二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第0話 憧れの地 ( No.4 )
- 日時: 2010/02/04 22:00
- 名前: 雛苺 (ID: 0wDrexNa)
世界の端まで澄んだ青い空。その空にふよふよと浮かぶ小さい雲たち。太陽の暖かい光。
そんな最高の晴れの天気、あたしはドラカーゴと呼ばれる飛行船でのんびりと満喫していた。
「それじゃあ、【ラティウム】に来るのは今日で初めてなのかい?」
「はい。だから、凄く楽しみなんです」
偶然同じ船であたしの席の隣に乗ってきた乗客のおじさんと一緒に談話をしていた。
「なんだい・・・・・・。私はまたてっきり、【ミルス・クレア魔法院】の生徒さんかと。その制服は、魔法士たちを目指す子たちの憧れだからねぇ」
「そうですよね。あたしも、この制服を初めて来た時凄く緊張しました。あたしもミルス・クレア生なんだ!って、思ったくらいに」
「あははっ!制服を着ただけで緊張するとは、面白いお嬢さんだね」
「あはは」
そう会話していると、おじさんはあたしの太股に置いてあるバスケットの中にあったハムサンドを一つ取る。
「しかし、いいのかい?他人の私がお嬢さんのお昼のサンドイッチを食べてしまって」
「あ、いいですよ。今日ラティウムに行くあたしの為にお母さんが作ったんですけど、何か多めに作ってたので大丈夫ですよ」
「そうか、それなら遠慮なく貰うよ」
そう言いながらハムサンドを食べるおじさんをみてあたしもつられてタマゴサンドを食べ始めた。
「それにしても、【ミルス・クレア魔法院】って言うのは世界で名だたる魔法学校だ。その学校に編入出来るなんて、お嬢さんはよほど優秀なんだな」
「・・・・・・え?」
おじさんの言葉にあたしは沈黙した。
地元の学校での勉強は他の学校より遅れているので勉強は少し苦手なほう。
だけど、魔法に関する魔力と技術は舌を巻くほどだって友達からも先生からも言われている。
そしてあれの所為もあるのか、あの入学許可書が来たと思う。
「あのね、おじさん。あたしはそんなに優秀じゃ・・・・・・」
「ほら、お嬢さん、見えてきたよ。あれが世界に名立たる魔法都市・ラティウムだ!」
「えっ!?本当!?」
窓から見えたのは城壁で守られた円状の都市—・・あれが、ラティウムだ。
ラティウムを眺めるあたしに、おじさんはラティウムについて語り始めた。
「ここラティウムは世界の魔法を管理する都市だから警備はとても厳しい。だから、立派な城壁が作られたんだ。外側を守る城壁は一の壁、内側が二の壁。その二の壁の中にある聳え立つ城—・・・あれが、お嬢さんが通うミルス・クレア魔法院だ」
「わぁっ・・・!」
窓越しから見えた青い屋根の城。創立は500年くらいで、改築を重ねた為既に昔の面影はないけれど、どこか歴史がある感じを持たせる城だ。
魔法院を眺めていると、ドラカーゴが発着場に近い上空で回転し始めた。
「ラティウム行きのドラカーゴは、必ず上空を一周してから発着場に降りるんだ。【始まりの地】をひと目みたいと訪れる人たちへのサービスだと私は思うんだがね」
おじさんの話を聞いてあたしはバスケット片付け時、丁度ドラカーゴが発着場に降りた。
「退屈な長旅の相手をしてくれてありがとう、お嬢さん。この地が君にとって【幸運の地】になるよう、願ってるよ」
「はい。こちらこそありがとうございました!」
おじさんのお礼にあたしもお礼の挨拶をして、笑顔のまま別れた。