二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: *+改×24+* ●テニスの王子様 and テニスのお姫様○ ( No.977 )
日時: 2010/08/13 19:10
名前: うっさー ◆8.9xsVkhDE (ID: HnQQx7lG)
参照: 君ガ何処ニ行コウトモ、俺ニハ関係ナイト思ウンダ。

*+第二百五十九話+*

輪廻が目を覚ましたとき、既に幸村は着替え終わっていた。
そして、もっと驚いたのは、幸村の膝の上に輪廻の頭があるということ。

「っ?! あわわわわ!!」

飛び起きるようにして、輪廻は起き上がる。
クスクスと笑いを堪えるのは幸村だけ。
他の者は、見て見ぬフリ。

「ふふ、おはよう。輪廻」
爽やかじゃない笑顔で幸村は言う。
「お、おはようございます」
何故か引き攣ってしまう頬。

「でも、良いんですか。制服で出掛けても」
思ったコトを口にしたが、テニス部員にとっては禁句だ。
「え?? 聞きたいn「やっぱり遠慮します」」
何かを感じ取った輪廻は、即座に断る。

だが、幸村は残念そうに眉を下げた後、笑った。


























「俺の話を遮るなんて、良い度胸だね。輪廻」

























………、何の度胸だァァァァァ!!!!

輪廻が心の中で叫んだのは、言うまでもない。

(え、何故、心の中だけって?? それはね…)

「輪廻。一人で何言ってるの。ほら、行くよ」

幸村は問答無用で、輪廻の右手を自分の左手に絡ませる。

(口に出したら、怖いからに決まってるでしょ!!)

歩き出す幸村に引っ張られながら、輪廻は後ろを振り向く。

『ご愁傷様』

と、手を合わせているテニス部員達が居た。

(あいつ等っ!! 今度あったら、ボコボコにしてやる!!)

ムカつきながらも、輪廻は幸村を見る。





嗚呼、この人に会うことも、もうなくなるのか。





と思いながら。


***

「ちょ、ちょっと幸村さん!!」

叫びに近い声で名前を呼べば、その足は止まって、輪廻の方を向く。

「何だい??」
あくまで、普通に。
「何処に行くか教えてもらってないんですけど」
少し怒ったように、輪廻は言う。

「そうだっけ??」
きょとん、としているものの、幸村は笑っている。
「そうです。幸村さん、酷いです」
ムスッとしながら輪廻は言った。

「水族館だよ」
「え??」
行き成り、言われたものだから、輪廻はきょとん。

「今から行くところ」
幸村がそう言えば、パァーと輪廻の顔が明るくなった。
「やった!! 私、唖李栖と裕太としか行ったことないんです!! 早く行きましょ!!」
さっきまでムスッとしていたのに、今はもう笑顔。

「(こうしていると、年相応なのにな…)」

なんて、幸村が思ったのは内緒だ。


***

「わぁぁぁ、すごい…」

輪廻はさっきからそれしか言っていない。

「幸村さん!! 見てください!! 凄い大きなエイです」
手をブンブン振って、輪廻は幸村を呼ぶ。
幸村は少ししか後ろに居なかったのだが。

「本当だ。凄いね」
手を硝子に付いて、目をキラキラさせている少女に向かって言う。
「ですよね!! あ、次、行きません??」
ニィ、と輪廻は笑ってみせる。

だけど、

「そうだね」

幸村は気付いていた。

「ほら、幸村さん。手、離さないで下さいね!!」

彼女が笑ったとき、

「ふふ、積極的だね」

一瞬だけ、

「ち、違います!! 迷子にならないように、です!!」

笑みが消えたのを。

「分かってるよ」

だからか、

「むぅ…。幸村さん、意地悪だ…」

余計に、

「ふふ。次に、行こうか」

幸村の胸は締め付けられた。

***

「あー、楽しかったァ」

ストローでコーラを飲みながら、輪廻は呟く。

「ふふ、凄くはしゃいでたもんね。途中、転んじゃったし」
楽しそうに幸村は笑った。
「も、もうそれは忘れてください!!」
そう言った後、輪廻の足が止まる。

「此処までで良いですよ」

幸村はニコッと笑う少女に驚けば、そこが何処かも知った。

“立海大附属中学校”

と、書かれた校門の前。

「駅まで送るよ」
「駄目です」
きっぱりと、真っ直ぐ幸村を見ながら輪廻は断る。

「まだ、練習してるんでしょう?? 部長が居なくてどうするんですか」
ニコッと笑う輪廻。
だけど、幸村には本心なのか、本心じゃないのか分からない。
それが、どうしようもなくもどかしかった。

「でも、危ないよ」
そこまで言うと、輪廻はいつものように笑う。
「大丈夫です。私、強いですから。知ってるでしょう??」
そう言って、首を傾ける。

だけど、

その姿は“強くなんかなかった”

「君は…」

そこまで言って、言葉を呑んだ。
「え??」
きょとん、とする輪廻。

“自分が言って良いのだろうか”

そんな思考が頭の中で駆け走る。

「ううん。何でもないよ」

ぎゅっと、幸村は握り拳を輪廻に分からないように作った。

まるで、

“自分達はまだ浅い関係だ”

と、言われているみたいで。

まだ、信じてもらえなくて。

それが、とても幸村には悔しかった。

「そうですか…?? じゃぁ、幸村さん!! 頑張って下さいね」

そう言って、輪廻は歩き出す。

だけど、少し止まってまた振り向いた。

「紅蓮にも“頑張れ”って伝えておいて下さい」


嗚呼、これか。

紅蓮と俺の違い。


振り向いてまでも、伝える言葉と、そうじゃない言葉。

思わず、幸村は輪廻の右手首を掴む。

「幸村さん…??」

きょとん、とする彼女の瞳には、どんなコトが映っているだろうか。

「危ないことに合わないように、おまじない」

ニコッと笑う幸村。

「おまじない??」

まだ、不思議そうに首を傾げる輪廻。

「そうだよ」

そう言ってから、左目の近くに唇を落とす。

当然、輪廻は驚いていたが、幸村は笑顔。

「アメリカでは挨拶、じゃなかったっけ??」

なんて、惚けてみる。

「あ、っとえっと…」

少し輪廻の目が左右に動く。

「じゃぁ、俺は行くね」

笑ってから後ろを向いて、歩き出す。

「幸村さん!!」

名前を呼ばれ、振り返れば、満面の笑みの輪廻。

「今日は楽しかったです。ありがとうございました」

ペコッとお辞儀をしてから、走って駅に向かう。












































“またね、なんて言えたらどんなに楽だろう”