二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【ボカロ】悪ノ物語【小説】コメ募集;; ( No.314 )
- 日時: 2011/04/02 22:59
- 名前: 奏 (ID: jTvjGEcm)
続き
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2人は4歳になり、ろうやのような場所に閉じこめられました。
なんでも、双子というものは災いをまねくらしいのです。
今までそんなこと、一度も言われなかったのに。
王子さまはそう思いました。
王女さまは、いつもたいくつで、空がオレンジ色になるころには眠ってしまいます。
そんなとき、王子さまはいつも窓から見える空を見上げてすごしていました。
ある日、王子さまと海にいった、背のたかい女中が、毛布をもってやってきました。
「お寒くはないですか?王子。」
王子さまは寒くない、とぶっきらぼうに答え、言いました。
「僕らは、どうなるの?」
女中はしばらく黙りこんだあと、しゃがみこみ辺りに人がいないか確認しました。
そして、声をひそめて王子さまに語りかけます。
「詳しいことは教えることが出来ません。ただ、お2人はこれまでのように、一緒にいられないかと。」
女中はそれだけ言うと立ち上がり、去っていこうとしました。
すると、それを止めるかのように王子さまが
「・・・・・・うそつき。」
と呟きました。
女中は足を止め、王子さまを振りかえり、淡々と話し始めました。
「・・・何が、うそつきなのですか?・・・」
「・・・僕、お願いしたもん。あの海で。
ずっと、ずっと2人一緒にいられるようにって、ずっと双子でいられるように・・・って・・・!!」
王子さまの声は、涙声にかわりました。
それをみた女中は、再び語りかけます。
「・・・願いを叶えるかどうか、それは王子、貴方次第。
もしもこの先、何らかの選択肢があるのだとしたら、貴方は王女と一緒にいられる・・・
そんな道をたどればいい。」
女中はそれまでのやわらかな雰囲気ではなく、
かたく、はりつめたような声でそう言いました。
しかし、すぐに優しげな声にかわり、続けました。
「・・・貴方は・・・王女に、幸せになってもらいたいのでしょう?・・・」
「・・・うん。でも、離れたくないし、それに・・・。」
「ええ、王女にとっても貴方は大切な人。離れるなんて考えられないでしょうね。
ですが・・・もうきっと、元には戻らない。
幸せなあの生活には、二度と戻ることはない・・・この国が終焉をむかえるまでは・・・。」
王子さまは女中をまじまじと見つめて、
不思議そうに尋ねました。
「・・・どうしてわかるの・・・?」
女中はうっすらと笑みを浮かべて続けます。
「さぁ・・・?どうしてでしょうね・・・。
とにかく、貴方は貴方の選択を・・・。
それによって、貴方の願いが天に届くのかどうか、決まるわ・・・。」
女中は、あきらかに話し方や表情がいつもと違っていました。
「貴方には、本当に感謝してるわ。お城で働いていたとき、正直消えてしまいそうなほど弱っていたの。
弱って、黒いかたまりの姿に戻ってしまって、貴方に助けられた。
ありがとう。私を生かしてくれて。」
女中はそう言い、悲しげな目で王子さまのひとみを覗きこみました。
「さあ、もう私がここですることはないでしょう・・・。あとは終焉を待つのみ。
私はここから去るわ・・・。ブリオッシュの作り方はこの紙に書いておいたから・・・。
じゃあね、心優しき王子さま、どうかお幸せに・・・。」
女中は、王子さまに綺麗に折りたたんだ紙をわたし、
あの日の黒いかたまりの姿へ変わり、そして霧のようにろうやの前で消え去りました。
王子さまは紙をにぎったまま、
しばらく女中の言葉を思い出していました。
「・・・僕が、僕のねがいをかなえるための、選択を——・・・。」
王子さまのうしろでは、王女さまが可愛らしい笑顔でねむっていました。
この数日後、
国が終焉を迎えるまでのカウントダウンが始まりました。