二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 0番目の兄弟 ( No.7 )
- 日時: 2010/03/13 20:40
- 名前: 囮 ◆CbwloS2khc (ID: mx7/95Ob)
【第二章】
アレンは皆のアイドル的存在のリナリーと一際仲良くしているセツナが正直気に入らなかった
幼い独占欲なのだろうと自分に呆れもするが嫌なものは仕方ない
普段は居るだけでお互いに苛立つ神田の言葉に先程は妙に納得してしまった
『同い年なんだから仲が良くなるのは普通なんじゃねえの』
同い年、その存在は大きいのかと改めて考える
リナリーにとってラビや神田は年上でアレンは僅かながらも年下
同年代ではあるが"同い年"ではない
言われてみればリナリーに同い年はいなかったのだ
大人が多いこの生活の中で同じ年齢の人はやはり居心地がいいのだろうか
リナリー以外に向ける視線は意地悪か冷たいか
そんな男であっても彼女にとっては大切なのだろう
結局のところ仲間なのだから
ラビも神田もリナリーのセツナとの仲の良さには少なからず驚いていた
セツナは仮にもエクソシストとはいえ黒の教団よりも明らかに中央庁よりの人間
酷いトラウマを抱えるリナリーがこれほどまでに打ち解けるとは思ってもみなかった
警戒心一つない安心しきった表情で笑い
肌に触れられても戸惑うこともない
どうしてこれほどまでに相手に身をまかせることができるのか
二人とも淡い春が訪れようとしているのかと口には出さずとも思っていた
それに対して反発はないものの戸惑いはあった
彼女が今までと違ってしまうかもしれないから
「お?十四番目に兎にセカンドやん……おはようさん」
リナリーに呼ばれて歩いてきた三人にセツナは能天気な言葉をかける
しかし、呼び名はどこか挑発的で
それに眉を顰めたのは三人ではなくリナリーだった
「セツナ、皆の名前くらいいい加減覚えて」
パシッと軽く頭を叩きながらのその言葉にセツナは叩かれた所をわざとらしくさすりながらリナリーを見上げる
「んなこと言われても…どーせ名前なんて記号やろ?僕いちいち覚えられるほどえぇ頭しとらんの」
それは理由にもなっていない完ぺきな屁理屈
呆れ顔でどうにもならないと悟ったリナリーは溜息をつく
しかし、その表情もどこか楽しそうだった
二人のその雰囲気に戸惑っている三人に視線を向けたセツナは意地悪く笑いながら口を開く
「僕、あんましアンタらのこと知らへんから色々話し聞きたいんやけど……すまん、今日は無理みたいやね」
笑ってはいるがその瞳には"お前らに対する興味なんて自分にはこれっぽちもありません"と明らかに記されていて
あくまでもリナリーに付き合っているだけのようだった
しかし、何故今日は無理?
リナリーを含めたセツナ以外の四人が疑問符を浮かべる
笑みを浮かべたまま後ろを振り返ったセツナに続いて他もそこへ視線を向ける
リナリーの顔が恐怖に引き攣った
談話室の入り口
分厚いドアの所に居たのはハワード・リンクと彼を引き連れる男
マルコム・C・ルベリエ
中央庁の長官でありリナリーの最大のトラウマ
「久しぶりやね、"お父様"…いきなりどないしたん?」
そんな彼の登場にセツナは笑顔を更に深くしてソファーから立ち上がる
周りが一瞬衝撃を受けるような言葉をさらりと吐いて足を進めた
強張ったままのリナリーの横を通る時に柔らかな微笑を浮かべて囁く
「すぐ戻ってくるから…リナリーの話はそんとき聞かしてな?」
ふざけたように最後にウィンクをしてみせて
アレン達には一切視線を向けずもう振り返らない
眉を顰めた険しい顔のルベリエの元へ歩いていき、彼と一緒に談話室を出た