付く。
この男は・・・・


「中務・・・・?!」(宍戸)


いつの間にか、手には汗。
そう、俺たちの命は、コイツの手元にあるんだ。
男は、帽子を脱ぐ。

「せーかい☆ 俺が、主催者の中務 隼人。 政府のモノだよ」(中務)

全員が、凍り付いたように動けない。
まだ、1日以上残っているはず。
その間に、俺たちは香澄を残して消えるはずだった。
なのに。


「最初のほうはさ、おもしろかったけど・・・ 飽きてきた」(中務)


何を言っている?


「知ってる? 政府が作った、このゲームのルール」(中務)


静まりかえる森。
香澄は、桃の手を強く握った。

皆と、一緒に生きたい。

人の心はコロコロと変わるモノだ。

冷や汗が、流れる。



「ゲームが進まなければ、大人が参加してもいいんだよ」(中務)




限界が来た。
そして、訣別の時が来る。