二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-無駄な感情- ( No.95 )
日時: 2010/02/15 22:10
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)

 71 売られた




「両、親・・・?」(香澄)

お父さん、お母さん。
きっと、私たちはテニス合宿をしていると思っているだろう。
何も変わりなく、この状況を知らずに過ごしているだろう。
明日には、我が子が帰ってくると信じて。

「何の関係が有るの・・・?」(香澄)

香澄がそう言うと、中務はニヤリと笑う。
それを見て、香澄は悪寒を感じた。

「パパやママも、知ってるんだよ」(中務)
「え?」(香澄)

“知っている”? 何を?

「何が言いたいんスか?」(桃)
「君たちはね、親に売られたんだよ」(中務)

“売られた”・・・?

「自分の命が惜しくて、君たちを売ったんだよ。 パパとママは」(中務)

自分たちの“死”では無く私たちの“死”を選んだと言うこと。
それは、つまり、家を出発する時点で、私たちは親にさえも裏切られていた。
そう言うことだ。

「“政府からの命令だ。 逆らうと殺す”。 
 そう言えば、BRにキミたちを参加させる、と言ったよ」(中務)

「いってらっしゃい」笑顔でそう言ったお母さんが?
「頑張れよ」そう言ったお父さんが?
自分の命を選んだ。
香澄は、その場に尻餅を着いた。

「ウソ・・・でしょ?」(香澄)
「ウソだよ、そんなの・・・」(ジロー)

心が、崩れていく。
傷だらけになっても、耐えていた心が、ついに崩れる。

「ウソだ! こんなのただの挑発だ! お前ら、まともに聞くな!」(跡部)

跡部が大声で皆に指示をする。
もう遅い。
跡部自身も、挑発され動揺している。

「ウソ、じゃないんだけどね」(中務)

それでも尚、中務は挑発を続ける。
脅しでもウソでも何でもない、真実を伝えて。

「キミから、いこうか? 一ノ瀬さん」(中務)
「!」(香澄)

しまった。
宍戸は咄嗟に思った。
コイツのねらいは、俺たちをゲームに乗せること。
“太陽”が無くなれば、俺たちはどうなってしまうのか。

香澄がいなくなれば、俺たちに協力する術は無くなる。

全てが、崩れる。

「おいでよ、一ノ瀬さん」(中務)
「香澄は渡せねェな、渡せねェーよ」(桃)
「騎士が付いているワケね」(中務)

桃は、香澄の前に立つ。
どうせ、香澄のために死のう、そう思っていたんだ。
コイツのためなら、戦える。

「桃、ダメ。 あの人、本気だよ」(香澄)
「安心しろ、皆で生き残るんだろ?」(桃)

また俺は、無責任なことを。
こんな約束、果たせやしないのに。

「大丈夫だ」(桃)


お前だけは、生き残すから。