二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ-If you can become happy- ( No.15 )
- 日時: 2010/02/12 18:37
- 名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)
12 守りたいモノ
桃は、その言葉に反応し、河村のほうを見る。
「いえ。 会えてないです」(桃)
「そっか・・・」(河村)
心配だよな。
「無事だと、信じてるんスけどね。 どうしても、心配です」(桃)
香澄は無事だ、そう胸を張って言えない自分に腹が立つ。
情けない。
仲間なら、信じてやれよ。
「そんなもんだよ、桃。 俺も、桃に会うまでは、ずっと心配してた」(河村)
“心配してた”
過去形にしたが、本当は、会ってからの方が心配でたまらなくなった。
こんなに、不安そうな桃は、初めてな気がして。
「心配じゃないほうが、おかしいよ」(河村)
まともな人間なら。
仲間のことを思うのは当然で。
最期の瞬間まで、仲間を信じ続けるのも当然で。
「心配はしない信じるだけって、当たり前だったのにな」(河村)
そんなの、テニスだったら簡単に出来るのに。
試合中だったら、心配なんてしない。
だって、信じているから。
それが、当たり前だったのに。
「そうですね・・・」(桃)
出来ていたことが、出来ない。
「どうする? 香澄ちゃんを探す?」(河村)
「はい。 やっぱり、会いたいッスから」(桃)
桃ははにかむ。
香澄ちゃんと再会するまでは、桃の手を汚すことはさせない。
「俺も、協力するよ」(河村)
全力で、援護する。
そんな河村の思いに、桃は気がつけなくて。
「ありがとーございます」(桃)
“援護する”これが、何を意味するのか。
桃にはまだ、分からない。
「取りあえず、隠れながら進もうか」(河村)
優しい笑顔が、消えてしまう。
桃と河村は、川に沿って歩いた。
隣には草が茂っていて、いざとなれば隠れられる。
「大丈夫か? 桃」(河村)
「へーきッス!」(桃)
河村が先を歩き、時々後ろを振り返る。
その状態でずっと進んでいった。
しばらくすると、森から抜けられた。
だからと言って、何があるワケでもなく、海が広がっているだけだった。
舟も何もない。 陸も見えない。
此処は本当に、“BR法”のための島なのだ。
10年ほど前には、此処で、自分たちと同じように苦しみながら死んでいった人が居る。
「海が、キレイッスね」(桃)
「そうだね」(河村)
ふと振り返ると、森の反対側に大きな塔が見えた。
桃は地図を広げ、塔の位置と施設名を調べる。
「あれは、大人達がいるトコロ・・・見たいッスね」(桃)
指を指しながら、河村に伝える。
桃の指の先を、河村も見た。
「あそこに、竜崎先生が・・・」(河村)
言いかけて、言葉をつまらせる。
あの悲劇が、頭の中でリピートされる。
そんな感傷に浸っていたときだった。
どこからともなく、弓が飛んでくる。
「桃ッ!!」(河村)
「え?」(桃)
河村は、咄嗟に桃をかばい、倒れる。
ガザガザと、茂みから音がした。
「誰だッ?!」(桃)
大声を張り上げる。
すると、1人の男が出てきた。
「やるねー、2人でかばい合うなんてさ」
桃の、“最初の後悔”の始まりだった。