二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [★]... party and party - D灰 ( No.14 )
日時: 2010/02/14 07:39
名前: 向山玲羅 (ID: AzSkpKat)


  — 第三幕 —

          “ 自由 ”





 ________タッ タッ タッ タッ・・・・

地面を蹴る音。
手には大好きな兎の人形を持ち、スカートをヒラヒラと風になびかせて。

少女は走った。
大好きなあの人のもとへ——————・・・・・

『お母様っ!!!!』

“お母様”は振り返った。
だが、笑顔のはずの顔が薄れて見えない。

『あら、○○○』
『今日はパーティーに行くんでしょ?いいなぁ、私も行きたいっ』

“お母様”は優しく微笑んで少女の頭をそっと撫でた。
すると、少女は本当に幸せそうな顔で笑った。

『また今度、2人だけでパーティーをしましょう』
『2人だけで?』
『ええ。そうね・・・・・、○○○の誕生日なんかどうかしら』
『うんっ、やる!誕生日パーティーやりたい!』

少女は飛び跳ねて喜んだ。
そんな少女を、“お母様”はクスクスと笑いながら見ていた。

『絶対ね!』

『ええ。約束しましょう———————』






         ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






目を開ける。
目の前には、白い天井があった。

ゆっくり起き上がると、見慣れた景色が広がっていた。
何も無い部屋。
繋がれた右手。

「・・・・おかしな・・・・夢・・・・」

少女は枕元にあった兎の人形を手に取った。
人形は耳が取れそうで、ボタンの目は片方無い。

少女はそっと人形を抱きしめた。

その時、

「バク・チャンだ。入るぞ」

頑丈な鍵を開けて入って来たのは、アジア支部長のバク・チャン。
と、隣に髪の短い美少女————リナリーがいる。

「こんにちは」

リナリーは優しく微笑んだ。
少女は小さくお辞儀をして、人形を抱いたままリナリーを見つめている。
バクは少女の事を哀しそうに見つめると、口を開いた。

「この子は“叶華”。・・・・詳しい事は後でコムイ室長に電話をしておく」
「はい。お願いします」

何やら話をしながらこちらを見ている。
“叶華”はリナリーと目が合うと、小さく微笑んだ。

バクは部屋から出て行き、リナリーと2人だけになる。

「私はリナリー・リー。よろしくね、叶華ちゃん」
「よろしく・・・お願いします・・・・・」

透き通る小さな声で叶華は言った。
だが、あまり心は開いていないのか、目をそらしてしまう。

リナリーは少女の右手についていた頑丈な拘束具を、鍵で外した。

「私に付いて来て。これから、黒の教団に行くのよ」

右手首に刻まれた十字架を見て、リナリーは言った。
包み込むようにして叶華の右手を取り、優しく微笑んだ。



「—————私は、あなたを迎えに来たの」