二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【BLEACH】黒猫綺譚——onigoto—— ( No.7 )
日時: 2010/01/24 20:48
名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: 8mWgckGw)

【第三話】戯れの記憶・上



黒猫と朽木ルキアが出会ったのは
今から数年前、黒猫がまだ隊長格の顔全員を覚えきれていない頃
いつものように市丸の後ろについて行動していた時のこと

その日市丸は六番隊に用事があると言って黒猫ごと出かけた
隊長を探しながら六番隊隊舎を我が物顔で歩く市丸
その後ろから慣れない場所におどおどしながら歩いている黒猫
そんな二人の向こう側からやってきたのは同じ様に男性と幼い少女
端正な顔立ちを無表情に染めたまま歩いてくる白い羽織を着た男性
その後ろから無表情というよりは緊張した面持ちで歩いてくる黒猫より少し年上の少女


「何故、兄が私の隊舎にいる」

市丸と後数mという距離で立ち止まった白哉は開口一番にその存在理由を問うた
相変わらずの冷たいもの言いに市丸は苦笑を浮かべながら口を開いた

「何でて…六番隊隊長さんに話あるから来たんよ」

そう言いながら挙げた片手には数枚の書類が挟まれていて
一応仕事で来たのは確かなようだった
その様子を見てまだ納得がいかないような顔で白哉は眉を顰めたが、一応頷いた
その一瞬に下がった視線が黒猫を捉える

「この者は」

短いが突き刺さるような声音に黒猫はビクッと反応して市丸の後ろに更に隠れた
そんな黒猫を市丸は笑いながら前に出す
渋々従って白哉の前に出ながらも、黒猫は決して視線を上げなかった

「最近…ゆうてももう何年か経つんやけど、僕んとこの子や」

ポンッと黒猫の頭を叩きながら適当すぎる紹介をして意外とあっさり手放した
すぐに市丸の後ろに隠れ直した黒猫はそっとその陰から顔をのぞかせて、白哉の後ろに控える少女を見た

緊張しているように唇を固く結んだ少女は凛とした美しさがあって
何をそんなに緊張しているのか分からなかった

「ルキアちゃん、元気しとる?」

市丸が少し屈んで少女に問いかけると先程黒猫がしたのと同じような反応で見上げた
恐れているような色をその大きな瞳に滲ませて薄く唇を開くと

「はい、お陰さまで」

と言って視線を逸らした
その反応を見て苦笑を浮かべた市丸は白哉に向き直り、頭を掻きながら喋りはじめた

「妹さんは相変わらず警戒心強いですなぁ…そろそろ慣れてくれてもえぇのに」

市丸の言葉を聞いて改めて少女を見た
この人は、彼の妹
確かにその美しさは似通う所があるように感じた
じっと見つめていると、その視線に気づいたのか少女が顔を上げた
交わった視線は温かいもので
少女が僅かに浮かべた微笑も黒猫の心を安心させた
兄とは違う優しさがあるように感じる

「ルキア…私は仕事がある、お前がそうしたいのならばその子と遊んでくるがいい」

白哉の言葉に驚いたかのように視線を上げた少女
黒猫も窺うように市丸を見上げた

「行っといで、黒」

その言葉を合図にしたように少女は黒猫のもとへ歩いてきた
躊躇いがちにその手を取って庭の方へとつれていこうとする

「私は、朽木ルキアと言う…お前の名は?」

温かい手に大人しく引かれながら黒猫は笑顔で答えた

「俺は、市丸黒猫って言います」






顔を合わせた二人はどちらともなく笑いあって、穏やかな日差しが差し込む庭へとかけ出した