二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: —D灰 全テノ運命ハ廻リ出ス— アンケ実施中!! ( No.208 )
日時: 2010/05/04 21:23
名前: アリス (ID: c52Pxlps)

—第30夜 本当ノ敵ハ—


***


「どうして…何処に…ッ!?アリス…ッ」


スイが苦しげに顔を歪ませながら呟いた。
アリスがいなくなってから少なくとも一時間は経った。
その一時間の間スイはずっと探し続けていた。
自分の不甲斐なさに心を痛めたり、何故こんなことになったのかと考えたりしながら——…。

その時。
一体のアクマが突然姿を現した。

スイはイノセンスを構えアクマをキッと力強く睨み付けた。
まるで邪魔だとでも言うかの様に。


「どけろ…邪魔だ!!今なら見逃してやる…早くどけろ!!」

「アリス奪ワレタ♪」


アクマが話し出す。
戦うつもりは全くなさそうで、ケラケラとスイを嘲笑う。
その言葉さえスイの勘に障る。


「煩い!!黙れ!!」

「マタ守レナイ♪スイハ大切ナモノ守レナイ♪伯爵ノ時モコムイノ時モ♪スイハ無力♪イツモ無力♪」


スイの堪忍袋が切れ、スイは無言でアクマを切り裂こうとした。
アクマは片手でスイのイノセンスを押さえた。
スイがどれだけ力を込めても全く動かない。
アクマの体が砂と化して行き、残されたのは夜。


「嗚呼…アクマの皮はさすがにイノセンスに弱い…触れるだけで壊れるか…」


砂を弱く握り締め夜は砂を風に流した。
その砂を呆然とスイは見つめた。

イノセンス以外でアクマを破壊するということはアクマの魂ごと壊してしまうと言うこと。
彼女によって壊されたアクマ…つまりスイの仲間も魂ごと壊されたのだろう。
魂ごと壊されるということは…アクマにとって地獄に堕ちるのと同じこと——…。


「久しいなエクソシスト?私はお前に用があって来たんだぞ?」

「何が久しいな?ですか…ついさっき会ったばかりのくせに…」

「そうだったのか?私は物忘れが酷くてな?どうも駄目だな?」


明らかに覚えているくせに夜が嘘を吐くのがスイには少し腹立たしく思えた。
夜は相変わらず怪しげな笑みを溢しながらスイを見つめた。
その視線が凄く痛いのをスイは感じていた。
殺気が少々籠っているのも分かった。


「貴女は…どうしても私を邪魔するのですね…!!」

「そういう運命なのかもな?私はお前に伝えたいことがあって来ただけだ」


イノセンスをもう一度構え直すスイをクスクスと笑いながら夜は見つめた。
そんな夜をスイは冷たく視線を浴びせ続けた。
それに全く怯まずに夜は淡々と述べる。


「私はな…お前に会いたくて来たのではない。私が殺した…お前のその体に興味があるだけだ。元帥だった筈の…名前は…確か…


九条…アリアだったか…」


スイは思わず愕然とした。
目の前に私の体を殺した本人がいる。
その事実だけがスイの頭の中でグルグルと回り続けた。
それからスイはギリッと歯を食い縛りイノセンスを構えた。

元々は仲間だった、彼女にイノセンスを構えることはつまり…伯爵への裏切りを示していた。
けれどそれでもスイは一切後悔はしなかった。
目の前に自分を怪物にしてしまう理由になった張本人がいる。
彼女を殺す為に自分は存在していたのかも知れない。

スイはキッと夜を睨み付け憎しみの籠った瞳でイノセンスを構えた——…。