二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: キミに追いつくその日まで 【テニプリ】 オリキャラ募集- ( No.161 )
日時: 2010/03/17 17:07
名前: 亮 (ID: nWdgpISF)


 −第12話−



「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ、神田サービスプレイ!」


葵と澪が用意した対戦表を元に、まずは瑞生の試合だ。
瑞生はダブルス向きで、誰と組んでも呼吸を合わせることが出来る。

そして・・・


「ほいっと」(瑞生)


「わッ」

見事なまでのボレー。
そして、次の打球への俊敏生。
ここまでの急角度のボレーは、葵だって油断は出来ない。


「ゲームウォンバイ、如月! 6−0!」


そして、同じAブロックの新星、蒼。

「すごいね、蒼。 まだ初めて1週間と少しなのに」(葵)
「そだね、飲み込みが早い」(英二)
「英二が特訓したってワケか」(葵)
「ヒミツー」(英二)

葵は、視線を蒼に戻す。

Aブロックで確実に勝ち上がるのは、瑞生と蒼だろう。
だからこそ、瑞生と蒼を対決させる。
先輩に負けるのは“しかたない”と思うかもしれないが、同学年に負けるとなるとそうは行かない。
“悔しさ”を覚えて欲しい。


皆が真剣勝負をしている中、星華はずっとリョーマといた。


「女テニも、試合始まってるみたいじゃん。 行かないの?」(リョーマ)
「私の試合まだ」(星華)
「1年生は、ランク戦に出られないんじゃないの?」(リョーマ)

リョーマは、星華に背を向けたまま言う。


「アンタと同じ理由」(星華)


星華は、持っていたテニスボールで壁打ちをしながら、リョーマに言う。

「ふーん」(リョーマ)

見ていたリョーマも、負けじと始める。
星華も、更に力を入れた。


「おーい、越前! 海堂先輩との試合、始まっちまうぞ!」(堀尾)


それを聞いて、リョーマは不敵な笑みを浮かべる。
「待ってました」、とでも言わんばかりに。

そんなリョーマを見て、普段“クールビューティ”なんて、
呼ばれている星華なのに、どういうワケか、珍しく応援してやろうかな、という気になった。
滅多に人にエールを送ったりしないのだけれど、送るとなればサラッと言う星華。
なのに、うまく言えなくて。

「リョーマ・・・ッ」(星華)

星華の必死の一言に、リョーマが振り向く。
あと一息、もうすこしで、喉まで出かかったこの言葉が言えたのに。



「リョーマくん、私、応援してるから・・・!」



言いたかった、セリフ。


「じゃ、行こうかな」(リョーマ)


先を越された。
隣で、自分の言いたかったセリフを言った女の子は、幸せそうに笑っていて。
一瞬で分かった。

このコ、リョーマのことを・・・

「あ、応援に行かなきゃ」

長い三つ編みをなびかせ、楽しそうに走っていく。
星華の存在には、全く気がつかずに。
今のは確か、同じ1年生の竜崎桜乃。
女テニのコだっけ。



胸の奥に1つだけ引っかかるモノがあるのは、きっと気のせいだよね?



「星華ー、アンタも試合だよ! 早くしろよー」(瑞生)

瑞生の声がした。
早くも、自分の出番が回ってきたのか。
瑞生は、快勝したようで楽しそうだった。

「何、固まってんの? 星華」(瑞生)
「今行きます」(星華)

瑞生の隣を通り、コートへ立つ。
相手は先輩だ。
水城澪。 副部長。
自分以外に、1年生は出ていない。

“アンタと同じ理由”

自分の言葉が蘇る。
振り返ると、リョーマが試合を始めていた。


自分も、集中しよう。


「よろしく、煤美弥さん」(澪)


澪は、優しく笑う。
そして、手を差し出した。
女テニの№2。
倒してやろう、それくらいの意気込みだ。
澪は、星華の実力を見極め、その上で真剣勝負をしなければならない。
葵は、この勝敗を予想できない。



「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ、煤美弥サービスプレイ!」



この胸に引っかかるモノなんて、試合をして忘れてしまおう。
言えなかった言葉も、この後、自信を持って言ってやろう。








星華の、神秘のベールがはがれる。
“プリンス”のテニスが始まる。

そして、“王子様”のテニスも。