二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *+改×24+* ●テニスの王子様 and テニスのお姫様○ ( No.935 )
- 日時: 2011/02/18 14:42
- 名前: うっさー ◆8.9xsVkhDE (ID: HnQQx7lG)
- 参照: 嗚呼、君ノ声ガ遠クニ聞コエル。ネェ、此処ハ何処…??
*+第二百四十六話+*
「終わったぞ」
紅蓮はゴミをビニールに入れ、余った物を鞄の中に突っ込む。
「っ!! 下手くそ。不器用さは相変わらず直ってないみたいだな」
頬のガーゼを触ると、彼女は紅蓮に冷たい視線。
「不器用?! 何言ってるんだよ、紅蓮先輩は器用じゃねーかよ」
声を荒げながら驚くのは、赤也。
「何処がだ」
「銀花と比べるんじゃねーぞ」
「何故だ」
「あのな、銀花は器用に決まってるだろ。俺と比べるな」
その2人の言い合い(?)を、ポカーンと見つめているレギュラー陣。
「それより、私はお前が大嫌いだ。今すぐ、視界から消えてほしいぐらいだな」
彼女は溜息混じりに、紅蓮を睨み付ける。
「残念。俺はお前の視界から消えるつもりはない」
紅蓮が言うと、彼女は先程より増して睨み付けた。
「いつも、澄ましたような顔しやがって。それが一番ムカつくんだ」
「生憎、俺はこの顔しかできない」
ギリッと彼女の歯軋りの音が妙によく聞こえる。
「言っておくがな、私はお前が二人を突き放した理由を知っている。
だけどっ!!」
彼女は紅蓮の胸倉を掴み、睨む。
「それはただの、自己満足だ!! 自己犠牲だ!!
“2人が幸せになるように”だと?! ふざけるな!!
銀花とお前が別れるのも計算の内だったのか?! それだったら、私は…、私はっ」
彼女は、一回伏せてからもう一回紅蓮を真っ直ぐ見る。
「私は、お前を赦さない」
彼女の声が、全員の胸に残ったのは言うまでもないだろう。
「朔夜、言っておこうか」
紅蓮が静かに彼女の名前を呼ぶ。
「何だ」
彼女は相変わらず、彼を睨み付けていた。
「銀花が俺の元から離れていくのは、予想できてた。
お前の言った通り、分かってたよ。
だから、赦してもらおうなんて思っていない」
紅蓮の発言に、彼女は一つも表情を変えない。
「何故、あのとき、試合になんか出たんだ。出なければ、分からなかったのに。
そうすれば、“あの子”が悲しむコトなんか、無かったんだ」
ポロポロと彼女の目から涙が溢れ出ている。
彼女は気が付かない。
紅蓮はその表情に驚きを隠せないで居る。
「どう、し」
パタッと、彼女は電池がなくなったように、紅蓮に寄りかかった。
「ゲーム、オーバー」
そんな朔夜を抱きながら、彼は小さく呟く。
***
「ん」
輪廻は少し声を漏らし、起き上がる。
「おはよう」
そう言って、ニコッと笑う青い髪の人。
「ゆき、むら、さん…??」
“なんで”と顔や雰囲気が言っている。
「倒れたみたいだからね」
ニコッと笑う幸村から酷な匂いはしない。
「紅い…」
輪廻は自分の髪を見ると、パーカーの帽子を被る。
「何で」
小さく呟きながら、服の匂いを少し嗅ぐ。
「どうかした…??」
幸村は輪廻の頭を優しく撫でる。
「血、嫌だ。血の臭いが、する」
輪廻の目が左右に揺らぐ。
「大丈夫。俺が居るから」
幸村は輪廻を安心させようとニコッと笑った。
「い、嫌だ。あり、す」
その名前を呼んだ瞬間、静かに扉が開く。
「此処に居たんだ。輪廻、帰ろう…??」
ニコッと“彼”は笑う。
「あり、」
輪廻は名前を呼びながら、彼の手を握った。
「幸村さん、どうもすいませんでした」
ペコッと唖李栖はお辞儀をする。
輪廻は彼の後ろに隠れてしまって、表情が見えない。
「あぁ、またおいで、って言ってくれ」
ニコッと笑う姿は、お願いじゃなくて、“命令”
「横暴ですね。僕が貴方のような人に輪廻を渡すとでも??」
唖李栖はぎゅっと、手を握った。
「それはないだろうね。でも、それぐらい良いだろう」
もう一度言う。
幸村は2年も下の相手に圧力をかけている。
「僕と同じ雰囲気の人に輪廻を渡しませんから。じゃぁ、失礼します」
彼は扉を閉めた。
「とか言いつつ、目が揺らいでたよ。唖李栖くん」
幸村の声が、病室で消えていく。
***[唖李栖の病室にて]
「あり」
ぎゅっと、唖李栖は輪廻を抱きしめた。
「お願い、輪廻」
唖李栖はベッドに座り、輪廻は隣の椅子に座っている。
「僕を、独りにしないで。お願い」
輪廻は驚いて、目を見開く。
「唖李栖。泣いてるの…??」
見ようとしたら、ぎゅっと、する力を唖李栖は強める。
「輪廻。僕のお願い、聞いてくれる…??」
輪廻の首筋で、唖李栖は小さく呟く。
輪廻は、唖李栖の背中に腕を回す。
「大丈夫だよ、唖李栖」
輪廻はニコッと笑う。
「私は唖李栖の傍を離れない。ずっと一緒」
「もう寝ようか。あ、手繋いで寝ても良いかな」
唖李栖の言葉に、輪廻も出来るだけ笑顔で頷いた。
***
君の背中に腕を回したとき、
何故か、景色が変わっていくのが分かった。
君の一言。
いつもの“大好き”が、違って聞こえる。
嗚呼、
私は、誰かとの約束を破ってしまったかもしれない。
『君が居るだけで、世界の色が変わって見えるんだ』