二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【BLEACH】黒猫綺譚——onigoto—— ( No.9 )
- 日時: 2010/01/21 21:15
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: YpJH/4Jm)
【第一話】終幕への歯車が廻り始めた日
厳かな雰囲気が漂う一番隊隊舎を訪れたのは朽木白哉六番隊隊長
押し潰されそうな重々しい空気の中でもその静かな湖面のような表情は眉一つ動かない
彼の向かい側に対峙するのは一番隊の主山本元柳斎重國総隊長
隊舎の厳かな雰囲気はこの人から滲むものだと誰がも納得するようなその風貌は老いを知らない
今日、白哉がここを訪れたのは他でもない総隊長に呼ばれたから
顔を出してすぐに話を始めようとしない総隊長に耐え切れず自ら口を開いた
「本日は私に何用ですか」
感情など滲まない冷たい声音に動かなかった総隊長の眉が僅かに動き、瞳が開く
何かを迷っているような珍しく煮え切らない態度の総隊長は暫くして漸く口を開いた
「おぬしと阿散井に一つ仕事を頼みたい」
その言葉に白哉は無言で頷いた
彼の瞳に迷いの色がないのを見て総隊長は言葉を続けた
「先日、現世より朽木ルキア十三番隊隊士の重度霊法違反が報告された。よって、彼女の捕縛を命ずる」
白哉の瞳を真っ直ぐに見据え、彼のどんな動揺も見逃さぬようにと緊張した総隊長
だがそれに反して白哉の反応は淡白だった
「出立はなるべく急いだ方が?」
総隊長の命に了解とも引き受けぬとも言わぬまますぐさま実行への問いかけ
表情は無のまま声音にも変化はない
『相変わらず冷静な男じゃ』
白哉の言葉に無言で頷きながら改めてそんなことを思う
幼い頃は熱くなりやすいと祖父が溢していたのに
今はその見る影もない
それを成長の証と取るかは人それぞれだろう
「では、失礼します」
スッと頭を下げて踵を返す
音もなく歩き出す白哉に結局総隊長は声をかけなかった
養子であるとはいえ、妹の罪を裁くために捕縛を命じたのはさすがに酷だったか
見送った後の心に僅かな後悔が残った
「いやぁ、お兄様も大変やね。妹の尻拭いせなあかんて」
総隊長のもとから辞して最初の曲がり角を曲がった時
そこに気配なく居た男に白哉は僅かに驚いた
「兄には関係のないことだ、盗み聞きなど性の悪い」
驚きにピクリと動いた眉を隠すように顰め、横目で己に話しかけてきた男市丸ギンを見据える
冷たく突き放すような白哉の声音に市丸は狐面に似た顔を苦笑に染めながら口を開いた
「何ゆうてんの?盗み聞きなんざしてへんで。たまたま、ちょっとここら辺散歩しとったら面白い話が聞こえたんでお邪魔しただけですわ」
わざとらしい笑みと共に言われた言葉を相手にする気はないようで、白哉は市丸に向けていた視線を前に戻した
「そうか、兄がそう言うならばそうなのだろう。私は散歩などをする暇人の相手ができるほど暇ではない……失礼する」
最後の言葉は半ば吐き捨てるように言って白哉は市丸の傍を通り抜けた
その背中を市丸は笑顔で見送っていた
「流石にルキアちゃんのこととなると荒れてますなぁ、朽木隊長も……やっぱあの人も人の子やね」
そう呟いて心底面白いというように口元に手を当てて笑いをこらえる
これで"自分達"の目的の第一段階は終了した
さっそく"あの人"に伝えなければならない
音もなく市丸は廊下から姿を消す
急ぎ足で目指すは"あの人"のもと
自分が正義だと信じる彼のもと