二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *+改×24+* ●テニスの王子様 and テニスのお姫様○ ( No.938 )
- 日時: 2010/07/21 22:41
- 名前: うっさー ◆8.9xsVkhDE (ID: HnQQx7lG)
- 参照: 君ガ居ナイ。僕ノ隣ニ君ガ居ナイ。ドウシテ、ドウシテダロウ。
*+第二百四十七話+*
「わ、凄い」
輪廻は花を変えながら、唖李栖に向かって言う。
「僕、重症じゃないのにな…。千羽鶴が送られてくるなんて思わなかった」
「普通の人は考えないわ。“普通の人”はね」
輪廻は送り主を考えながら、敢えて強調する。
「お礼言いに行ってもらっても平気??」
「ちょうど、那紅埜にも用があるから大丈夫」
輪廻はパーカーの帽子を被ると、テニスバッグを肩にかけた。
「じゃぁ、安静にしててね」
ニコッと笑ってから、病室から出て行く。
***
「りんねー!!!」
「輪廻ちゃーん!!」
「お、輪廻じゃん!!」
若干、三人。いや、三匹が走ってきている。
「っと」
それを障害物のように、輪廻は避けていった。
手はポケットに突っ込んだまま。
「姫さん、久しぶりやなァ」
忍足がニコッと笑えば、輪廻はペコッとお辞儀。
「あの人居ませんか。常識外れの此処の部長さん」
下を向いているので、どういう顔をしているか忍足には分からない。
「俺様に何の用だ。何だ、告白でも「笑えない冗談、止めてくれます??」」
そこで止めれば、レギュラーは少し笑ってる。
「跡部さん鶴、有難うございます。だけど、写真で送るの止めてもらえますか??
しかも何ですか。“本物は後日贈る”って?!
いらないです。邪魔です、飼えません。天然記念物です」
その発言には、レギュラー全員が驚いて跡部を見た。
「仕方ねぇな。それより、お前はそれだけを言いに来たのか」
跡部は、ぴょこん、と立っている耳を見ながら言う。
「いや、様子見も兼ねてです。支障がないかどうか、ですけど」
輪廻は答えると、コートを見る。
だが、残念ながら彼らは自分の周りに居るのだけども。
「実力行使、ね。嫌いじゃない。そういうの」
輪廻は小さく呟いた。
「お前、レギュラーは自分の近くに居る、って気付いてるか」
跡部の言葉に驚くと、輪廻は周囲を見回す。
見回す、と言っても足元しか見れていないだろうが。
「嗚呼、ごめんなさい。若干、視界が悪くて」
「かなり、の間違いじゃねーのか、アーン??」
輪廻の言葉の後、隙もないような勢いで跡部が言う。
「まさか、こんなのいつものことですよ」
クスッと笑う輪廻。
口元しか見えないから、本当に笑ってるなんて誰にも分からない。
「そう言えば、皆さんって“凄い人”なんですよね」
思い出したように、彼女は言う。
「今頃わか「黙ってください」」
跡部の言葉を遮ったのは、もちろん輪廻。
「噂で聞いたんです。氷帝はお金持ち学校だー、って。初耳だったんで驚きですけど」
輪廻が言えば、全員が逆に驚き。
「え、ちょっ待っちぃ。じゃぁ、唖李栖の授業料とか誰が払ってるんや??」
忍足が聞くと、輪廻は首を傾けた。
「榊監督ですけど??」
その発言に衝撃を受けたのは、言うまでもない。
「そう言えば、長太郎の親父は弁護士だったよな」
宍戸が行き成り振るものだから、鳳は若干しどろもどろ。
「へェ。弁護士さんなんですか。凄いですね」
輪廻の声のトーンが少し上がる。きっと、本当に思っているのだろう。
「有難う」
彼は笑顔で答えた。
だけど、その表情が輪廻に届くことはない。
「輪廻ちゃん、俺と試合してほしいCー」
ニコニコ笑っているであろう彼は、輪廻に向かって言う。
「今日は止めておきます。それに、部活があるじゃないですか」
輪廻が断れば、ジローは「Aー、Eじゃん」と言った。
「それにー、輪廻ちゃんの笑った顔見たいCー」
ジローが覗き込もうとすれば、輪廻は横を向く。
「輪廻…??」
那紅埜が心配そうに、彼女の名前を呼ぶ。
「私、もう帰りますね。裕太、とも約束、ありますから」
これは、嘘であって嘘ではない。
約束はしたが、何時でも良い。
それに、約束場所は“ストリートテニスコート”だ。
「みなさん、怪我に負担が掛からないようにして下さいね。
あ、後。猛暑なので、水分補給をいつもよりマメに。
唖李栖、みたいに倒れたら身も蓋もないですから」
輪廻の言葉に、全員が反応する。
“猛暑”と言っている人が長袖、長ズボンで現れるだろうか。
いや、長ズボンは伸びる生地でテニスには最適。
問題は長袖のパーカーだ。
真っ黒で、右胸に真っ赤なハート。
ぴょこん、と立っているウサギっぽい感じの耳。
「“猛暑”と言ってる割には、暑そうな服装だな」
日吉の言葉に反応したのか、ビクッと輪廻の肩が揺れた。
「隙あり!!」
彼の声に気付いたときにはもう遅くて。
目の前には、さっきまでの黒さはなくて、眩しい程の日の光。
「り、輪廻…??」
那紅埜が驚いたのも当たり前で。
紅い、髪の色が日の光に反射して、キラキラと輝く。
「眩しい…」
小さくポツリと、呟く輪廻。
「え、お前、夏休みだから、染めたの??」
岳人が言えば、忍足は盛大にこける。
「阿呆。で、何でそないな色になってるん」
忍足が聞くと、無表情で彼女は口を開く。
「落ちないだけ」
“いや、そういう意味じゃ…”と言う顔をする忍足。
「長袖の理由は」
「寒い」
「おい、病院に行け。ってか、連れて行く」
「嘘です」
跡部と輪廻の、言い合いを聞きながら那紅埜は違和感。
「輪廻。赤、見ても大丈夫なの…??」
ふいに出た言葉が、周りを静かにさせた。
「大丈夫。意識持ってかれないように、頑張ってる」
そう言った輪廻は、別に“頑張ってる”と言う感じではない。
「でも、こんなコトしなくても大丈夫だとは思うけどね」
輪廻は淡々と話す。そして、帽子を被った。
「何で??」
那紅埜が聞けば、彼女は笑う。
「疲れて、出てこないよ。きっとね」
そう、輪廻は確信していた。
「さてと、私は忙しいからもう行こうかな。ほら、みなさんも練習に行って下さい」
ニコッと笑うと、しぶしぶ、と言う感じに跡部以外はコートに戻る。
「おい、輪廻」
跡部が言えば、輪廻は「何ですか??」と首を傾げた。
「あんまり、気を張るんじゃねーぞ」
ポンポン、と頭を優しく叩いて、跡部を歩き出す。
「別に、気なんか張ってません」
ボソッと彼女が呟けば、跡部は後ろに向かって手を振った。
「だけど、」
「少しだけ、楽になったかも、しれません」
彼女は、優しく叩かれた頭を触りながら言う。
『手を伸ばしても届かない、と感じるのは、
君が、私にとって大きすぎる存在だからだろうか』