二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【東方】幻想郷放浪記【オリジナル】 ( No.80 )
- 日時: 2011/01/06 04:14
- 名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: lBubOowT)
第一章 第一話
昨日、奇妙は人間を拾った。
夜中だというのに妖怪の山にいて、更には意識が無いときた。
何とか手当をして、私の家に運んだ。
今はその翌日の朝である
「はぁ……」
最近はツイてない。
大将棋は負けるしよく転ぶ。
そして何故か知らないが調子が出ない。
風邪でもないし疲労から来るものでもないのは、少し気味が悪いものだった。
——バァン!
いきなりドアが開け放たれる。
突然の来訪者に身構えるが、それはよく見知った顔だった。
私は溜息をつく。
次の言葉はもう予想していた。そしてそいつは予想していた言葉を一言一句違わず言った。
「取材ですっ! 奇妙な人間を拾ったと聞いてやってきましたっ!」
——ホント、今日はツイてない。
私は一言で言えば天狗だ。人間ではない。
種族まで詳しく言うなら『白狼天狗』。簡単にいえば狼の様な天狗だと思ってくれればいい。
天狗、と一口に言っても様々な種類がいる。
安易に想像出来る鼻が高い天狗が一番ポピュラーだろう。私もそう思う。
まあとにかく私は天狗なのだ。
そして目の前にいる考えてることがよく分からない奴——『射命丸文』も天狗だ。
種族を言うなら『鴉天狗』。
別に私は鴉天狗のことは気にしてないが、コイツだけは別だ。
天狗というのはどういったわけか新聞を作るのが大好きな種族である。
私には哨戒という任務が与えられているので、そういった事はしない。する気もない。
まあそれはいいとして、この射命丸文は『ゴシップ記事を書く新聞記者』として有名だった。
取材は一応するものの、分からないところは適当にでっち上げるし、完全に妄想の場合もある。
私もこう言った記事を何度も書かれて社会的抹殺に追い込まれそうになった。
そしてなにより気に入らないのはとにかく『態度』である。
コイツのヘラヘラしたところは見ててムカつく。
そういった訳で私は射命丸を苦手としていた。
「……射命丸、あのな——」
「はいはい分かりました分かりました。ですからはやく取材させてください!」
——分かってないだろお前。
人の……天狗の話ぐらい聞いたらどうなんだ。
しかしコイツにはもう何を言っても無駄である。
無駄だと知りつつも、私は質問をした。
「大体どこからこれを聞いた。風の噂か?」
「私の情報網を見くびっては困りますね! 目撃者から聞いたんですよ!」
こいつの場合目撃者から聞く=脅しみたいなものだ。
そういう奴なのだ。
「それにな、私は低血圧なんだ。朝は気分が乗らない。どっかいけ」
「そう言って夜になれば『私は早寝するタイプだ』とか言うんでしょう? そうは行きません!」
「じゃあ取材協力を拒否するからとっとと失せろゴシップ記者」
「んー仕方ないですねぇ。なら適当に書きますか。『犬走椛、男を連れ込んで……』みたいな!」
私は舌打ちする。こいつの脳内辞書には諦めるという文字が無いのだ。
自己紹介が遅れたが私の名前は『犬走椛』だ。以後よろしく。
それはさておき。
「お前な……今度そういうの書いたらどうなるか分からないのか?」
「それは知りませんねー。なんでしょう?」
「大天狗様に大目玉くらうだろうが」
「嘘だって分からなくすればいいでしょう?」
「そういう問題かよ……」
「ですから、取材協力してください!」
その場で頭を抱えたくなる。どうしたらコイツはこんな風に育つんだ。
「ほほう、奥で少し足が見えているのが件の人間ですか」
「勝手にジロジロ見てんじゃねぇ。それと写真機構えんな壊すぞ」
「おお、こわいこわい。で、取材協力は?」
「…………」
やはり徒労に終わった。私は勘弁してこう言った。
「分かった、してやるよ……。ただし、質問は三つまでな」
「えーでは何故連れ込んだんでしょうか?」
「倒れていて少し怪我をしていたから」
「では次。その方の別状は?」
「ない。健康体だ」
「それでは最後。その方は人間ですか?」
「…………?」
射命丸のやつにしてはおかしな質問をする。
私はとりあえずこう言っておいた。
「多分な。最近外から人間が流れこんでくるらしいけど」
「ほほうなるほどなるほど。ありがとうございましたー」
そして一瞬の内に帰っていった。騒がしい奴だな。
というかアイツは本当にでっち上げたりしないだろうな。それが心配なんだが……。
まあいい。もしそうならアイツの羽根をボロボロになるまで切り刻むだけだ。
そう思って朝御飯を食べようとしたら、最悪なことに肉のストックがまったくない。
ツイてない。こんな朝から人間の里には行きたくないが買出しでもしよう。
私はまだこの時の運の無さは一時的なものだと思っていた。
今思えばこれは異変の予兆だったのだ。
話は、人間の里から始まる——。
どうもです。
第二編第一章第一話です。次回からは普通に第二話とかで表記します。
視点は白狼天狗の犬走椛に移ります。
主人公のパートナーと言うべき人物でしょうか。
そして出てきた射命丸文もちょくちょく関わってきます。
まあ冷やかし役と言ったところでしょうかね、射命丸の場合は。
さてさて今回の物語。時系列的にはとある組織が出てきた辺りです。
第一編でいうところのチルノが出てくるより少し前です。
異変の目撃者は犬走椛。彼女は一体どのような行動を取るのでしょうか。
それではー。