二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-If you can become happy- ( No.13 )
日時: 2010/02/10 18:02
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)


 10 取り戻す




跡部は、香澄を抱きしめた。
もちろん、香澄は抵抗した。

「あ、とべさん? 離してください! やめて・・・」(香澄)

香澄の言葉には応えず、跡部はきつく、香澄を抱きしめる。
ただ、思い出して欲しかった。
人を信じる気持ちを。
この世界で、まだ何も経験していない俺には、香澄の気持ちを理解するのは難しい。
だけど、信じることを忘れ、疑うばかりでは悲しいだけ。
そして、疑いはやがて憎しみに変わり、人も変える。
香澄が、変わってしまうその前に。
取り戻して欲しい。 心を。

「跡部さん・・・」(香澄)

始めは抵抗していた香澄も、徐々に、その温かさに安心を覚える。
黙って、跡部の肩に頬を埋めた。

温かい。
人って、こんなにも温かかったんだ。
凍り付いてしまった心が溶けていく。

この人のことを信じたい。
この人と同じように温かい人を、信じたい。
信じる気持ちを、失いたくない。
自分を、失いたくない。

“信じられる皆のためなら、自分の命を省みない”

あの決意を、もう1度。

どれほど時間が経っただろうか。
泣いていた香澄は泣きやみ、落ち着きを取り戻した。
昼から始まったゲームだが、もう夕暮れだ。

「落ち着いたか?」(跡部)

それまできつく抱きしめていた跡部も、それを緩め、香澄の顔を見る。
まだ、悲しみからは逃れられない。
だが、前を向いている。

「ありがとうございました。 跡部さん。 大丈夫です」(香澄)

強くなりますから。
愚かな自分は、捨てますから。

再び、その瞳に輝きが戻る。
そして、香澄ははにかむ。

「そうか・・・」(跡部)

跡部も、安心したようにはにかんだ。

これで、香澄の心は、変わっていないことが確認できた。
それと同時に、コイツが1人では崩れてしまうかもしれない。
そう感じた。
強くなるには、時間が掛かる。
きっと、俺自身も。
まだ、弱い。

「側にいてやるよ」(跡部)

強くなるから。

大切な人を、この手で守るために。


もう1度、香澄を抱きしめる。
香澄も、抵抗なんてしなかった。