二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 幻想郷放浪記 ( No.24 )
日時: 2010/06/15 23:31
名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: t51BWMGM)

「いやーホントお前はすごいよなぁホントすごい」
「はっはっはっ! もっと褒めていいんだよ!」

馬鹿騒ぎをしている所から始めて申し訳ない。
でもやっぱり夜の風景とか色々と書いておかないと怒られると思って……
現在、草木も眠る丑三つ時である。
……なーんて、時計がないから分かるはずもないのだが。
まあとにかく夜ってわけだな。
そこで馬鹿騒ぎをしているのが俺とチルノだ。
今日一日で感じたことを素直に述べていたら、いつの間にかチルノを褒めるという趣旨に変わってしまった。
正直眠いのだが、機嫌を損ねて追い出されたら困るので色々と褒めているわけだ。
そして冒頭の言葉に繋がるのだが——
ここで不意にチルノが黙った。まるで何かを探しているのような……そんな雰囲気だった。

「……? チルノ、どうした?」
「しっ。……囲まれたみたい」
「それはあれか、妖怪の類か」
「わかんない。でも、何かがこの周りを囲ってる」
「そいつぁ厄介だな。……せめて静かに引きとってもらいたいものなのだが」
「無理だよ。最近はかなり凶暴になってる」
「そうか。かまくらが目立ったのかねぇ?」
「多分、ね。取り敢えず警戒は解いちゃだめだよ。いつ食べられるか分からないから」
「わかった」

後は沈黙だけが残り、取り敢えずこの場から動かないように心がけた。
それでもチルノの顔は強張ったままで、逆に引き締まっていくのが分かる。

「そろそろやばいかも……」
「どうにか出来ないか?」
「出来ない。もしかしたら、人間かもしれない。だから手出しが出来ない」
「人間が……? なら、話したら分かってもらえるかも」
「相手の姿も見えない状況で出ていくなんて自殺行為だよ。……ここは正面から突破するしか無いみたいだね」
「そうかぁ……分かった。取り敢えずチルノの言う通りにする」
「じゃあ突破するにはここを全力でかけていくしかないよ。あたいは『何か』を牽制するから」
「よし。じゃあ……行くぞ!」

言うが早いか、俺とチルノは全力でかまくらの出入り口へと駆けていった。
外は暗闇が広がるだけで何も見えなかった。
が、よく見ると何かが動いているのだけは分かる。

「止まらないでよ!」
「分かってる!」

チルノはつららを出して『何か』の近くに突き刺している。
——すげぇな。あんなことも出来るのか。
ここで俺がこんな事を考えていなければ、あるいはずっと前を向いていれば良かったのかもしれない。
俺は気付かなかった。
1〜2mの辺りに、影が佇んでいるのを。

「……っ! 危ない!」
「えっ……」

俺は声をあげる暇も無く、目の前の光景を見ることしか出来なかった。
一言でそれを表すなら……『ナイフが群がっていた』
それは本当に群れを成しているかのような感じがあった。
俺はついつい見とれるだけで、動くことすら出来なかった。

「避けてぇ!」
「っ! しまった!」

ナイフは手を伸ばせば届く距離まで来ている。俺は横に思いっきり跳んだ。
だが、届かなかった。
ナイフの『群れ』から完全に避けることは出来ず、数本が俺の横腹へと吸い込まれるように来ている。
ここで死ぬか——そう思った。
だが、衝撃は来なかった。

「……?」

ナイフが飛んできた方向を見ると、チルノが俺を庇ってナイフに刺さっていた。

「〜〜〜〜〜〜ッ!!」
「チルノ!」

チルノは苦痛に顔を歪ませており、脂汗を滲ませていた。

「チルノ! チルノ!! 聞こえるか!?」
「へへっ……きこえるよぉ……」

相当痛い筈なのにチルノは引きつった笑顔を浮かべている。

「馬鹿野郎! 無理するんじゃない! 待ってろよ、どこか安全なところに」
「よかったぁ……」
「!?」
「あんたが……ぶじで……」
「馬鹿!俺のことに構わず逃げればよかったのに、何で……」
「あんたは、あたいの、でしだから……」
「いつから弟子に……いやそれよりも」
「なにより……たいせつな、ひとだから……」
「……チルノ……」
「ひうっ! ……あたいは、へいきだよぉ……? だから、はやく、にげて……」

もうチルノは喋るのも辛いはずなのに、まだ俺に語りかけてくる。
足音がする。『何か』がこちらにやってきてるのだろうか。

「チルノ! お前も一緒に……」
「あたいも、いくと、じゃまに、なるよぉ……」
「なるもんか! だから、はやく……」
「ようせいは、しなないから、だいじょうぶ……だから……」
「でも……!」
「はやく……行ってって言ってるでしょお!!」
「……」

チルノは大声を出したせいか更に顔を歪ませる。
俺は、すっと立ち上がった。

「……お前は大馬鹿だ」
「ばかで……いいもん……さあ、はやく……」
「でも——」

俺はそこで一息ついて言葉を紡ぎ出した。

「俺の方が大馬鹿だ」

『何か』が近づいてきた。
俺はしゃがんでチルノの耳元で囁いた。

「……絶対、無事でいろよな。じゃねぇと、ぶん殴る」
「あんたもだよ……ぶじじゃないと……こおりづけにしてやるから……」

俺は再度立ち上がり、そのまま全力で走った。
チルノが、またあの笑顔を見せてくれると信じながら。




どもども、久しぶりです……って何回この言葉を言ったのでしょうか。
記念すべき二十話目はシリアス気味……かもしれない。どうだろ。
で、今全体を見返していると暗い感じにはならないとか書いてた。どういうことなの。
次回の更新予定日は未定です。
ホント、一週間に一回は更新したいですねぇ。
ではではー。