二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: —D灰 全テノ運命ハ廻リ出ス— ( No.247 )
- 日時: 2010/07/08 21:47
- 名前: アリス (ID: /jbXLzGv)
—特別番外編 スイの過去編—
私が生まれた時。
辺りは熱く、空は真っ黒な雲に覆われていた。
伯爵様は私に言った。
『貴女には期待していマス♪これから貴女は私の忠実な下僕になりなさイ♪』
瞬間、悟った。
私が何故この体になったのかを。
それは全て全て伯爵様のおかげで、とても私は伯爵様に感謝した。
何度も感謝の礼を言っていたら、伯爵様は優しく私に言ってくれた。
『感謝なんてしなくて良いデス♪貴女は私に尽くしていればそれで良いのデス♪』
———ありがとう…ありがとうございます…!!
私は心から感謝して、毎日伯爵様に尽くそうと努力した。
エクソシストの殺し方。
エクソシストの周りにいる奴等を優先に殺す。
人間は抹殺。
イノセンスを見つけた場合の対処法。
全てを学び、私は人間を殺しに出掛けた。
けれど出来なかった。
私は伯爵様に従うことは出来なかった。
伯爵様のことは大好きなのに、伯爵様の命令だけは聞けなかった。
『貴女はもう用無しデス♪早く出ていきなサイ♪』
何度懇願しても伯爵様は聞いてはくれず、最終的に私は追い出されたのと同じだった。
———あぁ…何も…何も見えないよ———。
霧の深い夜。
私は意識が途切れ、何処か分からない所で倒れた。
その日…夢を見た。
みんな…みんな笑ってるんだ。
伯爵様も、ノア様達も…私を中心に囲んで…にこやかに…楽しげに。
愉快そうに———。
目覚めた時見慣れぬ壁に、鼻を付く薬品の香り。
辺りには忙しなく動き回る伯爵様に殺せと言われた人間共。
———もし、彼等を殺して伯爵様に見せれば伯爵様はまた私を迎え入れて下さるのだろうか———。
けれど、出来なかった。
重い体を動かして、私は立ち上がった。
一人の長身の眼鏡を掛けた男が私が目覚めたことに気付いたのか、近寄って来た。
『大丈夫かい?君…リナリーの任務先で倒れていたらしいね?三日間全く起きなかったから、教団に連れて来させて貰ったんだよ』
———教、団…?此処は、敵の本拠地…?
朦朧とする意識を何とか保つ。
男は私の横に置いてある机に薬と、水が入った入れ物を置いた。
『君熱があったんだけど、今医療班はこの間伯爵と激戦があったせいでてんてこ舞いでね。此処に来るしかなかったもんで…ところで君、名前は?』
———私…私の、名前…?そんなものあるの?
水が入った入れ物を見つめ、私は咄嗟に名前を作り上げる。
水…水。
スイ。
『私は…スイ』
『スイか…良い名前だね。僕はコムイ・リー。此処の室長なんだ。君は、一体何処から来たの?』
どうしてか、この人に嘘を吐いてはいけない気がした。
全て見透かされる気がした。
『私…は…伯爵様の所から来た…アクマ…殺戮衝動が無くて…伯爵様に捨てられた…』
コムイは真面目な顔をして、私の目を見た。
信じてくれる訳ない。
だって今までアクマだって言ったら、全員が私を貶した。
認めて欲しかったのに。
私の…存在を。
認めてくれなかった。
私の…存在を。
この人もきっとそう。
私は覚悟して、教団で一生実験動物として飼われるのだと思った。
けれど———。
コムイは私を優しく抱き締めた。
『コ、ムイ…?』
『辛かったんだろう?悲しかったんだろう?泣いて良いんだよ…僕が、教団の実験動物なんかにさせないから…安心して泣いて…』
涙を塞き止めていた門が壊れたかの様に私はコムイの腕の中でわんわんと泣いた。
———言って欲しかった、その一言。
アクマであると知った上でも私を認めてくれる人がいて欲しかった。
悲しかったから…。
一人は悲しかったから…。
もう一人じゃない。
みんな…みんな仲間でいてくれるから———…。