二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [★]... party and party - D灰 ( No.5 )
日時: 2010/02/09 18:27
名前: 向山玲羅 (ID: AzSkpKat)


    — 第一幕 —

          “ Second ”





「————ああ、バクちゃん?」

静かな部屋にある男の声が鳴り響く。
彼の名はコムイ・リー。科学班の室長だ。

受話器を片手に、コムイは小さく笑みを浮かべた。

電話の相手は
「バクちゃんて言うな」と静かにつっこむ。

コムイは紙切れに印鑑を押しながら相手の話を聞いた。
突然、ピタリと印鑑を押す手を止め、相手の言葉に真剣に耳を傾けた。

「・・・・・うん、分かった。しばらくしたらリナリーを向かわせるよ」
そう言うと、コムイは哀しそうな笑みを浮かべて電話を切った。

ちょうど部屋に入って来た愛する妹、リナリー・リーに優しい笑みを向ける。

「リナリー、ちょっと頼み事があるんだけど・・・いいかな?」
「? ええ、いいわよ」

天使のような微笑みで、リナリーは頷いた。

「アジア支部に、ある女の子を向かえに行って来てほしいんだ」
「ある女の子・・・?」
「そう。向こうでバクちゃんが待ってるから、きっとどの子か分かるよ」

リナリーは不思議そうな顔で部屋を出て行った。
一人になったコムイは大きくため息をついて窓の外を見つめる。

「“セカンド”・・・・ね」

そう哀しげに呟くと、コムイは一口、コーヒーを飲んだ。






         ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





————・・・・・・・・・・・♪♪・・・・・♪・・・・・・・————



何もない部屋の中に、ある少女の歌声が響いた。
誰もが耳を傾けるほど美しいその歌声は、部屋の外にまで聞こえている。

「・・・・・・・♪♪・・・・♪・・・・・」



窓の外では、当たり前のように鳥が羽ばたいていて。
当たり前のように時間は過ぎて行って。
当たり前のように自分は歌っていて。
当たり前のように自分は此処に居て。
当たり前のように拘束されていて。

当たり前のように・・・・・・自分は生きていて。



少女は窓の外を見つめながら歌い続けた。
窓ガラスに触れると、チャリ、と音がした。

ふと目をやる右の手首には、簡単には外せそうにない頑丈な鎖。
それを見る度に自分が自由になれない事を思い知らされる。


  「————私は待つわ・・・

           私が拘束される事で、この聖戦が終わるのなら・・・・・・」



少女はそっと目を閉じた。
拘束された右手を抱えながら。



これが悪夢の幕開けだとは知らずに・・・・・・・。