二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 幻想郷放浪記 ( No.7 )
日時: 2010/11/07 04:24
名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: t51BWMGM)

今日はいい天気だなーと改めて考えていると霊夢が隣に腰掛けた。お茶と煎餅を持って、

「はい。おつまみだけじゃ喉が乾くでしょう?」
「おお、さんきゅ」

一つの湯のみを持ってぐいっと飲む。渋いお茶だった。

「おお渋い」
「渋いほうがお茶らしくていいでしょう」

煎餅を喰わえながら霊夢が反応する。
そして俺の膝で寝ているスターと見ながら言った。

「…あなたって何にでも優しく接するんですか?」
「んー、どうだろ。俺としては普通に接してきてるんだけどな」
「あなたって別の人でしょ? 元の場所に戻りたいとか思わないんですか?」
「俺の元居た場所には未練は——まぁ無いといえば嘘になるが、それでもあそこではもうやることはない」

その時、満開の桜の花びらが一斉に舞った。

「…ここの桜は綺麗だな」
「もっと綺麗な所もありますよ」

お茶をすすりながら答える。

「そうなのか? じゃあ是非案内してもらいたいものだな」
「時間があれば、ですけどね」



「…ふー。なぁ霊夢、これって妖精に懐かれたのかな?」
「多分ねー。人間に懐く妖精は珍しいですよ」

あの後二人(二匹?)の妖精がスターを見て文句を言った。
んで、俺にもたれるようにして背中で寝ているのがルナ、肩にもたれかかっているのがサニーと何とも動きづらい体制になってしまった。

「名誉なのか不名誉なのか」
「確実に不名誉です」
「そうか…」

辺りは夕焼け色に染まっている。何とも幻想的で美しかった。

「夕焼けがやけに綺麗だなー。やっぱり自然とマッチしているのかな」
「そうですねぇ。…ちょっとお茶汲んできます」
「へいへい」

霊夢は本日三度目のお茶汲みに行った。

「……」

しばらく日が落ちる光景を眺めていた。
これが完全に落ちればもう夜だ。
…あたりまえか。

「ハロー♪」

隣から不意に声をかけられた。あの時の少女だった。

「お前いつも不意に現れるのか?」
「そうよー」
「…しかしお前って何か変な能力的なものでも持ってんのか?」

少女が現れたところは縁側なのだが、そこよりちょっと上空に裂け目が出来ていてそこから顔を覗かせていた。

「持ってるわよ。私は境界を操る。だから…」

突然消えて俺の目の前に逆さ向きに出てきた。

「こんなこともできる」
「なるほど、さっぱり分からない」

顔が近かったので動かせる方の手で顔を押した。

「ま、そんなもんよ。ここでは能力持ちが沢山いるから」

いたずらっぽく少女が笑う。

「そうかい」
「そうそう、あなたにちょっとしたプレゼントをあげるわ」
そう言ってもう一個裂け目を出し、そこから酒を取り出した。
「あー? プレゼント?」
「そうよ。今日は宴会をするからね。だからこれをあげるわ」
「お前も一緒に呑めばいいじゃないか」
「ちょっと用事がありますので私はこれで失礼しますわ」

そう言って顔を引っ込める。

「あ、ちょっと待て」

しかし少女は出てくることは無かった。

「何なんだあれ。…酒ねぇ」

見る限り普通の酒だ。特別なものとは思えない。
そして何気なく瓶の底を見た。

「……!」

そこには張り紙があった。



「お茶入りましたよ」

霊夢はお茶を差し出す。

「ども」

しかし受け取ることはなくただ空をボーッと見るだけだった。

「…どうかしました?」
「ん、何でもない。ちょっと考え事さ」
「そうですか。私、ちょっと用事があるんで席を外させていただきますね」

お茶と煎餅を乗せたお盆を置いて来た道をもう一回戻っていった。
しかし、俺の思考はあの張り紙について一杯だった。



『あなたが何故本名を隠すのかを知りたい。
 時間があれば今夜、この縁側で待っていて。
        この世界を守る賢者 八雲紫より』



十中八九、あの少女は八雲紫と言う名前だろうな。
…何故俺の名前を知りたいのかが分からない。
俺の名前を知っているからと言って得になることはない。
…ますます分からない。さっきから同じようなことを考えている。
やめだやめだ。こんなこと考えていたって分からん。分かるはずがない。大人しく今夜はこの縁側で待っているしかなさそうだ。
ため息をつく。
俺、何かしたのかな?
「…何があるんだろうか」
夕焼けは神社や辺りを染めている。
幻想的な風景も今は恐ろしく不気味でしかなかった。



第六話終了。何が起こるかはお楽しみに。
次回は宴会パート。色々暴走します。
ではでは。