二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ボンゴレ一世と亡国の王女 ( No.213 )
- 日時: 2010/04/05 16:53
- 名前: 蒼井瑞希 ◆AKXdr04juU (ID: 8TaBVFdu)
「はぁ…はぁ…」
荒くなった息を抑えるように、水を一気飲みする。
「……だめだ」
足りない。水という飲み物じゃ、この喉の渇きは潤せない。
もっと、もっと。体が求めている。水なんていらない。今欲しいのはあれだけだ。
「……血…」
口に出すと、ぞくりと快感が走った。
血、血、血。そう、血がほしい。
それも、あの子の血じゃないとだめだ。君の真っ赤な美しい血。
「何で…?」
君の病気を知った途端、これだ。
一体、どうして。
今までは、君の白い首筋を見ても、吸ってほしいと言われても、欲しいとは思わなかったのに。
『アノコガ シヌクライナラ
キュウケツキデモイイカラ ソバ二イテホシイ』
声がした。自分の中から。
悪寒が走る。
「……やめろ」
胸を押さえる。
『ナゼ オマエダッテ ソウ オモッテイルダロウ』
そう…思ってる?
僕は、目を見開いた。
(血を吸って、吸血鬼にしてでも、生きている君と、ずっと一緒にいたい?)
そう、心の中で聞くと、再び喉が乾いていく。激しく胸が音を立てる。
理性が「やめろ」と忠告している。もう、壊れかけた理性。
その代わりに大きく、強くなった本能は、僕の欲をどんどん膨らませていく。
『いけ。元々、お前は吸血鬼だろう?』
「……」
僕は、頭を抱えた。
ダメだ。君がいないと僕は生きていけない。
関係ないんだ、君が死んでしまうという事実がある以上、たとえ、心が無くなってもいい、君を傍に置いておきたい。
「……」
僕は、口元をぬぐった。
カチャ…。
ドアを開ける。
『すぅ…すぅ…』
君の規則正しい呼吸音。
僕は、正しい。死を目の前にした君だって、望んでいただろう?
自分にそう言い聞かせ、僕は君のベッドの傍まで歩み寄った。
「ん……」
寝ているようだ。安らかな寝顔に、また本能がゾクリとうずいた。
息が上がる。ドキドキする。
欲しい、欲しい、欲しい。
君の血が欲しい。
「…ん…」
顔にかかった君の髪をかきわけると、君は幸せそうな顔をして眠っていた。
「こんなときだって言うのに、君は起きないんだね」
僕は、君の小さな唇にキスをした。
心ある君との、最後のキス。
君の唇は、温かくて、甘かった。
「…ばいばい」
僕は、君の体を抱き起こすと、その首に咬みついた。
「…んっ、え…?あっ」
君が目を覚ます。
「ヒ、ヒバリン様っ」
君は驚いて、抗うように僕の胸を押す。
「ヒバ…」
「黙ってなよ」
僕は、さらに強く、君の血を吸い上げた。君が、声を出せないくらい痛くなるように。
そのつらい声を聞きたくない。
「いた…っ痛い…っ」
君の大きな瞳から涙が。
悪いとは思ってないよ。君も望んでいるはず。だって、君だって僕とずっと二人でいたいでしょ。
泣かないでよ、痛いのも、もうちょっとだからね。あと少しで、君は自由になれるんだから。
君は、もう抗わなかった。ただ、僕を見つめている。
「……っ」
ただ、涙をこぼしながら。
「ヒバ……リ…ン様…っ」
君は、痛さのあまりか、僕の腕にしがみついた。
ああ、君のそのやわらかい体が冷たくなっていくのが伝わってくる…。
でも、僕はあざけるように笑う。
一瞬でも、つらいと思ったら、きっと僕は、血を吸うのをやめてしまうから。
傷つかないで、美しく、純粋なままの君でいて。
「何、君、ずっとこうしてほしかったんでしょ」
一言そういってみせると、不意に、君は笑った。
「はい……ヒバ…リン様…私…嬉しい……」
涙を浮かべながらも、幸せそうに笑う君。
『心はなくても…ずっと…一緒です…』
君の唇がそう動いた気がした。
「!!」
その瞬間、僕にかかっていた暗示はとけた。
何をしているんだ、僕は。
「ダメだ…っ」
僕は、首から口を離した。
嫌だ、どうかまだ、無事でいてくれ。
でも…その時には、もう遅くて。
君は、とっくに冷たくなっていた。
「ああ…」
僕は、君の体を抱きしめた。
その顔は、とても幸せそうで。
もうすぐ、再び君は動き出す。
僕に血を吸われた吸血鬼として。
心がない君は、本能で、僕を主として、傍にいるだろう。
僕と君は、死ぬまで一緒にいるだろう。
それが、君の血を吸った僕への一生のご褒美。
そして、一生の償いだ。
僕は、君の心を愛していた。だから、その心が宿る体も愛していた。
しかし、もう君に心はない。
心ない君を永遠に愛さなければならないという、見かけだけの惨い愛情。
それが、償いだ。
あなたは、私の血を吸ってくれた。
でも、ごめんね、私、あなたを騙してしまった。
無邪気なふりをして、あなたに愛されていた。
本当は、病気になんてかかってなかったのよ。
あの紙は、偽物。
でも、優しいあなたは、それを信じた。
私ね、とあるお金持ちの御曹司に見染められていたの。
結婚しろって何度も迫られた。この容姿だけが、私の自慢だから。
だけど、結婚なんて嫌。私はあなたの物だもの。
でもね、血を吸われて吸血鬼になった女なんて、誰も欲しがらないでしょ。
これで、私はあなただけの物。
優しいあなたは罪悪感を感じて、私を傍に置いていてくれるでしょ?
だから、そう。
あなたも永遠に私だけの物。
愛してる、ヒバリン様。
ずっと、離さないでね。
私もずっと、あなたを離さないから。
私たちは、永遠に離れられない、吸血鬼の館に潜む…
『囚われの二人』
<あとがき>
終わった〜!長かったです…
感想など、いただけると嬉しいです!
次回からはまた、ジョットとレイアを進めます♪
よろしくおねがいします!