二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 0番目の兄弟 ( No.6 )
- 日時: 2010/03/12 22:19
- 名前: 囮 ◆CbwloS2khc (ID: 8cMqndJ6)
【第二章】
『談話室』
それは人々がコミュニケーションや憩いの場として集う場所
黒の教団総本部の談話室も例外ではなく今日もいくらかのグループが儚い平穏な雰囲気に浸りながらお喋りに興じていた
しかし、そんな人々とは一線を隔てる少年がいた
綺麗な金髪は腰ほどもある長髪で、うなじで結わえられており
色白の小顔にかかる黒縁眼鏡が知性的な印象を与える
服は全体的に漆黒で、上着のシャツはそのまま団服として使用できるようにローズクロスが刺繍されていた
そんな彼は、三人掛けほどもある広いソファーの真ん中に陣取り
背もたれに頭と両腕をのせて、両足は躊躇なく目の前のテーブルの上へ
楽しげな周りを面白くなさそうに見つめる瞳は眼鏡の奥で光を閉ざしていた
誰を待っているわけでもなく、特にこれといった理由もなさそうな少年は完璧に浮いていた
一つ大きな溜息を吐いてガックリと頭を垂れた少年に後ろから凛とした少女の声がかかる
「セツナ!そんな行儀の悪い座り方は止めなさい」
『セツナ』、と己を呼ぶ声に今まで何事にも興味を示さなかった瞳が光を宿しゆっくりとした動作で振り返る
無表情だった顔に微笑が浮かんでいた
眼鏡の奥の瞳に少女を映しながら口を開く
「なんや、誰かと思うたらリナリーやないの……おかえり」
今さっきの叱咤など完全に忘れていて、足を降ろす気配もなく詫びれない表情で相手に労いの言葉をかける
その言葉に一瞬声を無くしながらも少女、リナリーはセツナへ近づいていく
「もう…ちゃんと人の話は聞きなさい。…ただいま」
任務帰りなのか苦笑を浮かべている頬や手、服などに無数のかすり傷がついていて
それでも最後に返した返事にはきちんと柔らかな微笑を浮かべるリナリー
それを目にしたセツナは瞳を細めて迷いなく傷のある頬にそっと手を伸ばした
「リナリー…また傷増やしとるやん。折角の美人が台無しやで?少しは気をつけぇな」
リナリーは頬に添えられた手を払う事なく受け入れながら眉を下げて困ったような表情で首をすくめた
「まだ医務室に行ってないから目立つだけよ……第一、褒めても何も出ないし、傷つくのを怖がってちゃ何もできないわ」
人を悪から守るためには多少の犠牲はつきもの
その犠牲が仲間ではなく自分が負う建った少しの傷なら安いもの
いまいち理由になっていない言い訳をそうと分かっていながら口にしてセツナの言葉を笑った
リナリーの変わらない笑みを見てセツナも同じ様に微笑を浮かべ頬から手を離す
それに対しては特に反応を見せないリナリーとまた今回の任務についての話をし始める
その二人の姿を遠くから眺める人影が三つあった
「まぁたやってますよ、あの人……何でいっつもリナリーを取っちゃうんですか!?」
「まぁまぁ、落ち着けアレン……でも確かに気に食わねぇさ!オレらのリナリーが!!」
「まずお前が黙れ、馬鹿兎……同い年なんだから仲が良くなるのは普通なんじゃねえの」
リナリーとセツナ、二人から丁度良い距離を保った場所に居る三人組
優男のような白髪の少年と眼帯をした赤毛の青年、何で俺がここに居るんだと言いたげな表情をした黒髪の青年
色とりどりな彼らの意見も色々で
黒髪の青年を除く二人は目の前の光景が気に入らないらしい
「あの人、一体いつから居たんです?」
今更のような白髪の少年、アレンの質問には赤毛の青年、ラビが答えた
「んー、そうさね。アレンが来るちょっと前から居ることにはいたらしいんだけど…本格的に俺らと任務をし始めたのは最近さ」
セツナが教団にエクソシストとして入ってきたのはラビ達ブックマンが入団する少し前だったらしい
しかし入団後も室長にすら姿は見せずもっぱら別ルートで活動していたという
別ルートとは中央庁の方で、主にイノセンス回収を優先していたという報告だ
アレンがクロス元帥捜索に出た後に漸く室長の所へ顔を出し、正式に黒の教団のエクソシストとなった
というわけでセツナとアレンが会うようになったのは最近という事になる
ラビや、その横で不機嫌そうにしている黒髪の青年神田も同じようなものだが
ジーッと見つめていると、やはりいくら鈍い人でも気づくようで
三人の方へ顔を向けたリナリーは、華が咲いたような笑みを浮かべて手を振った
「あ、アレン君、ラビ、神田。ひさしぶりー」
その笑顔に和みながらも、遅いと思う内心は無くすことができない
何故かこちらに来いというように手招きをしているリナリーの元へ歩き始めると
フッと不敵な微笑を浮かべているセツナと視線がぶつかった