二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【東方】幻想郷放浪記【オリジナル】 ( No.43 )
日時: 2010/08/12 00:43
名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: t51BWMGM)

「こ、これは……!!」

俺は今、さとりの料理を目の前にしている。
それの見た目はさる事ながら、実に美味そうな代物であった。
早速一口食べてみる。

「……ウマイ!」

こんな美味いのずっと喰ってたら舌が肥えるな。
とかまあ俺はウマイウマイと頬張りながら料理を喰っていた。
しかしまあ……

「これが百人分ぐらいあることの方がよっぽどの驚きだがな」

まあこれは他の住人のためでもあるんだけど。

「ふふん。おかわりもありますよ?」
「さとりさん、それはマジかい?」

嬉しいこと言ってくれるじゃないの。
それじゃ俺もとことん食べるしかないな。

「ふふっ、料理を作ってくれた娘に感謝ですね?」
「まったくだよホント。さとり、礼を言っておいてくれないか」
「そこまでしなくても……」
「だっていきなり上がりこんで来た身に、こんなにも美味い物喰わせてもらってるんだからさ。だから言っといてくれよ」
「……分かりましたよ」

溜息混じりに承諾するさとり。

「そういえば、タイムさんは?」
「ん。あいつは部屋に戻って寝てるよ。なんでも『カロリーは女の子の敵』だそうだ」
「食べないと体に悪いのに……」
「だよな。まあ気が向いたら食べるらしいぞ。だから、あまり気にすることもないと思うぞ?」
「信頼っていうか……信じているんですねぇ」
「まぁな。あんな奴でも俺と意気投合したし? 意気投合つってもツッコミとボケの関係だけどな。ははっ」
「そんなもんですかぁ。……そろそろ行きますね」
「ん。何かあるのか?」
「まあ、ちょっと野暮用ですよ。タイムさんに今度は必ず食べてと言ってください」
「オーケー、まかせろ」

手を振りながらさとりはその場を離れる。
可愛い奴め。



「ふぅ。ちぃっと飲み過ぎたか……?」

酒コーナーがあるとか予想外だった。
珍しいのがあってすこし張り切りすぎたかも。

「横になるか……」

ベットに潜り込む。
うん、やっぱなかなかだなぁ……

気がつけば俺は眠っていた。




「……ぬう」

不意に目が覚めた。
目の前に何かがある。
目がぼやけて良く見えない。
寝ぼけ眼を擦ってよく目を凝らしてみる。
そこには、ナイフを振りかぶっているタイムがいた。

「えっ……」
「せいやっ」

俺の頭の横を思いっきり突き刺す。

「……!? え〜っと、タイムさん……?」
「あ、おじさん起きましたか。ごめんなさいねぇ」
「えっいや……これは悪ふざけ、とか……?」
「悪ふざけじゃないですよぉ。ちょっとお命頂戴しますね」

そしてもう一回振りかぶる。
俺は直ぐ様横に回避して、一気にドアノブを掴んで外に出る。

「あははー。逃がしませんよぉ」

沢山のナイフが横を過ぎていく。

「タイム! ちょっとマジでどうしたんだよ!?」
「どうもしないですけど、強いて言うなら命令です」

命令。
つまりこいつの上が俺を抹殺しろとかそんなこと言ったんだろう。

「私は、もう覚悟しましたから」
「俺はまだ全然覚悟してないわけでして」
「まだ軽口が叩けるなら上等です。よっと」
「へっ、そうかい」

俺は角を右に曲がる。
次も右。
次は左。

「おじさんもなかなか粘りますねー」
「そりゃ命の危機が迫ってるわけでして」
「ですよねー」
「……っ」
「行き止まりですね。チェックメイトです」

じりじりと距離を詰めていくタイム。
対する俺はじりじりと後退するしか無い。
そして俺の背中が壁に触れたとき——タイムが飛びかかる。

「ッッッ!!! ってぇな……」
「本当なら一思いにやろうと思ってたんですけどね。抵抗するもんですから」
「……お前さ、本当に覚悟してきたのか」
「そうに、決まってるじゃないですか」
「……そうか」
「本当だったら私だっておじさんと一緒に、楽しく、やりたかった……でも、それも、出来ないんですよ」
「……お前さ、やっぱ嘘が下手だなぁ」
「……」
「こんなにもでけぇ涙浮かべられても、説得力ねぇよ……」
「……ははっ。駄目ですねぇ私は。本当に駄目です」
「ああ、ダメダメだな。だからよ」
「……っ。ぅぅ……っ」
「もう、我慢すんなよな。お前は、泣き虫のくせに強がりな部分もあるんだからよ」
「ううっ……! おじ……さぁん……!!」

俺は、目の前にいるちょっと変わった少女を見ていた。
その泣き顔はあまりにも心に響き。
俺は無言でタイムを抱きしめた。

「うわぁぁぁぁぁ……!! わたしっ……わたしぃ……!!」




「落ち着いたか」
「グスッ……はい」

あまりにも突拍子すぎて俺もなかなかついていけないのだが、とにかく事情を訊くことにした。

「で、なんでまた」
「命令ですよぅ。上からおじさんの殺害が命じられまして」
「何で俺が」
「えっと、何でも『芽は早い内に摘む』とか」
「なにその冒険物にありそうなセリフ」
「でも確かにそう言ってたんですよぅ」
「で、お前は涙を呑んで俺を殺そうとしたわけだな」
「そうですけど……結局失敗です」
「失敗したらどうなるんだ?」
「多分脱退されられると思いますよ。よく知らないんですけど」
「あれだ、失敗したらびりびり〜って電気が流れるとか」
「ないですよ」
「なんだ……」
「とにかくっ。私は多分もう用なしですからおじさんの旅に同行したいと思います」
「旅っつったってなぁ……色々あやふやなこともあるし、何より長くなるかもしれんぞ?」
「それでもいいですよっ」
「そうか。ま、よろしく頼むぞ相棒」
「よろしく頼まれますよ相棒っ!」
「ああ……でだ。まあ俺はこのことについて触れるつもりはなかったんだけどね?」
「? 何ですかぁ?」
「このナイフさぁ……どうすんのさ」
「あぅ。じゃあ私の能力で……あれ?」
「どうした?」
「能力が使えないです」
「マジで? どうすんのこれ……」
「と、とにかく見つかる前に拾っちゃえば問題ないですよ! さあ早く見つかる前に」
「楽しそうですねぇお二方?」
「あ」
「あ」

よりにもよってさとりさん登場。
……なんていうかさ。
不幸だよなぁ……





どもども。
第二十九話です。
ちょびっと報告。
明日(っていうか今日)の夜頃にしばらく旅行に出かけます。
ので、更新が出来にくくなるかもしれません。
だからしばし待っててください。
ではでだー。