二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: —D灰 全テノ運命ハ廻リ出ス— ( No.232 )
- 日時: 2010/06/10 20:49
- 名前: アリス (ID: /jbXLzGv)
—第36夜 加速スル歯車—
***
「倒せた…のかな…」
呆然とするスイの横でアリスは結んでいた髪の毛を下ろした。
それからスイに手を差し伸べると———。
「帰ろ♪もう敵はいないよ♪」
「う…うん…」
笑顔を浮かばせるアリスの手を取り、立ち上がる。
アリスは先程までと一切変わらぬ笑みを浮かばせている。
スイは聞いて良いのか戸惑ったが、決心を固めアリスに問い掛けた。
「アリスは戦いの真っ最中…何かに操られたかの様にアクマの大群へと突っ込んだよね…あのすぐ後…アクマは全て一瞬で消え去り、それと共にアリスも消えていた。アリスは一体何処に行っていたの…?」
いつも笑顔を絶やさないスイさえも珍しく真剣な表情になり、アリスを見つめた。
アリスも先程までの笑顔は消え、スイを真っ直ぐに見つめていた。
まるで、答えたくないと訴えかけるかの様に。
聞かないでくれとでも言いたげに。
「…聞きたい?」
「聞きたいよ。けど無理強いはしない」
「なら、スイも私に言うことがあるんじゃない?」
何もかも見透かされた様な気がして、スイは身震いした。
確かに、確かに言うべきことはある。
しかしそれはノアと戦っている時にスイさえ初めて知ったことで、アリスが無論知り得ないことだ。
何故知ッテイル———?
「私も言うことはあるの。だから、先に言わせて貰うね。そうだなあ…此処からで良いかな…」
***
アクマの大群へと突っ込んだ後、私は見知らぬ部屋で伯爵と二人きりだった。
布団の横で伯爵は私を見つめてた。
起きた私に気付いて、伯爵は私に話を持ち掛けて来た。
『貴女は本当の自分をご存知デスカ?』
知る訳ないよね。
だって私、本当は九条家の人間じゃなくて拾われた子だったんだもん。
本当の親なんて知る筈ないしそもそも知りたいとは今まで全く思わなかった。
この時までは。
何故知りたくなったのかは分からない。
知らなければ良かったとは今でも思う。
『貴女はセカンドの失敗作デスヨ♪』
セカンド———。
つまり私もユウと同じ様に造られた人間。
『しかも貴女は失敗作♪アルマより先に造られてイタ…けれど失敗作だった貴女は不思議な能力を持ってしまっタ♪死なない限り貴女の時は止まったママ♪セカンドよりは少ないけれど貴女にも確実に蘇生能力がアル♪つまり貴女は永遠その姿♪14歳のそのままの姿デスヨ♪』
ユウと同じ時を歩めない。
体の成長は止まり、私は永遠誰かに殺されるか私が自ら死ぬということをしない限り———死ねない。
初めて知ったよ、自分のこと。
大嫌いになったよ、自分のこと。
何で生まれて来たのか、分からなくなって。
どうして存在してるのか分からなくなって。
***
「もうヤダよ…何で私は存在してるの!?生きてるの!?こんな命いらないよ!!人に造られて出来た命なんて…いらないよ!!」
パシンッ…!!
乾いた様な音がしてアリスは呆然とスイを見つめた。
その表情は、悲痛で。
「そんなこと…言わないで下さいよ…アリス…」
スイとは明らかに異なった雰囲気を醸し出すが、明らかに彼女はスイだ。
まさか。
まさかとは思いながら、信じたくはないと思いながら、アリスは彼女に問い掛けた。
「姉さん…アリア姉さん…?」
少しの間が空き、彼女は疲れきった様な笑みを浮かばせた。
「そうですよ」
全テノ運命ハ更ニ加速シ続ケル——…。