二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【東方】幻想郷放浪記【オリジナル】 ( No.56 )
日時: 2010/08/29 22:59
名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: t51BWMGM)

「……落ち着いたか」
「うん……」

どれくらい経っただろうか。
さとりは泣き止み、少しだけ平常心を取り戻した。
目は赤く腫れ上がり、涙の跡が残っていた。

「……おじさんはだれなの?」
「ん、おじさんはおじさんだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「そうなの……」

さとりはおそらく一時的な幼児退行をしているみたいだ。
言動も幼く、記憶も一部とんでいる。
なるべく悟られないように気をつけて言う。

「おじさんはなんでさとりのこと、しってたの?」
「さとりのことは知ってるさ。何たって、友達だからな」
「ともだち……?」
「そうとも。友達だからこそ、こうしていられるんだからな」
「でも、さとりは……きらわれものだもん。おじさんにもきらわれちゃうよ……」
「……おじさんは信用されなくて少しショックを受けております」
「あぅ……ちがうの……そうじゃないの……」

さとりは慌てた様子で否定する。
俺は微笑みながら頭を撫でた。

「分かってる分かってる。信用するしないっていう問題じゃないんだろ?」
「……うん。おじさんは、さとりのこときらいにならない?」
「なに当たり前のこと言ってんだよ。嫌いになるわけないだろ? なんたって、おじさんだぜ?」
「……うん」

さとりはぎゅっとしがみついてくる。微笑ましいかぎりである。
俺はまた頭を撫でてやった。

「んぅ……きもちいい……」
「そうか。ならおじさんは張り切っちゃうぞー」

わしわしと撫でる。

「いたいよ……おじさん……」
「おおすまん。少し張り切りすぎた。こんくらいか?」
「うん……」

そういえば、何故さとりはトラウマがフラシュバックしたのだろう。
あの時のことを考えると、原因は俺であり、そして俺の手が原因だ。
しかし、今のさとりにはそんな感じはしない。
……わからん。何が違うというのだろうか。
少し時間が開いてる時にでも考えよう。

「……おじさんってけっこうむずかしいことかんがえてるんだね。さとりにはわからないよ」
「いや、これについてはお前は分からなくてもいいと思うぞー。難しいことだからな」
「うん……」
「さとり。……これの質問は答えても答えなくてもいい。ただ、聞いてくれ」
「……うん。わかった」
「……お前の両親はどんなことをしたんだ?」

俺の質問を聞いた瞬間、さとりは俺の手をぎゅっと(それでも痛くないが)掴んだ。

「無理強いはしない。だが……聞いておきたいんだ」
「……」
「……」
「……うん。はなす。おじさんには、はなす」

そう言ったさとりの体は震えていた。
そりゃそうだ。思い出したくもないことを思い出しているから。
俺はせめてと思い、思いっきり抱きしめた。

「……さとりね、ようかいからじゃなくて、にんげんからうまれてきたの。にんげんのおとーさんとおかーさん」
「ああ」
「でね、さとりにはうまれつきこころをよむことができたの。それをしったおとーさんとおかーさんは、さとりはわるいこだから、いいことをしないとねって、いわれたの」
「……ああ」
「でね、いっぱいいっぱい、いいことしたの。わるいこにはならないようにって、がんばったの。でもね……それでもいいこにはなれなかったの」
「……」
「おとーさんは、さとりをてでたたいたり、あしでけったり。おかーさんは、いっさいさとりとはなしてくれないの。だからもっとがんばったの」
「……そうか」
「うん。でね、さとりにいもうとがうまれたの。そのいもうとも、さとりとおなじことができたの。おとーさんとおかーさんは、いもうとにさとりをおしつけて、いつもどおりのことをしたの」
「……」
「でね、あるひ、いもうとにも、しはじめたの。けったりたたくのはあたりまえで、くびをしめてくるしむのをたのしんでたりしてた」
「……」
「さとりはひっしにとめたの。なんでいもうとにもするの、さとりだけでじゅうぶんでしょ、って。それでもやめてくれなかった。それいらい、いもうとはこころをとざしたの」
「そうだったのか……」
「……みんなはさとりをみすてたの。さとりがこんなひどいめにあってるってしってても。てをいっぱいのばしても、つかんでくれるひとは、いなかったの。ひきあげてくれるひとは、いなかったの」
「……」
「それから、さとりはひとをしんじなくなったの。みんなはさけるか、おなじようにたたいてくるかだったの。おとーさんとおかーさんは……でていっちゃった。わるいこのちかくにはいられないって」
「……そうか……」
「うん。……これでおわりだよ」
「すまなかった。嫌なことを思い出してしまって」
「ううん。いいの。おじさんなら、しんようできるから」

気がつけば、さとりの震えは止まっていた。
俺は目一杯抱きしめてやった。

「おじさん、くるしいよ……」
「……すまない」
「おじさん……? どうしたの?」
「何でもない……ただ、感極まってな」
「そうなの……」
「お前も、辛かったら人に相談しろよ? なるべく信用出来る奴に」
「……だいじょうぶだよ。さとりは、つよいこだもん。それに……こんなこと、おじさんにしか、たのめないよ」
「ならいつでも言ってこい。俺が守ってやっから。悪いヤツに指一本触れさせねぇよ。約束だ」
「……うん……グスッ……ありがとう……」

今度はさとりが抱きしめた。
俺はさとりが幸せになるようにと、誓った。
無理だろうがなんだろうが、絶対に、と。





どもども、一気に二話更新です。
時間があまりに余ってるから、ついついやっちゃいました。
第三十七話です。
一応言っておきますが、さとりの過去については原作でも言及されておりません。
つまり、これは作者が勝手に考えたことなので、勘違いなさらないでください。
もう一回念のために書いておきます。
ひらがな読みにくかったらぜひ申し上げてください。
ではではー。