二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 0番目の兄弟 ( No.4 )
- 日時: 2010/03/02 21:13
- 名前: 囮 ◆CbwloS2khc (ID: 9yCTBNZC)
【第一章】
「千年公…こいつもエクソシスト狩りやらせんの?」
壁際に立っている千年伯爵に向けてティキが疑問を投げる
現在激化しているエクソシストとの戦争に、この新入りの兄弟も参加させるのかと
その質問に千年伯爵はティキへと顔を向けた
「そうですねぇ…まず、元帥狩りにはジャスデビと一緒にクロスを追ってもらいましょうか」
悩んだ様子を見せながらも実際は殆ど直感でユキナの狩りの対象を決定する
それに不満が出るのはもちろんのこと
「はぁ!?クロスは俺らの獲物なんだぜ?何でこんな化け猫と動かなきゃなんねーんだよ」
「ヒッ!そうだよっクロスはジャスデビのものだもんねっ」
双子からの猛反対を受けてもユキナの表情は変わらなかった
テーブルに頬杖をつくとジャスデビに視線を向けて笑う
「化け猫とは御挨拶やねぇ…ボク、一応れっきとしたニンゲンなんやけど」
ククッと喉の奥で笑いながら自分は紛れもない人だと断言する
人という言い方に少しだけ棘があったけれど
文句を言っても動じないユキナに双子は不満なようだった
千年伯爵はユキナへ顔を向けると首を傾げた
「殺戮対象はクロス・マリアンで構いませんね?」
その確認にやる気なさそうに適当に手を振ってユキナは頷いた
「別に誰でもえぇよ、誰でも…ボクと遊んでくれるんやったら」
ユキナにとっての遊び、それは無邪気で残酷な壁一面が深紅に染まる遊び
その赤い世界を見上げて見下ろして正面から見つめて
両手も服も赤く染めて頬を赤く濡らして晴れやかに笑う
それがユキナの一番楽しい時間
ユキナ本人の了承を得たということで千年伯爵は頷き、勝手にこの話を終わらせた
その様子を見てユキナはおもむろに席から立ち上がる
「千年公…ボク、もう帰ってもえぇやろ?そろそろ時間や」
帰る場所?それはここではないのか?
この場にいるノア一同が不思議そうな顔をした
その視線を一身に受けてもなお、ユキナは笑みを崩さない
さよならと言うようにヒラリと手を振って可愛らしい笑顔を振りまいた
出口へと足を向けながら顔だけで振り返る
「ボクの帰る場所は、二個あるんや……魂の居場所と心の居場所、どっちもボクの大切な場所」
コツン、コツンと出口へ向かう足取りは迷いなく未練もなかった
何も言えずに黙って見送る兄弟を最後に振り返って満面の笑みで道化師のように大袈裟に頭を上げる
顔を上げて口を開いて最後の置きセリフ
「そんじゃ、また遊ぼうな……大好きやで、ロード」
眉間にしわの寄ったシェリルを心底可笑しそうに見ながら
アハハと笑い声を響かせてユキナは箱舟を去った
「何なの?アイツ」
不思議そうな顔のティキの言葉にロードは笑顔で答えた
「兄弟だよ?ティキのお兄さんで、可愛い弟…そうにきまっているじゃん」
飴を舐めながら言い返すロードの声音に迷いはなかった