二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: キノの旅-the my world- ( No.1 )
日時: 2010/03/04 16:02
名前: 工場長 ◆/UYeS30HBo (ID: Nt.wHtNX)

「プロローグの国」

薄明るく、しかしなぜか太陽は昇っていない、どこまでも地平線の白い平野の上をモトラド(二輪車、なお空を飛ばないものだけを指す)と
それに乗った運転手が一定のスピードを保ちながら走っていた
運転手——短い黒髪を持つ少女——キノが前を向いたまま、自分が乗っているモトラドへと声をかける

「真っ白だね、エルメス」
エルメスと呼ばれたモトラドが、そうだねと返す

「濃い霧が出てきたと思ったら、急にこんな変な真っ白空間に着いちゃってね。全く、キノも僕も困ってるんだ」
「いったい誰に話しかけてんのさ」
「別に、強いて言うなら見に来た人のための実況説明」
「……状況説明?」
「そうそれ!」
そんな陽気なエルメスの声を最後にキノは黙る。当然、話す相手がいなくなったエルメスも黙る
何もない世界を静寂とともに十分ほど走ったとき

「あ」「あ」
白い空間の50mほど離れたところにポツンと、黒い文字で書かれた、これまた純白の看板が立ててあるのが見えた。
背景の白に同化していて、非常に分かりにくく、常人では見つける事すら怪しい

「なんだってこんなところに分かりにくい白い看板を」
ぼやくエルメスを

「まぁ、何も無いところを走るよりはまだましだよ」
キノはなだめながら、アクセルを緩め徐々にスピードを落とし、看板の横へエルメスを止めた

「なんて書いてあるの?キノ?」
看板に近づいたキノに聞く。キノは看板の上部に書いてあることを訝しみながら読んだ

「うーんと、ちょっと待ってね——えー、おはようございますこんにちわこんばんわ」
「なにそれ」
「だってそう書いてあるんだもの、ほら」
キノが看板の前からどいて、エルメスからでも見えるように調節する

「こんな原作冒涜のタイトルの小説を見に来てくださり誠に感謝です——ホントだ」
「ねぇ、エルメス?原作冒涜ってどういうこと?」
「こんな二輪車がそんなこと知ってるわけないよ。辞書じゃないんだから」
「まぁ、それもそうだね。で、そのタイトルってなんなの?」
キノの言葉を聞いたエルメスは、看板の上——おはようございますのくだりの更に上にある言葉を読んだ

「キノの旅-the my world-……だって」
「〝キノの旅″はまぁ僕の旅のことなんだろうけど、後ろの英語のは何なの?」
疑問形で聞いてくるキノにエルメスは返答する

「the my world ——意味は直訳で『私の世界』」
聞いたキノは怪訝な顔をした。

「ホントに何なんだろうね。ここの作者は」
「ホントだね、作者は人口爆発ってやつ?」
「……妄想爆発?」
「察しがいいね!」
そんな会話の後、再びの静寂がキノとエルメスを包む

「エルメスもちゃんとしようよ……」
「ごめんごめん——で、どうする?こんなふざけたとこ、とっとと通り過ぎちゃう?」
エルメスの問いにキノは一瞬で決断した

「そうしよう。残念だけど付き合ってられない」
エルメスにまたがりエンジンをかけるキノにエルメスは声をかけた

「あらま、もったいないね。注意書きの最後にお得な事が書いてあるのに」
「え?」
「読むよ?——あとがきはみんなでパーチーだ」
パーチーという言葉にピクリと反応したキノはエルメスに聞き返す

「パーチー?」
「そうパーチー。多分パーティの隠語だと思うよ。」
「食べ物とか出るかな?」
目ざとく確認するキノに、エルメスは返す

「おそらくね。おもてなしの心があるなら」
「よし、決めた。やっぱり行く」
「流石、食欲魔人キノ」
キノが決意の言葉を出し、エルメスが皮肉の念を込めた瞬間に、ぐにょぐにょとキノの目の前の白い空間が歪み出した。辺りの地面もそれに呼応するように揺れる

「うわ」「おっとっと」
振動でエルメスが倒れないようにキノが押さえていると、歪んだ白い空間に先ほどなかった、深い青の扉が出てきた。一人と一台は感嘆の声を口にする

「すごいね」「これには驚いたよ」
キノは出てきた扉を指さし、エルメスに聞く

「入れってことかな?」
「だね、この先何が待ち受けているかなんて想像できないけど」
「大丈夫、パーティに出るまでは死なないよ」
「さいですか」
キノは扉に手のひらを当てた。そして、そのまま手に力を入れ


扉を開けた——