二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 0番目の兄弟 ( No.2 )
- 日時: 2010/02/26 21:57
- 名前: 囮 ◆CbwloS2khc (ID: Y8BZzrzX)
【第一章】
「皆さん揃ってますか?」
場所は新しいノアの箱舟の一室
兄弟全員に集合命令を出した千年伯爵が部屋を見回し声をかける
「ちゃんと皆揃ってるってば!早く連れてきてよぉ」
父親役であるシェリルを椅子にして飴を舐めているロードが落ち着きなく催促する
その言葉に頷いて千年伯爵は閉じている扉の向こうに声をかけた
「では、いらっしゃい…0番目の兄弟」
———コツン———コツン
扉の向こうの廊下にヒールの音が響く
どうやら新しい兄弟は女性らしい、皆そう予想した
「千年公、名前は?」
ウェーブのかかる長髪を背で結っている美形のノア、ティキがふと思い出したようにいきなり尋ねる
その言葉に扉の方から顔を戻した千年伯爵は咎めることなくあっさりと答えた
「『ユキナ』ですよ」
「『ユキナ』…ね、日本人か」
「さぁどうでしょうか?」
ティキの言葉をはぐらかしながら再び千年伯爵は扉へと視線を戻した
高いヒールの音はだんだんと近づいてくる
———コツン———コツン———————ガチャ
ドアノブが音を立てて動く
音もなく開いた扉の向こうから現れたのは小柄な人物
毛先が内側にカールしている綺麗な黒髪を腰まで伸ばしていて
前髪は眉辺りでバラバラに切られており頭には白いレース付きのヘッドドレス
白いシャツの襟や釦のラインにもレースがあしらわれた可愛らしいもの
その上から深紅の肩が膨らんだ長袖ワンピースを着ている
その丈はロードと比べてもいいほど短い
足には純白のニーハイソックス、茶色のローファー
まるでおとぎの国から出てきたようなその可憐な容姿にロードを含めた一同は感嘆の溜息を洩らす
ただ一人、魔眼のワイズリーだけは驚いているような納得がいかないというような表情を浮かべていた
口元に微笑を浮かべて兄弟を見回すと0番目のノアは薄く唇を開いた
「ボクん名前は『ユキナ』言うねん…まぁこれから宜しゅうな」
薄く開いた唇から洩れるのは日本特有の訛り言葉
声は掠れたハスキーボイス
それはまさに声変わり途中の紛れもない男声
容姿と正反対の予想外の事実に千年伯爵以外の全員は言葉を無くして固まった
「ありゃー…千年公、どないする?やっぱりボクん予想通り固まってしもうたわ。ま、これがおもろいんやけど」
この空気を気にもせず千年伯爵を振り返った0番目ノア、改めユキナは笑顔で尋ねた
一つ咳をして千年伯爵はノア一同に声をかける
「この子が0番目のノア『有』のメモリーを持つ『ユキナ』です……ちなみに男の子」
最後は自然と苦笑が混じる言葉
その紹介を受けてユキナは兄弟に向けて無邪気にピースサイン
「そういうわけで、仲良ぅしたってな?」
まだ予想外のショックから立ち直れない兄弟達は無言で頷いた