二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【東方】幻想郷放浪記【オリジナル】 ( No.51 )
日時: 2010/08/27 00:15
名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: t51BWMGM)

「……まだ起きていたか」
「……!」

俺はあの後、話題となった氷精——チルノの部屋に行った。
チルノは俺の姿を見るなり震え始めた。しかしその目は虚ろで、生気が感じられない。
——これはひどいな。
いくらボスの趣味とは言え、ここまでするものなのか。

「……安心しろ。別に何をしようって訳じゃあない」
「……」

一応何もしないっていうことだけは伝える。
だがチルノはまだ警戒しているみたいだ。
そりゃ俺だってこんな状況なら誰だって信用はしない。信用できるかどうかを見極めることはできるかもしれないが。
しかしチルノは精神的にまだ子供だ。見る人全員を敵と思ってもおかしくはない。
俺はチルノに近づく。チルノは、動こうとしない。
疲れて動けないのだろう。しかしそれでも警戒を解こうとはせず、じっと見つめているだけだった。

「あーあー、こりゃひどいな。服もボロボロだし、綺麗な肌も汚れている。……ったく、ボスの人使いの荒さには困るな。せめて最小限の清潔さはあるべきだ」
「……」

一人で勝手に愚痴る。こんなにも綺麗な少女なのに、人として捉えてないのが残念だ、とか色々と。

「ほれ、一人で一方的に喋っているってのもあれだし、俺の話相手になってくれ」
「……」

首を縦に振る。
それを見た俺は周りの片づけをしながら独り言のように話した。

「お前は気づいてなかったかもしれんがな、お前が色々乱暴にされてるときはその場に一回も行ったことないんだ。何でか分かるか?」
「……」
「お前の姿がな、妹と重なるんだよね。まるで妹が虐待を受けているみたいで、見れなかったんだ。それなら助けろって話だけどな」
「……」
「それでも俺にはこの場所しか無くて……せめてそこに行かないことが、俺の出来る事だった。悪人を貫くって、決心してたのになぁ」
「……」
「でまぁ、今日はここに来てせめて綺麗にしようと思ったわけだよ。自分勝手で、悪いな」
「……」
「首を横に振ってくれるか……ホント、すまないな。……っと、一応一通り片付いたかな」

部屋をざっと見渡してみる。やはり少し汚いが、それでもまだましなほうだった。
俺はチルノの横に腰掛ける。

「……ふぅ、出来るならお前の体も綺麗にしてやりたい所だが……色々と勘弁な。やはり少女の裸体を見るというのは男としてそれはいかんからな」
「……」

チルノはやはり虚ろな目で、黙ったまま俺を見てくる。
俺は何も言わずに頭を撫でた。

「ホント、下っ端にいる俺が情けねぇ。発言力があれば、或いは助けれたかもだが……」
「……」
「首を横に振ってくれてありがとな。……なぁ、一つ聞いてもいいか?」
「……」
「お前、『おじさん』ってヤツのこと好きだろ?」
「……!」
「ハハッ、何で知ってる、って顔だな。まあ色々噂として流れてくるもんでな。で、実際のとこどうなのよ? 好きなの?」
「……」
「んー。まぁ答えられないならいいんだけどさ」
「……分からない……です」
「初めて喋ってくれたのはありがたいが、別に敬語じゃなくてもいいぞ。しかし分からないかー。うん、恋する乙女って感じだな」
「……」
「まぁ、頑張れよ。あいつは、元気みたいだからさ」
「ホント……ですか……!?」

声を絞り出して聞いてくるチルノ。
別に敬語じゃなくてもいいのになーと思いつつ俺は答える。

「ああ。ピンピンしてるらしいぞ。だから、お前も頑張れよ」
「……はい」

初めて、チルノの目に生気が戻ったような気がした。





どもども、チルノとブラッド編です。
おじさん達の方は、結構長くなりそうなので、間章的な感じで。
本当は人が来ただけでも発狂寸前まで追い詰められるというのを考えていましたが、流石にそこまでいくと可哀想なので却下しました。
で、ご覧の有様。チルノにとって、心強い人物が一人増えました。
第三十四話です。果たしてチルノは救われるのでしょうか?
ではではー。