二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【東方】幻想郷放浪記【オリジナル】 ( No.76 )
日時: 2011/01/04 03:49
名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: lBubOowT)

目が覚めた。
そこは見知らぬ天井だった。まだ頭がぼんやりする。

「……あら、気がついたの?」

そこで見たのは、いつかであった薬師——八意永琳だった。

「こ、こは……?」
「ここは博麗神社よ。ここの巫女さんとても心配していたんだから」

そう言いながら健康チェックを行っているようだった。
徐々に頭が覚醒してくる。

「……タイム達は?」
「彼女なら数週間前に意識が戻ったわ。あなただけよ、こんなに長く寝ていたのは」
「俺、どれぐらい寝ていたんだ?」
「えーと……3ヵ月程度ね」

今、なんだって?

「3ヵ月よ。季節にすると冬かしら?」
「冗談じゃ……ないよなぁ」

はぁ、と溜息をつく。
——そこで完全に頭が覚醒した。

「そ、そうださとり! アイツはどうなった!? こいしは!?」

そこで永琳の顔が曇った。
まるで言い辛そうにしているようだった。

「……どうしたんだ? はやく言ってくれよ」
「え、ええ……実はね……」


「古明地さとりと古明地こいしは……今は元気にしているわ」


…………は?

「え、いや、あれ? なんか空気の流れと話が全然一致してな」
「あれは冗談よ。別に問題ないわ」
「そ、そうか……」
「でもいい話だけじゃないのよね」

え? と俺は反射的に聞き返していた。


「古明地こいしは、身体の三分の一しかないわ」


理解するのに数秒掛かった。
そして、質問する。

「それは、どういう意味なんだ……?」
「そのままの意味、としか言えないわね。辿り着いたら身体が崩れかけた古明地こいしがいるんだもの」
「原因は、分からないのか?」
「……ごめんなさい。いままでそういう事例がないから分からないわ」

俺は茫然としていた。
身体が三分の一? 意味が分からない。
それは元気にしていると言えるのか? 助かったと言えるのか?

「でも、本人は気にしてないみたいよ。『これは私の罪だから』って」
「罪、ってなんだよ……だからって、こんなことはないだろ!」

俺は無意識のうちに立ち上がっていた。

「犯人の目星はついてんだ。だったら……」
「待ちなさい」

永琳が止めに入る。
俺は思わず怒鳴ってしまった。

「うっせぇ! このまま見過ごせってのかよ! 俺は」


パチン、と乾いた音が響いた。
それは永琳が俺に平手打ちをした音だった。

「……私だって、患者を完全に治したい。今すぐ私も手伝いたい」
「だ、だったら」
「でも! 本当にそれが一番の近道だっていうの!?」

俺は黙る。永琳が大声を上げるにはなにか理由があるのだろう。

「今現在、幻想郷への被害は増えつつあるわ。中には死亡者も出た。これがどういうことか分かる? 今の私たちじゃ、とてもじゃないけど敵うはずがないのよ……」
「…………」
「……だから、ヒグ、私たちは、ここで、待つことしか、出来ないのよぉ……!」

永琳は泣いていた。
俺はそっと頭を撫でた。
そして永琳の話を聞いた上で、こう言った。


「お前たちは見てるだけでもいい。でも俺は行く。ちょっと憎めない奴から、頼まれごとしてんだ。だから、頼む」
「……どうしても、なの?」
「どうしてもだ。すまない」
「いいわよ、分かったわ。」

永琳は俺の顔を見据えてこう言った。

「なら、出来る限りのサポートはさせてもらいます。だから、死ぬんじゃないわよ?」
「分かってんよ。俺はまだ死ねない。すべてが終わるまで」


あれだけ死にたがってたのに、いつの間にか生きたいと思っている。
人生ってのは分からないもので、そして人間ってのも分からないものだ。
この先なにがあるか分からない。もしかしたら大変なことが起きるかもしれない。
それでも俺は進み続ける。
それが人生だと割りきって、さ。



幻想郷放浪記 おじさん編第一部 完









どうもどうも。
全三章、全五十話のお話でした。(VSこいしは二つで一話です)
さてさて、今回でおじさんの主人公はお終いです。
でも第一部とあるように、第二部、第三部と続く予定です。
が、次からは主人公を変更します。
もともとオムニバス形式でやろうと思っていた結果がこれです。
こんな小説ですが今後とも宜しくしていただけるとありがたいです。

それでは一個だけのコメント返信でも。
>>缶詰さん
パルスィさんは第四十八話だけ登場です。
でも今後ももっと登場するかも……?
ご期待ください。
応援のコメントもいただいてありがたい限りです。
これからも頑張っていきたいので、応援よろしくお願いします。

それでは長くなってしまいましたが、この辺で一旦切ろうと思います。
これからの展開は番外編の後、新編突入という形になりますので。
それではー。



第三章—CAST—
八意永琳……東方永夜抄6A面ボス
水橋パルスィ……東方地霊殿2面ボス
星熊勇儀……東方地霊殿3面ボス
古明地さとり……東方地霊殿4面ボス
火焔猫燐……東方地霊殿5面ボス
霊烏路空……東方地霊殿6面ボス
古明地こいし……東方地霊殿EXボス