二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *+改×24+* ●テニスの王子様 and テニスのお姫様○ ( No.979 )
- 日時: 2010/08/14 17:48
- 名前: うっさー ◆8.9xsVkhDE (ID: HnQQx7lG)
- 参照: マタネ、ナンテ寂シクナルカラ言ワナイヨ。
*+第二百六十一話+*
「あーぁ、リョーマもアメリカに行っちゃったし」
ふぁぁぁ、と欠伸をしながら輪廻は言う。
大きい荷物は大体、送ったため軽い荷物だけ。
と、言っても、テニスバッグの中に入れているのだが。
「もう、輪廻ったら。そう言えば、不二さんと手塚さん、試合したんだって??」
コツコツ、と静かに駅の階段を上っていく二人。
「ん、桜乃達から教えてもらった」
ゴクッと彼女はコーラを飲む。
「“桃城さん”も分かってくれたと思うし、もう青学は大丈夫だと思う」
キャップを閉めると、階段を何時の間にか全部上がっていた。
「本当は全部、分かってたんだよ」
ふいに、唖李栖は駅の横を見た。喋ってるのは、輪廻。
「言葉とは、裏腹なものを。気付かないフリしてただけだったんだ」
空になった、ペットボトルをゴミ箱へ捨てる。
「輪廻、見て」
唖李栖の指差した方向を見て、輪廻は目を見開いた。
「リョー、マ。竜崎先生、それに手塚さん」
ゆっくりと、ゆっくり。
断ち切ったものが、すべて戻ってくる気がしたのだ。
「他にも、居るね。レギュラー陣」
唖李栖は普通に言う。
分かっているのに、
分かっているはずなのに。
「ねェ、輪廻」
静かに、唖李栖は名前を呼ぶ。
「“篠鞍 零”の携帯、真っ二つにしたよね」
「だから」
何の悪びものなく、言う輪廻。
「良かったの??」
唖李栖の問いに、輪廻はきょとん。
「裏切られるんだったら、裏切る方がまだマシよ」
嘘吐き、
僕がそれを言えないのは、弱いから。
自分のコトを嫌ってほしくない。
だから、何も言わないんだ。
朔夜、君ならどうするんだろうか。
「あ、竜崎先生」
唖李栖は小さく言う。
試合も終わったらしく、竜崎先生の目線はこっちに。
輪廻は驚きつつも、直ぐに無表情になる。
「さァ、唖李栖。電車来るよ」
ニコッと、唖李栖に向かってだけ笑う。
「良いの??」
何を、と言いたげな輪廻の目。
だけど、それを言わないのは、輪廻も少なからず分かっているからだろう。
「良いよ、分かった」
ふぅ、と溜息を付くと、手を振った。
「Good Bye!!」
大きい声で言えば、竜崎先生も手を振る。
レギュラー陣も驚いて、見てみるが、もう電車が行った後。
「誰か、居たんっスか??」
堀尾が竜崎先生に聞けば、先生はフッと笑う。
「感情を取り戻した、小悪魔が居たんだよ」
先生が少し悪戯っぽい笑みを浮かべたのは、知るわけがない。
***[空港にて]
「じゃぁ、僕は時間見てくるね。飲み物も買って来るから」
ニコッと唖李栖は笑う。
「分かった、待ってる」
輪廻は携帯を握り締めていた。
そして、目の前には“ゴミ箱”
「良いの…?? 裕太に電話しなくて」
唖李栖が聞けば、輪廻は「いい」と小さく言う。
そんな姿を見て溜息。
「輪廻」
唖李栖は彼女に聞こえるくらいの声で呼ぶ。
「何??」
気付いたときには、もう輪廻は抱きしめられていた。
誰に??
そんなの簡単だ。
唖李栖に、だ。
「僕ね、輪廻のコト大好きなんだ」
ぎゅっと、抱きしめる力がふいに強くなる。
「だからね。ずっと、ずっと笑っててほしい」
輪廻は何も言わずに、話を聞いていた。
「馬鹿だよ、輪廻。僕が分からないとでも思ったの?? そんなコト、天と地がひっくり返ったって無理な話だよ。
僕は、ずっと君の傍に居たんだよ。
楽しい時も嬉しい時も、辛い時も悲しい時も。
ね、お願い輪廻。後悔はしないで。
もし辛いなら、僕が一緒に居るから。お願い」
ぎゅっと、強く抱きしめれば、輪廻は少し頷く。
「分かったよ、唖李栖」
いつもと同じぐらい優しい声で。
「じゃぁ、輪廻」
唖李栖が離れれば、彼女は頷く。
「電話、する」
唖李栖は“良かった”と呟いて笑った。
それにつられて、輪廻も微笑む。
「僕は、行くね」
輪廻が“いってらっしゃい”と言う間もなく、彼は走る。
ぎゅっと、握り拳をして。
「分かっちゃ、いけない想いもあるんだよ。ごめんね、唖李栖」
小さく、走っていく彼に向かって輪廻は呟いた。
彼女は気付いていたのだ。
ずっと、ずっと昔から。
彼が自分を姉、として以外にも好きだということも。
「私が、分からない訳がないでしょ」
だから、尚のこと。
「君が壊れる前に」
なんとか、なんとか、しなくては…。
「……、仕方ない。唖李栖が戻ってくる前に電話しちゃおうっと」
彼女には、分かっていた。
きっと、“留守電”になるだろう。
ということが。
『こちら、お留守番サービスセンターです』
ピー、と少し高めの音が鳴ると、輪廻は息を吸う。
「もしもし、裕太———————————……??」
聞く必要などないのだけど。
つい癖で、聞いちゃうんだよ。
君への、多分。最後になるであろう、電話。