二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: キミに追いつくその日まで 【テニプリ】 オリキャラ募集- ( No.97 )
日時: 2010/03/14 11:08
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)

 −第8話−



皆忘れかけている。
葵が何故、青学女テニの部長になれたのか。
あの馬鹿そうな顔の裏に、ちゃんと裏付けされた実力があるんだ。



「本気だな・・・ 葵のヤツ」(乾)


コートから少し離れたところで、乾がボソッと呟く。

「どーしてそう思うのさ?」(英二)
「・・・見ろ。 葵がパワーリストを外している」(乾)
「え?!」(英二)

英二は驚いて、葵を2度見する。
確かに、いつも身につけている手首のリストバンドがなくなっていた。

「アレ、パワーアンクルだったんだね」(不二)

「カワイイ柄だったから、知らなかったよ」と付け足す。
英二や桃、そして河村も頷く。

「・・・葵自身、口には出さないからな。 それを外すってコトは、それだけ本気なのだろう」(乾)

乾が話し終えると、皆はコートに立つ葵を見た。


「「へェ・・・」」(星華・リョーマ)


2人の超1年生も、興味深そうに葵と蒼を見た。



葵と蒼は、握手を交わす。
蒼は、以前笑顔のままだ。

「お願いします」(葵)
「こちらこそ」(蒼)

改めて、試合前のあいさつだ。


「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ、日向サービスプレイ!」


審判が声を張り上げる。
葵は深呼吸をし、トスを高く上げた。

素人だろうと、気は抜かない。

打球は、真っ直ぐに蒼のコートへと伸びる。
誰もが、素人であろう蒼に、まともにテニスが出来るのか?
そう思った。

蒼も、軽く呼吸を整える。
次の瞬間には、葵が放ったボールを、正確に返していた。


「?!」(葵)


誰もが、目を疑う。
“気は抜かない”そう誓った葵でさえも。
蒼は、ニコリと笑う。




「コレ、簡単だね。 先輩」(蒼)




蒼は、ラケットを持っている手を軽く振りながら、楽しそうに言う。
それでも、葵は気を落ち着ける。
伊達に2年間、ここでテニスをしてきたワケじゃない。

すぐに、突き放してみせる。

葵はまたサーブを打つ。
ライン際の、きわどいところへ。
蒼はすぐに反応して、正確に返した。

しばらく、ラリーが続く。
誰も、こんな試合を予想してはいなかった。

「・・・すごいな、如月」(不二)

不二が、意味ありげに笑う。

「並はずれた運動神経ッスね」(桃)
「天性の物を感じるな」(大石)
「そうだね。 経験者じゃなさそうだけど、見て実際に動いてみたら、すぐに吸収できるてカンジ」(澪)

澪は視線を葵に戻す。

「負けるんじゃないよ、葵」(澪)


葵が高くロブをあげる。
だが、少し浅めだった。

「・・・ッ」(葵)

自分の軽いミスにいらだちながら、スマッシュを警戒して半歩ほど下がる。

絶好球!

蒼はそう思って打球に飛びつく。
テニスのおもしろさを、確信しながら。

このスポーツ、今までやって来たのとは全然違う。
だって、こんなにも熱中できる。


蒼は、スマッシュを打つ。
そても素人の物とは思えない、強烈なスマッシュを。


「アレも、見よう見まねでやってるのかな?」(不二)
「どうだろうな、データがないから分からないが」(乾)

乾は一呼吸おいて続ける。


「素人が打てる範囲じゃないな」(乾)


側で聞いていた星華とリョーマは口をそろえて、自分のほうが上だけどね、と言った。

皆の視線は、突如現れた天性の物を持つ女の子に注がれていた。


スマッシュを打つ瞬間も。
打球が、葵のコートへ落ちる瞬間も。


ボールが、コートへ落ちた。
蒼のコートの、蒼の後ろへ。

葵のコートへ放たれたはずのボールは、いつのまにか
蒼の後ろへ落ちていた。


「・・・なんで?」(蒼)


蒼は、今までにない悔しさと、スリルを感じる。
コートから少し離れたところで、手塚が呟いた。




「よく見ておけ。 アレが女子テニス部部長、日向葵のテニスだ」(手塚)