二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ポケスペ†君と一緒に†41/42話UP ( No.529 )
日時: 2010/04/01 15:31
名前: 月音 ◆MoYaKs53do (ID: ixDFu4/i)

#43  恐怖と不安、そして…

どれくらい時がたっただろう。いやそんなに経っていない、その間、ユウトは引っ切り無しにユウナの名を繰り返していた

事情を言葉上でしか知らないレッド達はただ呆然と立ち尽くすだけだった
その時、背後から声がした

「………やっぱり、重すぎたみたいだ。ゲンガー」
「……………お前は?」

向かいの牢で、ボールに入ってるであろうゲンガーに語りかけているその男にシルバーは誰だと問う
ボールから視線を外し、3人を見つめる視線に彼らはユウナの優しい視線を連想させた

「まさか………ユウナの父さん……っスか?」
「あぁ。…………過ちを犯してしまった無様な父親さ」

そう力なく言った言葉を言った彼の瞳は、3人の奥に居るユウトの背中を見ていた
それが何かを訊かなかったが、ユウトに関係しているものだと解釈した

「…………あの、ユウナは何であんな風に……?」
「僕のゲンガーは人の“過去”を見せる“催眠術”を覚えていてね………ユウナの過去を、見せた…。というより、思い出させた……
ユウナはゲンガーの言うとおり夢に囚われる事無くおきた。でも……再び、闇に囚われてしまった…」

父の口から零れる言葉はだんだんと小さくなっていき、最後の言葉はつぶやくように消えていった

ユウナの過去。それはシアンが語っていた過去だろう
言葉上でもその過去は恐ろしく、絶望的だった
それを自ら見るのだから、精神が不安定になってもおかしくないだろう
ふと、シルバーは後ろを振り返る。そこには先ほどと変わりなくユウトに抱かれているユウナの姿があった
その光景にかつての自分と重ね合わせてみる
ユウトの体からちらりと見えるユウナの瞳は、やはり初めて逢った時のように意思を含んでいなく、自分より綺麗だと思っている銀のようで蒼い瞳は、濁って見えた
それは、かつての自分とそっくりで。
周りから心を閉ざして、たった一人の姉しか信じられなくて、そんな自分を救い出したのがユウナとゴールドだった
旅をする中で、彼女の優しさを知り、魅かれて行った
決着の時、彼の優しさと正義を知り、羨ましく思った
ユウナは自分の慕っている姉と似ていた。明るく優しいけれど心のどこかで何かに怯えていて
それでも塞ぎ込んだ自分に優しく接してくれたのがそっくりだった
ユウナの過去を知って、戦闘のためだけの「機械」と、仮面に服従するだけの「人形」は似たり寄ったりしていて、その途中で逃げ出したというのも似ていて
だからお互い共感できる部分があったのだろう、と今は確信を持って言える

「……………娘に、出逢えて良かったかい?」

ふいに、彼にそう問われた3人
戸惑いなく最初に答えたのはレッド

「はい。ユウナは………いつも一生懸命で、ポケモンに優しくて………でも何処か弱いところがあって、自然と護りたくなる。そういう奴なんです」

その言葉に、ゴールドはそうだ。と言う様にうなずく
シルバーも、小さくそうです。とつぶやく

その答えに喜ぶように、そして慈しむ様な笑みをみせて、そうか。と言った

「僕は、本当にナナカマド博士の研究所に預けて良かったと思っているよ。…変な言い方だけどね
あそこにユウトという子供が居ることも知っていた
第二の理由でユウナを彼に逢わせたかった
……こんな事が起きなくてもいずれ逢うだろう。と思っていたけどね。僕の予想は見事に外れてさ……」

と言い、彼は一度ため息をつき、再び話す

「僕は、彼の…ユウトの両親を殺してしまった
………愚かな神の人間さ」

その発言に3人は驚き、チラリとユウトの見る
彼と特に仲のいいゴールドは気づく、彼の肩が少しだけゆれていることを
きっと、今までの会話をすべて聞いていたのであろう
それでも、目の前の幼馴染を救い出そうと必死だった


「………聞こえてるんだろう、ユウト」
「……あぁ、最初からな。お前がユウナの父さんで俺の両親を殺した犯人で………」

ユウトの発する言葉の意に怒りは込められておらず、寧ろ哀しんでいる様に思えた

「……でも、お前が心のそこからやりたかったわけじゃないんだろ?」
「よくわかったね……その通りだよ」

父がそういうと、ユウトはやっぱり。と呟き続けた

「こんな優しくて強くて脆いユウナの父親が自主的にするわけない。俺はそう信じてましたよ」

その言葉を聴いて、本当に優しいのはお前だ。というのを押さえ込み、3人はここからでは見えないユウトの表情を探る
きっと、泣いてるだろう。と思いながら



「……ユウナ。俺はココに居るよ。ずっと君の傍に居るよ。だから……笑ってよ。立ち上がって……
俺が、君の光に、太陽になってあげるからさ……」

ユウナに、そして心にいる兄にも言うようにユウトは易しく、力強く言う


その時、硬く閉ざされたユウナの口が開く


「ほん、とう………?」
「本当だよ」
「ぜっ………たい?」
「うん。絶対に、もうこの手を離さないし、離させない」
「…………ありがとう………!!!!」


やっと、ユウナは自分の過去から抜け出すことができた
そして、涙を流すその瞳には前に誓ったあの時とは違う、決意が込められていた

そして、ユウトの言葉はユウナに安心感を植え付た
その様子を見ていた3人は不覚にも、涙目になっていた
レッドは、その言葉の意味に、少しだけ寂しさを感じていた



ありがとう。大切な家族。私はもう逃げない、負けない
目の前に壁があるなら乗り越えればいい。貴方もそうしたんでしょ?

なら、私にだって、きっと—————————


続く