二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: —D灰 全テノ運命ハ廻リ出ス— ( No.235 )
- 日時: 2010/06/15 17:59
- 名前: アリス (ID: /jbXLzGv)
—第37夜 悲劇ト涙ト…—
***
その頃、教団に残されていた神田とラビは呑気に食事を口にしていた。
「あ、ユウ!!まぁた蕎麦なんさ?」
「栄養ないとか言うんじゃねぇ」
「いや、何も言ってねぇさ!!それよりユウはアリスのことどう思ってんだ?」
ブッと神田は蕎麦を吹いた。
唐突すぎるその質問に神田はラビを鋭く睨み付け、また蕎麦を啜り出した。
「素っ気ないさね…ユウがその気ないなら、俺が貰うけど?」
「…やるかよ」
蕎麦を食べ終え、箸をお盆の上に置いてから神田はあっさりと言い放つ。
ラビは目を丸くさせた。
まぁ、簡単に言えばこれはただのラビの作戦だったのである。
全くアリスに興味が無さそうに見える神田を少しはアリスに目を向けさせてやろうと考えた結果がこれだ。
お盆を片手に神田が立ち上がる。
「別にお前があいつを好こうと勝手だが…あいつに触れるのは許さない」
呆然とするラビを放置し、神田はお盆を持ったまま去って行った。
残されたラビは一人悲しげに、けれど何処か嬉しげに呟いた。
「あのユウがねぇ…」
***
一方その頃。
夜はやっと目を覚ました。
白く綺麗なベッドに寝転んでいる夜の横に寝ているティキの姿があった。
夜は時折嗚咽を漏らしながら痛む体を起こす。
「…こ…こは…」
辺りを見回し夜は我に帰る。
けれど、伯爵がアリスと話を初めだしてからの記憶が一切ない。
何故怪我をしているのかさえよく分からない。
「嗚呼…この傷…よく見る…切り傷…?」
何かを思い出しかけるが、頭痛に襲われ夜はまたベッドに倒れ込んだ。
つぅ、と瞳から涙が零れ落ちる。
「どうして…は…はは…痛みなんて…感じないのにな———…」
苦笑いを浮かばせて、夜はかろうじて動く片手で涙を拭いた。
疲れきった様に夜は目を閉じると、安らかに眠り出した。
それを密かに見ていたティキは夜の柔らかな髪を撫でて、そっと頬に口付けを落とした。
「ずっと…ずっと俺が守るから…悪かった…今日は…守れなくて…」
聞いている筈もない言葉をティキはつらつらと並べた。
けれど棒読みではなく、明らかに本気。
切なげに、悲しげに———。
「好きだ…夜」
何処か寂しげにティキは呟いた。
夜が聞いている筈もないその一言に、ティキは溜め息を漏らした。
もし、あの時伯爵が記憶を奪わないまま夜が意識を取り戻していたら———。
本当に夜は死ぬのだろうか?
ティキの脳裏に先程伯爵に言われた言葉が甦った。
最悪の事態も同時に脳裏に浮かび上がり、ティキは苦痛に表情を歪ませながら頭を振った。
夜が、もし死んでいたら———俺はどうしていたんだろう?
「きっと夜を追い掛けるな…」
何処かキッパリと言い張り、ティキは静かに目を閉じた。