二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【東方】幻想郷放浪記【オリジナル】 ( No.55 )
- 日時: 2010/08/29 12:08
- 名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: t51BWMGM)
俺は今、片手に金槌、片手に板を持った状態である。
つまりは、大工作業中というわけだ。
このことについては数分前から話さなかればならない。
「え? 修理?」
「はい。実は先日ちょっとしたことがありまして」
今日も今日とてぶらぶらしてた俺はさとりに声をかけられ、薮から棒にこんなこと言われた。
俺としてはいろいろしてくれたお礼もしたかったし、ニート同然の生活をしていたから二つ返事で承諾した。
で、実際現場に行ってみたら、それはもう穴というより大穴って感じなぐらい、大きかった。
そしてただいま一人で作業中である。
いやー大工なんて簡単と思ってたら、結構難しいのな。驚いた。
そう、俺はこういう作業は初めてだった。
正直に言うと、甘く見ていた。
釘打てばなんとかなると思ってた。
そしたらこの有様だよ。……チクショウ。
穴は少し埋まったが、それでも全体の三割ぐらいしか出来てない。一時間もかけたのに。
とんでもないこと引き受けたとすこし後悔した。
だいぶ埋まってきた。
我ながらとてもうまくいった。これなら誇ってもいいだろう。
……まだ八割ぐらいなんだけどね。
「おじさん。お疲れ様です」
「あ? ……ああ、さとりか。どした?」
「いえ、頑張っているおじさんにお茶を持ってきましたよ」
さとりはそういって麦茶が入ったコップを差し出す。
コップの周りには水滴が付いていて、とても美味そうである。
「じゃ、遠慮なく」
さとりからコップを受け取り、一気に飲み干す。
冷たいものを食べるときになるあの頭痛がしたが、おかましなしだ。
「くぅー……! 美味い!」
「ただの麦茶ですよ?」
「いやいや、この重労働をしたあとの飲み物ってのはどれも美味いってもんなんだよ。いや、ありがとう
」
俺はまたついさとりの頭を撫でようとしていた。
しかし、変なことが起きたのはその後だった。
「……ひっ」
さとりは、身をかがめた。
「お、おい。大丈夫か」
「やめて……もう、やめて……」
「おい、どうしたんだ!」
さとりの見る目が、まるで化物を見たかのような目だった。
俺は戸惑う。
一体、何があったというのだろうか。
何故こんなにも怯えているのだろうか。
俺には理解できない。
今さっきの行動になにかあったというのだろうか。
「やめて……もう、しませんから……だから……」
「おい、さとり!」
「ひっ! ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ……」
今度は急に謝りだす。
かと思えば、急に俺に許しを乞う。
俺は、一つの言葉を思い出した。
トラウマ。
詳しくは知らないが、要するに怖いことや恐ろしいこと、そして暴行など辛いことが記憶にこびりつくことだ。
トラウマがフラッシュバックすると、錯乱状態になったり、ひどくなればすべてが当時のままに再現されてしまうらしい。
「さとり! しっかりしろ!」
「もうやだ……もう痛いことはやだ……やめて……許して……」
「落ち着け! さとり!」
「やだ……やだ……やめてよ……なんで……どうして……?」
「さとり!」
「なんでこんなことするの……? おとうさん……おかあさん……なんで……」
「……っ!」
「さとりがこころをよむからだめなの? さとりがこんなのにうまれてきたのがわるいの? さとりは……いいこに、してたのに……なんで……」
「……」
「さとりはちゃんといいこにしてたよ? きょうもちゃんとごはんもつくったしおそうじもしたしきもちよくしたよ? それでもまだわるいこだった?」
「……さとり」
「さとりは……どうして、ほかのことあそんじゃだめなの? なんで……おそとにいっちゃだめなの? さとりがわるいこだから?」
さとりの口は、止まらない。
「どうしていもうとまでいじめるの? いじめるのはさとりだけだったでしょ? いもうとはなにもしてないよ? いいこにしてたよ? おねがいだから……いもうとには……やめてよ……いたいおもいをするのはさとりだけでじゅうぶんだから。だから……」
「さとり」
「……なんでだれもたすけてくれないんだろ。さとりはこんなにもいいこなのに、なんでだれもきてくれないんだろ。さみしいよ……だれかきてよ……だれかたすけてよ……もうたえられないよ……」
「さとり!」
「……だれだろ。さとりのなまえをよんでいるのは、だれなんだろ。やっとともだちがきてくれたのかな? たのしみだなぁ。おかしのじゅんびをしなきゃ」
「さとり! 気がつけ! 俺だ!」
「うれしいな。なまえをよんでもらえることがこんなにもうれしいなんて。はやくじゅんびをしなきゃ。こころもよまないように……きをつけなくちゃ。きらわれちゃうよ」
「いくらでも心を読んでも構わない! 嫌いにはならないから! だから……」
「……ヒグッ……えへへ……グスッ……なんでだろ……なみだが……グスッ……とまらないよ……さとり……なかないって……グスッ……きめてたのに……」
「泣いてもいいんだ、さとり。思いっきり泣いても……いいんだ」
「……ぅぅ……うわあああああああ! いたかったよぉ……つらかったよぉ……! もう、いやだよぉ……!」
「……よしよし」
俺は、しばらく泣きじゃくるさとりを抱きしめて、泣き止むまで待っていた。
どもども。
第三十六話、いかがでしたか?
さとりの過去は自分で考えたものであり、原作にはそのような描写はありませんのでご了承ください。
これに勘違いする人がいないようにするため、念のために。
やっぱひらがなの場合は文節を区切ったほうがいいのかな? 一回投稿してみて、必要なら修正します。
ではではー。