二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-If you can become happy- ( No.14 )
日時: 2010/02/11 18:22
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)

 11 最初の別れ




香澄と跡部は、その場にとどまることは止めた。
ここは、香澄にとっての“最初の別れ”の場所だ。
「場所を変えよう」、跡部がそう言い出した。

「海堂・・・」(香澄)

香澄は、おそらくもう息をしていないだろう海堂の手を取った。
流れ出る血。
もう、死んでいる。

「乾先輩・・・」(香澄)

そして振り返り、乾のほうも見た。
悲しい、悲しい、別れ。
裏切られた悲しみでいっぱいだったけど、今は、別れる悲しみで胸は満たされている。
違う人のように、変わってしまった乾。
その裏には、どんな葛藤があったのか。
もう、何も分からないけれど。

「さようなら・・・」(香澄)

そう簡単には強くなれない、人間の心。
香澄は再び涙を流した。
跡部も、後味の良くない表情だ。
それでも、立ち止まったりしない。
何処へ向かえばいいかなんて、分からないけれど。

「行くぞ」(跡部)
「はい」(香澄)

この人を信じよう。
そう決めた。



歩いていくと、川が見えた。
ここは、森の何処なのか。
地図を見ても、イマイチ分からない。

「これじゃ、いけねーなァ、いけねーよ」(桃)

自分の頭を、クシャクシャっといじる。
誰かに会いたい気もするし、会うのが怖いというのも少しある。
生き残りたい。 こんなコトで死にたくない。
だけど、誰かを殺すなんて、絶対にイヤだ。
自分の気持ちの整理が出来ない。
桃は、なかなか最初の一歩を踏み出せずにいた。

草の茂みをかき分け、川に出る。
そこには、河村がいた。

「タカさん!」(桃)
「桃!」(河村)

川の畔に座っていたのは、紛れもなく河村。
他には、誰にもいない。
桃は安心し、その隣へ行って座った。

「良かった、生きてたんだね。 桃」(河村)
「そりゃ・・・簡単には死ねないッスよ」(桃)
「そうだね」(河村)

穏やかな河村。
疑うトコロなんて、1つもないのに。
胸に広がるのは、疑いの感情。

「桃? 大丈夫?」(河村)
「え、大丈夫ッスよ」(桃)

信じています。
だから、答えてください。

「タカさん・・・」(桃)
「ん?」(河村)

息を吸う。
どうか、予想通りで有りますように。

「乗って、無いですよね?」(桃)

その言葉に、河村は傷ついたような表情をした。

「・・・俺ってさ、そんなに信用無かった?」(河村)
「え?」(桃)
「イヤ、乗っているように見えるのかなーと思って」(河村)

と、言うことは。

「乗ってないんですか?!」(桃)
「当たり前じゃないか! 何言ってるんだよ、桃」(河村)
「そうか、そうッスよね」(桃)

桃は笑った。
変わっていない、先輩。
何もかも、疑うコトなんて無い。

河村は、桃の変化に気がついていた。
そして自分も、この状況について行けてはいなかった。
体力面でも、精神面でも、桃は自分より勝っている。
だが、桃は動揺を隠せずにいる。

「桃・・・ 香澄ちゃんには、会えたかい?」(河村)

河村は、おそらく桃の一番気がかりなことを口にした。