二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 白ノ娘 ( No.4 )
- 日時: 2010/02/12 18:04
- 名前: リリアン (ID: B6N9vk9k)
白イ娘 パート3
ハクの家は、白の国の王族。
白の国は、平和で、水晶の生産に優れた国で有名だった。
血のつながりはあったが、政治の頂点に立つほど近い親類ではなかった。
だが、ハクの家には、優秀な人材が揃っており、中でもハクの父は、騎士隊長まで出世していた。
一人娘だったハク。
母親は、元々体が弱く、ハクの記憶に無いうちに亡くなった。
その分父親は、ハクをとても可愛がった。
時には厳しく、時には優しく。
ハクは、そんな父が大好きだった。
「お父様、お父様!」
「どうしたんだい?ハク。」
「今日ね、町ですごい人を見たのよ。髪の毛が、綺麗な青色をしていたわ。」
「そうかい。きっと、それは、青の国の人だね。」
「青の・・・・・国・・・?その人は、白の国の人ではないの?」
「たぶんね。国によって、髪の色は違うから。」
「うん・・・・。」
「どうした?ハク。」
「いいな、って思ったわ。」
ハクは、黒いリボンで結んだ自分の白い髪を見て言った。
「青色・・・素敵だなって。だって、白は、無色ですもの。輝きが無いわ。」
幼いハクには、まだ、自分の輝きを見つける事ができなかった。
だが、そんなハクに、父は、優しくこう言った。
「白にだって、輝きがある。」
「えっ?」
「白は、他の色に混ぜる事によって、美しい色を作り出す。白は、どんな色とでも仲良く出来るんだ。」
「そうなの?!」
「あぁ。見てごらん。」
父は、大陸の国の色の絵の具を用意した。
緑の国の『緑』
青の国の『青』
黄の国の『黄色』
紫の国の『紫』
桃の国の『桃色』
そして、白の国の『白』
筆に取り、それぞれを白と混ぜる。
するとどうだろうか。
黄緑、水色、レモン色。
藤紫色に、パール色。
さまざまな美しい色が誕生した。
どんな色とでも、美しい色彩を見せる白。
そんな白のよさが、ハクにも少し分かったような気がした。
だが、その幸せは、長く続かなかった。
真夜中、突然サイレンがなった。
豊富な鉱石を狙って、黄の国が攻め込んできたのだ。
「ハク!起きなさい!」
「お、お父様?!何なの?」
「黄の国が攻め込んできた。お前は逃げなさい。」
父は、ハクにフードをかぶせた。
「お父様は?!」
「私は、誇り高き白の国の騎士団隊長だ。命がある限り、この国を守る。」
「でも、お父様!私は、お父様がいなと・・・・・」
「お前は、大丈夫。これを持っていきなさい。」
手渡された袋の中には、札束が、これでもかと言うくらい入っていた。
ハクにでも分かった。
お父様ハ、死ヌカモシレナイカラ、私ニコヲ手渡シタ。
「お父様!嫌ぁ・・・一緒に逃げようよ。」
「いや、私はこの国を守る。」
「死なないでよぉ・・。お父様ぁ・・。」
「死なない。お前は、一時的に非難するだけだ。安全になったら戻って来い。待っているから。」
ハクの返事を待たずして、父は、戦火の中へと飛び込んでいった。
無防備な夜間、あっという間に白の国は燃え上がった。
ハクは、町から外れた小さな丘の上。
そこに立つ大樹には、子供なら入れる小さな穴があった。
そこで、ハクは震えていた。
目をつぶって。
父の功績とも言える、莫大な財産をしっかり抱えて。
炎の燃える音に混じって、声が聞こえた。
「さぁ、跪きなさい!」
その高い声が響いた後、父親と愛する白の国が帰って来る事は無かった。
次の日に、ハクが丘から見た風景は、悲惨なものだった。
昨日まであった、白い都が跡形もなく無くなっていた。
いるのは、黄色い兵士に黄色いトラック。
水晶の原石を取っては積んで、運んでいく。
白の国は、黄色に紅と黄色に染まった。
——————————
「白の国は、今は黄の国になってしまったのね。」
「そうです。私の居場所は無くなってしまいました。」
—生きていてごめんなさい—
それは、彼女の口癖。
千年樹を見ると、思い出す。
隠れていることしか出来なかった、愚かな自分。
そんな自分だけが生きている。
私の変わりに、国民が生きていればよかった。
王様方が生きていればよかった。
お父様が生きていればよかった。
なのに、私が生きている。
あぁ、生きていてごめんなさい。
あぁ、白の国よ。
「大丈夫。貴方には、緑の国がある。」
「でも、私のこの髪は、軽蔑される理由にもなります。」
「大丈夫。少なくとも私がいる。明日も遊びに来るわ。」
「・・・・・・待ってますね。」
ハクは、少し勇気付けられたような気がした。
次の日も、また次の日も、ミクは、ハクの家に来た。
そのたびに、哀しい事や嬉しい事を分かち合った。
いつの間にか二人は、とても仲良くなった。
だが、ハクは、いつも思っていた。
(私と彼女、何もかもが違う。)
村の誰よりも長く、綺麗な緑の髪。
その優しげな声と笑顔。
この数日の中で、彼女への告白を何回見た事だろうか。
男女問わず、誰からも愛された。
だけど、ハクは違う。
人と違う白い髪。
人間が、この世に住み着いている限り、格差は必ず生まれ、逃れる事は出来ない。
もしかしたら、彼女は、自分より劣る女を哀れんでるだけなのかもしれない。
そう思うと、怖くて仕方なかった。